ギャラップ著・丹波哲郎訳「死後の世界」を読む ― その3 「地獄を信じる」アメリカ65%、ギリシア62%、西ドイツ 25%、イギリス23%、フランス22%、日本は?
ギャラップ著・丹波哲郎訳「死後の世界」を読む ― その3 「地獄を信じる」アメリカ65%、ギリシア62%、西ドイツ 25%、イギリス23%、フランス22%、日本は?
ギャラップ著・丹波哲郎訳「死後の世界―人は死んだらどうなるか」を読んでいます。
「5 死後の世界と「天国」の関連性」に入ります。
p103
われわれは1952年、1965年、1980年のギャラップ調査で、アメリカ国民に
「あなたは現実の世界で正しく生きた人が迎え入れられ、永遠に報われる天国が存在
すると思いますか?」という質問をした。
三回とも10人のうち7人は「はい」と答えているが、宗教心の強かった昔のほうが
そう答えた人の数が多いのは当然である。
・・・まず第一に、女性のうち天国を信じている人は75%で、男性の66%よりも
多い。 このように女性は信仰心が強いという傾向はこの調査に首尾一貫して表れて
いるが、この事実を念頭に置いておくのは大切なことである。
==>> このギャラップ調査は、今から40~70年ぐらい前の米国のデータですから、
今の日本人の感覚とはかなり異なることは当たり前でしょうが、
こちらのサイト「日本人の国民性調査」を参考までにちょっと覗いてみましょう。
https://www.ism.ac.jp/kokuminsei/index.html
「統計数理研究所では、1953年以来5年ごとに「日本人の国民性調査」という
社会調査を継続実施しています。このサイトは「日本人の国民性調査」と、関連
したその他の調査研究を紹介するものです。」
このサイトの、「宗教」「#3.5「あの世」をしんじるか」という質問に
対する答が1958年の数字として出ています。
信じる 20% 信じない 59% となっています。
一方で、「#3.2b「宗教心」は大切か」への答えは、1983年の回答で:
大切 80% 大切でない 11%
となっています。
つまり、神仏を尊ぶ気持ちは大切であるけれども、「あの世」を信じている
わけではないということのようです。
また、「#3.6 宗教か科学か」という問いに対しての、
1983年の日本人の回答は:
54% ― 2 人間の救いには科学の進歩と宗教の力とが、たすけあってゆく
ことが必要である
27% ― 4 科学が進歩しても、宗教の力でも、人間は救われるものではない
・・・・これらの日本人の意識を見ると、アメリカ人よりもかなりバランスが
とれていて、極端な思想にはなっていないことが読み取れるように思います。
p104
天国に対する考えには地域によってかなりの差がある。 東北部や極西部地方に
住んでいる人の中には天国を信じている人はさほど多くないので、不思議な体験
もその地域特有のものである場合が多い。 天国を信じるという人は東部では61%、
西部では58%であるのに対し、中西部では76%、そして南部では86%という
信じられない数字に達することが分かった。さらに最南部になると、その数は89%
にまではね上がる。
また、天国を信じる人の割合は学歴によっても異なる傾向がある。 大学教育を受けた
人で天国の存在を信じているのは10人のうち6人だが、中学校を出ただけの人は
77%が信じていることがわかっている。
==>> この数字が日本人からみて、非常に高いことに驚くのですが、
「大学教育を受けた」人であっても6割というのはさらにびっくりです。
アメリカにおける宗教と政治の地域性については、リチャード・ドーキンス著
「神は妄想である」にいろいろと書かれています。
「リチャード・ドーキンス著「神は妄想である」を読む:
その6 米国の一番敬虔な州が一番危ない」
http://baguio.cocolog-nifty.com/nihongo/2021/03/post-dda1e9.html
「p335
米国における党派関係は、宗教性の完璧な指標ではないが・・・・
暴力犯罪の発生率がもっとも低い25の州のうち、62%は「青い」
(民主党の)州にあり、38%が「赤い」(共和党の)州にある。
もっとも危険な25の都市のうち、76%は赤い州にあり、24%は
青の州にある。 実際に、米国でもっとも危険な5つの都市のうちの
3つは敬虔なテキサス州にある。・・・もっとも高い殺人の発生率をもつ
22州のうちで17州が赤である。」
リチャード・ドーキンス著「神は妄想である」を読む:
その7 日本人の宗教観は理想の形かも?
