ギャラップ著・丹波哲郎訳「死後の世界」を読む ― その4 「悪魔を信じる」 米 60%、英 21%、日本は?  創造論と福音派と共和党

ギャラップ著・丹波哲郎訳「死後の世界」を読む ― その4 「悪魔を信じる」 米 60%、英 21%、日本は? 創造論と福音派と共和党

  

ギャラップ著・丹波哲郎訳「死後の世界―人は死んだらどうなるか」を読んでいます。

 

 

「7 死後の世界の支配者」を読んでいきます。

 

 

p158

 

全般的にみて、死にかけた時に不思議な体験をした人が出会ったという生命体には、人間

を助けたり、教育したり、導いたり、また、人に警告したりするものもある。 また、

決定を下したり、その人の運命に慈悲深いけれども絶対的な権力を行使したりするような

生命体もある。

 

・・・「霊的な何者かが現れて、家族はだいじょうぶだから心配しなくてもいいと言う

のです。 わたしにはその霊的な方がすべてを見通しておられることがよくわかりました」

 

==>> 私のような、ごく普通と自分で思っている日本人的宗教観の者からすると、

     このような例というのは、かなり一神教的な人格紳を連想させるなと思います。

     もっとも、死ぬか生きるかの瀬戸際ですから、絶対的な権力を行使するような

     存在という意味でいうなら、エンマ大王とかがいるみたいですから、結果的

     には多神教でも同じだと思います。

 

p164

 

今回の調査で、学歴の如何にかかわらず、かなり多くの人が、死後の世界にははっきりと

確認できるような生命体が階級別に存在していると信じていることがわかった。

 

他の調査でも、・・・・アメリカ人の9人に1人(全人口の11パーセント)が幽霊の

存在を信じているということである。 それに、他の国に比べると霊的なことを信じる

人の数はほとんどの場合、アメリカ合衆国がいちばん多いのに、幽霊に関しては

イギリスで20パーセントの人がその存在を信じており、7パーセントの人が実際に

幽霊をみたことがあると言っているのである。

 

==>> 幽霊を信じている人が、アメリカでは11%、イギリスでは20%という

     ことが書いてあります。

     そこで、日本人の場合はどうなのかを下のリンクで探してみました。

     

     「「お化け調査」が浮き彫りにする人々の意識の基底構造

——アジア・太平洋国際価値観調査(APVS)の関連データの概説

     https://www.ism.ac.jp/editsec/toukei/pdf/63-1-163.pdf

     「人々の「意識の基底構造」を垣間見ようと意図し,「お化け調査」と称する,

通常の世論調査とは趣が著しく異なる調査で,素朴な宗教的感情,迷信や言い伝

え,死に対する感情などを問うことを試行した」

「質問別では「d.幽霊や亡霊,人のたたり」に対する感情的反応の割合が最も

高く全体で 7 ほど,「c.妖怪や鬼」に対する割合が最も低く全体で 5 割程度

である.男女別では a b であまり差は大きくないが,c d では女性の方

が若干感情的反応の割合が多い.特に「d.幽霊や亡霊,人のたたり」について

女性における割合が明確に多く,男性の 6 割強に対して女性は 8 割弱

ある.年齢層では若年層の方が感情的反応の割合が多い.若年層と高年齢層とで

2030%ポイント程度もの差が見られた.学歴別では,学歴の高い方が感情

的反応の割合が多く,低学歴層とは 20%30%ポイント近くの差が見られた.」

 

     このデータを上の「幽霊を信じている人」の割合とそのまま比較できるかに

     ついては、やや疑問があるのですが、リンクのサイトではさらに、

     「b.死後の世界」については,米国と台湾は肯定的回答の率は 8 を超えて

おり,日本も 7 あるが,それと比べれば上海と北京は割合が少なくみえる

ものの,それでもそれぞれ 5割弱,3 割弱ある.」

「いずれの国・地域においても,信仰を持つ人々は問 33 に挙げられる「神や仏」

「死後の世界」「霊魂」などの存在に肯定的な回答が,信仰を持たない人と比べ

明らかに多い.特に,信仰を持つ人が過半数を超える米国や台湾においては,

信仰を持たない人も肯定的回答の率が高い.」

     ・・・とされていますので、アメリカの方が日本よりは、心霊的なものを

     信じる割合は多いようにみえます。

 

