環七のスナック喫茶・鈴: ネガティブ婆さんとポジティブ婆さんの会話

 

環七のスナック喫茶・鈴: ネガティブ婆さんとポジティブ婆さんの会話



医者の指示で、ダイエットのために朝練をやることにしたんです。

朝練といっても、ママチャリで主に神社や寺などの写真を撮りに行くだけなんです。

そのママチャリ朝練の帰り道、汗だく猛暑の中で、かき氷が食べたくて、

都心の道すがらには見つけることができなかった「氷」の旗を

発見したのが、荒川を渡る直前の環七沿いにあったスナック喫茶・鈴でした。

 


 

初めてドアを開けて入ったのは、水曜日の朝9時半ごろでした。

スナック喫茶というものは、おおむね夕方から深夜まで営業している

というのが私の常識だったので、こんなに朝早くから営業中の札が

かかっているのにも驚いたのですが、かき氷が食えるとドアを開けて

びっくり・・・・なんと演歌が流れていたんです。朝から演歌・・・

 

 

とりあえず、かき氷を注文して店内を見廻すと、まさに昭和。

コテコテの昭和のスナック喫茶。

メニューを見ると、これまたタイムスリップしたかのような

昭和のメニュー。

 


 


 

迷わずナポリタンとレモンスカッシュも注文。

 

ママさんに話を訊くと、30年前に店を開いて、今は80歳だと言う。

同年代の友達二人とこれまでやってきたらしい。

その友達の一人は、「もういい加減にして欲しいよ・・・私83だよ」と

エアコンのバケツに溜まった水を、店の外に運びながら、繰り返した。

 

 

それから一週間後、三度目のかき氷を朝練の帰りに食べに行った。

 

ドアを開けると、演歌が流れ、お客さんが焼きそばを食べていた。

 

「ママ、これ半分食べて。一人じゃ食べきれないから・・・」

 

「○○さんがいないのよ。電話したんだけど出ないし、

家の前に自転車もないし・・・・」

 

「じゃあ、電話してみようか?」

 


 

電話がつながり、その○○さんもお店にやってきた。

 

「悪いわるい、ちょうど医者に行ってたのよ、自転車なかったでしょ。

うちに帰ってエアコンを付けようとしてたら、ママの電話が

あったのよ・・・」

 

やきそばを食べていたお客は、大きな袋をガサガサやりながら・・・

 

「ほんとに、こんなにたくさん薬を飲まなくちゃいけないし・・・

もう病院なんかホントに嫌だ・・・」

 

「なに言ってんの、もう85にもなっているんだから、

歳なのよ、歳・・・だれだって同じよ・・・」

 

「検査検査だし、行くの嫌だあ~」

 

「嫌なら行かなきゃいいでしょ。 長生きしたいから病院に

行ってるんでしょ?」

 

「・・・でも、スケジュール表があるから・・・」

 

「そんなの行かなきゃいいじゃないの」

 

「お金もかかるし・・・」

 

「あんた、一割負担なんでしょ。三割じゃないんだから・・・」

 

「もうすぐ固定資産税を払わなくちゃいけないんだよね・・・。

首吊るしかないよ・・・・」

 

「あんた、旦那さんが亡くなったから、年金はいくらもらってるの。

二カ月で20万ぐらい? 10万あれば大丈夫でしょ・・・

私なんか二か月で6万だよ、一か月3万円・・・」

 

「ああ、もう死にたいよ・・・・」

 

「なに言ってるの。みんなおんなじ。そんな気の弱いこと

ばっかり言ってないで、しっかりしないと。

ぼやいてばっかりじゃダメだよ・・・ねえ、お兄さん」

 

・・と私にふられた。

 

私は半分笑いながら、あやふやな相槌と返事をするしかなかった。

 


 

後でママに訊いてみたところ、ママも病気を3つ抱えているらしい。

 

このお店は、昭和な高齢者の駆け込み寺、心のオアシスなんだな・・・・


この鈴さんに行ってみたい方は、こちらで詳細をご覧ください。

喫茶 鈴 (東京都足立区新田 カフェ・喫茶) - ナポリタンもピザトーストも美味しかったです。 - グルコミ (apese.net)




     





 

 

 

 

 

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