http://baguio.cocolog-nifty.com/nihongo/2021/03/post-f9a508.html
「p406
戦争をおこなう動機として妥当な候補と言えるのは、自分たちの宗教
が唯一本物の宗教であるという不動の信念なのである。
そしてこの信念を補強するものこそ、すべての異教徒やライヴァル宗教
の信奉者に対して公然と死罪を宣告し、神の戦士はまっすぐに殉教者
の天国に行けると露骨に約束する、聖典にほかならない。」
p113
したがって天国には、常に変化して成長し、他人への奉仕という形で互いに
影響しあっている住人がいるということになる。 さらにそれらの住人は地上に
いた時と同一人であると見分けることができるが、交友範囲は地上にいた時より
広がって天の仲間にも及ぶようになる。
以上が“典型的な”アメリカ人の目を通してみた天国の様子であるが、このあたりは
まだ天国を遠くから眺めているにすぎない。
==>> ほお、天国に行っても奉仕活動をやるんですか。
アメリカ人のボランティア・スピリットは天国にまで及ぶんですねえ。
最近の極端な貧富の差が、このような天国観にどんな影響を及ぼして
いるのか気になるところです。
私などは、基本的には仏教的極楽浄土のイメージしか持っていません
から、卑近で分かりやすいイメージで言えば、「酒は旨いし、姉ちゃんは
綺麗だ・・・・」という感じでしょうか。
https://www.youtube.com/watch?v=HgW5KUyJarw
もう少し真面目に、最近読んだ仏教系の本から得たイメージで言うならば、
「法華経」に出てくる下のような雰囲気でしょうか。
https://sasetamotsubaguio.blogspot.com/2021/09/blog-post_2.html
「p71
その国は美しく、神々も人も精霊たちも快適に過ごします。 そこは青い瑠璃
(ラピスラズリ)をもって地となし、黄金の糸をもって八つの蓮華の花弁が結び
つけられているところです。 八つの蓮弁には金・銀・瑪瑙などの七宝の樹木が
列をなしてそびえ、常に花が咲き、いつも実がなっています。この如来の世は
大宝荘厳(高貴な宝石で飾られた時)と呼ばれます。」
p124
例えば、ローマカトリックの自由主義的な神学者であるハンス・クングは・・・・
人は日常生活や自然の中に神の啓示を見て神の存在を信じるようになることがある
と強調しているが、その際、1975年に行われたギャラップ調査を、神の実在を
信じる心が広く一般に浸透していることを“はっきり示す”ものとして採り上げている。
その調査では、アメリカ人の94%が神を信じていると答えていた。
p125
我々のデータは、こうした神の存在を証明するという立場からのアプローチとは
正反対の方向に利用することもできる。 すなわち、死にかけた時の不思議な
体験は、自分の願望を満たそうとするもの、あるいはその人の心にのみ存在する
概念や心像を投影したものであるという解釈である。
==>> こういう話は、どこまで行っても結論が出ない話なので、
お釈迦様が言ったように、形而上学については「一切不説」「無記」と
しておくのが賢い智慧だと思います。
「友松圓諦著「阿含経入門」 ― その3 「一切不説」、「無記」・・」
https://sasetamotsubaguio.blogspot.com/2022/01/blog-post_7.html
「6 死の直前に味わう恐怖・不快感」
p129
今回の調査でもうひとつの興味深いことが判明したのだが、それは、地獄を信じて
いる人と信じていない人の背景にあるものである。
南部には地獄はあると信じている人が多く、72%が固く信じていると答えている。
この数字は最南部になるとさらに多くなり、81%の人が地獄はあると答えている。
ところが西部では地獄を信じる人の割合は全体の36%とかなり低く、東部でも
41%で、地獄の存在を信じる気持ちはさほど強くない。
天国を信じる人の場合と同じで、学歴の高い人ほど地獄を信じないようだ。
・・・また、カトリックの人(48%)よりもプロテスタント(61%)のほうが
地獄を信じている人が多い。
==>> このアメリカでの、日本とはかなり違う傾向は、いわゆる原理主義的な
宗派がアメリカには多いことが関係しているようです。
村本治著「神の神経学―脳に宗教の起源を求めて」