     ・・・上の「学歴別では,学歴の高い方が感情的反応の割合が多く」というのが

     ちょっと気になりました。

     というのは、アメリカの場合は、いままでに抜き書きしてきたように、

     神秘的なことを信じている傾向は、学歴が低い方に多いとなっているからです。

 

     これに関連した記事は、ドーキンスさんの本にもありました。

     リチャード・ドーキンス著「神は妄想である」:信仰とIQ/教育レベル

     http://baguio.cocolog-nifty.com/nihongo/2021/03/post-f757c6.html

     「p152

私が唯一見つけることのできた、「ノーベル賞受賞の科学的キリスト教徒」

リストの載せているというふれこみのウェッブサイトでも、数百人にのぼる

ノーベル賞受賞科学者のなかで、たった六人しか見つかっていない。 その六人

のうち四人も、よく調べてみたらノーベル賞受賞者などではまったくなかった。

 そして残りのうちの少なくとも一人は、私の確かな知識から言えるのだが、

不信心者であり、純粋に社会的な理由から教会に出席しているだけである。

 

・・・すぐれているとみなされているアメリカの科学者のうちで、人格神を信じ

ているのはわずかに約7%でしかないことを示していた。この無神論者の圧倒的

な優勢は、90%以上の人が何らかの超自然的存在を信じているという、

アメリカの人口全体の統計データとはほとんどまるで正反対である。

・・・ここで注目すべきは、アメリカの大衆全体の信心深さと、知的エリートの

無神論の両極端というべき対立である。」

 

 

p165

 

アメリカ人の悪魔に対する考えと他の国の人々の考えを比較してみるのもいいだろう。

 

・・数年前、一般のアメリカ人を対象にした調査で「悪魔の存在を信じますか?」という

簡単な質問をしたところ、「信じる」と答えた人が60%、「信じない」が35%、そして

「わからない」という人が5%であった。

 

・・・イギリスでは、「信じる」が21%、「信じない」が60%、・・・・

 

p166

 

ひとつには、アメリカでは独立後最初の州が出来て以来、信仰とか宗教心が根強く生き

続けているということがある。 そして、信仰や宗教心が弱まり始めるとそのたびに

信仰復興伝導集会が開かれて、信仰が強められてきたのである。

 

p167

 

聖書に書いてあることはすべて正しいとして文字通りに受け入れ、聖書の権威を

高めようとする考えである。

 

こうした傾向が示すものは、死にかけた時の不思議な体験に出てくるさまざまな超自然

的生命体のことを理解するのに特に重要である。 なぜなら、不思議なできごとを体験

した人が使っている言葉や概念が聖書に出てくるものと一致する場合が多いからである。

 

==>> まあ、ことほど左様に、英国と比べても突出するほどに、米国の状況は

     あまりにも宗教的、神秘的と言えるのかもしれません。

     キリスト教にも原理主義はあるということですね。

 

     そこで、アメリカの政治状況の中に宗教がどう絡んでいるのかをちょっとだけ

     覗いてみましょう。

     「アメリカ民主党と共和党の違いを「1枚の図」にしてみた!」

     https://diamond.jp/articles/-/251606

     この図をみると、宗教に関連しては以下のようなことが書いてあります。

     ― 共和党:

       敬けんなキリスト教徒、 南部、中西部、農業地帯、白人、保守、

       市場重視、金持ちの人たちの党(今は逆転?)

     ― 民主党:

       労働組合、マイノリティ、リベラル、大都市、

       社会福祉、生活保護、貧しい人たちの党

 

     こちらのサイトでは、福音派と政治の関係が述べられています。

     「福音派って何?」

     https://ameblo.jp/boumu/entry-12561944048.html

     「プロテスタントの中の分類です。

主流派・・・近代科学の解釈に寛容なリベラルな人々

原理主義・・・近代科学による解釈を認めず、『聖書』の記述に固執した人々

福音派・・・近代科学の解釈は受け入れないが、過激な原理主義の思想も受け入れ

たくない人々

「他のプロテスタント教会とは性質を異にする英国国教会の中で、厳格で 原理

主義的、非寛容的といっても良いと思うカルヴァンの教えに忠実なピューリ

タンは弾圧を受けました。・・・・メイフラワー号に乗り、他の乗客とともに海

を渡ります。・・・・というわけでアメリカは生い立ちがプロテスタント、

それも原理主義的な色合いが強いようです。」

 

・・・極々凡人の日本人である私には、ほとんど理解ができませんが、

アメリカという国は、原理主義者がかなり多い、宗教的な国のようです。

 

     ドーキンス著「神は妄想である」や立花隆著「臨死体験」でもとりあげられた

     テーマのひとつに、創造論と進化論の教育レベルでの軋轢があります。

     こちらのサイトでも、以下のように述べられています。

 

     「科学への不信を募らせる、キリスト教保守「福音派」」

     https://honsuki.jp/pickup/18143.html

     「ゴーチャット博士の論文で、科学への不信を募らせる人たちに共通する特徴は、

保守的な政治信条のほかにもう一つありました。それは、教会に行く頻度でした。

教会にひんぱんに行く人ほど、科学への信頼が低下していたのです。

宗教のなかでも、「福音派(ふくいんは)(エバンジェリカル)」と呼ばれる

キリスト教のグループが特に科学をよく思っていません。彼らは、神が人類を

創造したとする「創造論」を信じ、進化論を認めない傾向があります。聖書の

記述を重視し、伝統を重んじる保守派グループといえます。米国で人口の約25

を占める、最大の宗教勢力です。」

 

 

 

「8 臨死状態におこる心身の変化の特徴」

 

 

p174

 

この調査の対象となった人の53%、すなわち1200万人が、死後の世界では「人びと

は愛に満ちているだろう」と言っている。

 

 

p175

 

現実の世界に残るかどうかを決める能力は、使徒パウロがコリント人への第一の手紙

の第十五章で述べている“死の征服”の概念と似ている。つまり、死は人間を苦しめたり、

最後まで人間を支配するものではなく、人間が死を選んだり、死から逃れたりすること

ができるということである。

 

==>> ここでは、死に直面した人の言葉として、「死ぬかどうかは自分で選ぶこと

     ができるのだとかんじた」とか「自分で選ぶようにと神に言われました」など

     の事例が書かれています。

     この著者の意図は、おそらく、宗教的な影響によるものではないかという

     ことを示唆しているように見えます。

 

 

p178

 

体験談によく出てくるトンネルの感覚は、超次元的世界に通じる経路か何かかもしれない。

つまり、われわれが意見を求めた一部の科学者が言うように、トンネルの感覚という

のは、彼女を現実の三次元の世界から死後の世界を構成している多次元的な世界に導く

通路になっている可能性があるということである。

 

p179

 

知覚力が鋭くなることによって、その中では思考と時間と空間にまったく制限され

ないような状況になる。 なおかつその思考は行動と密接に結びついていることが多い。

 

・・・死後の世界をかいま見たという人の報告は、死後の世界では知的にも精神的にも

成長するという一般的な考え方とかなり合致している。

 