http://baguio.cocolog-nifty.com/nihongo/2021/04/post-c35641.html
「p265
私は最初、本書を日本人に問うべきか、それとも過去二十年間私自身の
文化圏となっているアメリカの聴衆に向けるべきかを迷った。結局私は日本語
によって私の考えを、先ず日本の一般の方々に問うことを選んだ。 その最も
大きな理由は、この書の内容が、一神教の伝統を持つ聴衆、特に原理主義的色彩
の強いアメリカのキリスト教、ユダヤ教、イスラム教徒の方々から激昂を買い、
一蹴されることを恐れたからだ。
仏教や神道など、汎神論の色彩が強い日本の伝統の中で、「脳に内在する神」
の概念はより受け入れられやすいのではないか、更に言えばもしかしたら
歓迎されるのではないか、というのが私の推測である。」
p130
われわれは1968年にはアメリカと同時に他の8カ国の人々に対しても、「あなたは
地獄があることを信じますか?」という質問をした。
「信じる」と答えた人は、アメリカ 65%、 ギリシア 62%、 西ドイツ 25%、
イギリス 23%、 フランス 22%だった。
・・・それにしても、ギリシア以外の国ではすべて地獄があると信じる人の割合は
アメリカよりはるかに低いという結果が出た。
これらの国々での多くの人が地獄の存在を信じていないという傾向は、これらの国の主な
宗教であるキリスト教の伝統的な教義とは相反している。
==>> 上記の「日本人の国民性調査」で、「あの世を信じる」のは20%でした。
「あの世」を「地獄」と同等と考えれば、この数字は、フランス人の意識に
近いと言えるかもしれません。
いずれにせよ、アメリカの宗教的傾向は、世界的にみても、かなり特異な
レベルにあると言えるのでしょう。
アメリカのこのような傾向は、いわゆる陰謀論が拡散しやすい土壌を作って
いるのではないかと思います。
p131
「死後の世界」と天国の関連性を認めた人は29%しかいない!
・・・一般のアメリカ人は53%が地獄のあることを信じているのに対し、不思議な体験を
した人は46%しか信じていない。 これはおそらく、たいていの人にとって死にかけた時
の不思議な体験が心地よいものであったために、死後の世界に恐ろしいことが待っている
とは思わないためだろう。
このことを裏付けるように、死にかけた時に不思議な体験をした人を対象に調査をした
結果、「地獄にいるような感じがした、あるいは苦しかった」という人は1%弱しかいな
かった。
p133
つまり、死の世界に足を踏み入れたと言っている人の中でも、その時の体験を天国に
関係あるものとみなしているのは3分の1以下しかいないのである。 そして天国の
領域と何らかの接触をもったと確信しているらしき人はたった18%にすぎない。
==>> ここでは、臨死体験がほとんどの場合は「気持ちの良い」感じであることを
語っているようです。 少なくとも地獄に落とされるような恐怖や苦しさ
を感じることはほとんどなさそうです。
もしそんなことがあったとしたら、余程運が悪かったというべきなのかも
しれません。
p136
・・・死というのは人を引き込むような力をもったものであり、生き残るためには
それに打ち勝たなくてはならないという認識は、ある意味で原始的である。
例えば太古の昔から、寒い地方では、吹雪の中を歩いている時に眠くなっても、体の力
が抜けていくような感覚や快い眠気とは断固として戦わなくてはならないといわれている。
なぜならそれは凍死する時の最初の徴候だからである。
==>> 確かにこれはそうであろうと思います。
逆の言い方をすれば、凍死する際の苦しみを忘れさせるための眠気なので
しょう。 私が幼い時に一度死んだ時も、崖から足を滑らせたその瞬間に
意識を無くしてしまいました。 そして、一緒に遊んでいた友達の話では、
崖から落ちて、階段をゴロゴロと転がった後、私は自力で立ち上がり、自宅まで
歩いて帰ったというのです。 もちろん、その間の意識はゼロでした。
その友達は、私の様子が変なのに気づいて、私が崖から落ちたことを親に知らせ
てくれたのでした。
では、次回は「7 死後の世界の支配者」に入ります。
=== 次回その4 に続きます ===
===================================
コメント
コメントを投稿