==>> まあ、この辺りは、内容的にはけっこうぶっ飛んでいると思うのですが、

     最先端物理学というか宇宙論の中には、そのような仮説を唱えている科学者

     もいるようです。 

多元宇宙論にはいろんな考えかたがあるようですが、「多次元」はその中の

ひとつですね。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%9A%E5%85%83%E5%AE%87%E5%AE%99%E8%AB%96#%E5%A4%9A%E6%AC%A1%E5%85%83%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E3%82%82%E3%81%AE

「多次元によるもの

我々が住む宇宙は無限の次元を持つバルク(空間)に浮かぶたったの三次元の

ブレイン(膜)であるとするもの。当然、バルク内に複数のブレインがあること

が許容される。」

 

私が過去に読んだ本の中には、こんなものがありました:

「ブライアン・グリーン著「隠れていた宇宙」」

http://baguio.cocolog-nifty.com/nihongo/2020/10/post-8d8ca6.html

「p26

第一は、ひも理論によるプレーンワールド・シナリオだ。すなわち、私たちの

宇宙は、もっと大きな宇宙という一斤のパンをスライスした薄切りパンのよう

に、高次元空間のなかに浮かぶおびただしい数の「厚板」の一つだと仮定する

考え方だ。」

「p159 

空間が九次元と時間が一次元、合わせて時空が10次元ある宇宙でなら、ひも

理論の方程式は問題なくなる。どうしてこうなるのか、専門的でない用語だけで

説明したいのだが、私にはできないし、できている人にお目にかかったことも

ない。」

 

 

     「知覚力が鋭くなることによって・・・」という話については、立花隆さんの

     「臨死体験」や「宇宙からの帰還」でもちょっと関連する話が出ていました。

     酸素濃度が高くなることによって鋭敏になったり、臨死体験によって人格が

     すっかり変わってしまったような話です。そのような話は実際にそのような

     人物がいるわけですから、完全に否定というわけにはいかない事例ですね。

     

 

p181

 

この種の超次元的なできごとを、見るとか感じるとかいうふつうの五感の働きでとらえた

ものとして描写することは適切ではないかもしれない。 なぜなら、そのようなものは

肉体的制約とあまりにも密接に結びついているからである。

ところが、死後の世界に足を踏み入れかけたり、・・・戻ってきたという人は、

天国らしきところを見たとか・・・・肉体的制約を超えた体験をして、その様子をかなり

詳しく報告しているのである。

 

p182

 

彼は精神障害に陥った状態を“この世の地獄”にたとえているけれども、それはほんとうの

地獄の本質をとらえているかもしれない。

 

ところが、これまでの報告によると、天国と思われるところは、それとは正反対の精神

状態が支配しているようだ。

 

==>> ここでは、一般的な肉体的な病気や精神的な病気の辛さに比べて、

     臨死体験によると思われる精神的な状態は、天国にいるような気持ちの良さを

     感じるケースが多いことを述べています。

     どう判断するのが妥当なのかは分かりませんが、ある限界を超えた場合に

     その辛さを回避する脳のシステムがあると考える方が解り易いかなと思います。

 

p183

 

死後の世界に足を踏み入れると、全面的に自分をコントロールできるようになり、何でも

できるようになるのではないかと思われるかもしれない。

しかし、そうではないのである。 主、またはそれ以外の、すべてのものを支配する

生命体から、さまざまな天使たちやその他の被造物まで、そのあいだには権威と服従の

画然とした階級があるのだ。 そして、死んで死後の世界の一員となった人や、死にかけ

た人も他の生命体と同じように上からの命令に従うことになっている。

 

p184

 

この女性の場合、最終的にこの世に戻るかどうかを自分で決める力はほとんどなく、

より偉大な力によって戻るように指示されたといえよう。 ところが、偶然の一致が

どうかはわからないけれども、彼女は超次元的世界らしきところを“すばらしいところ”と

言いながらも、本当はもっともとの世界にいたいと心から願っていたのだった。

 

==>> アメリカの場合は、あの世にいっても、いろいろと制約があったり、階級が

     あったりと、自由の国としてはあるまじき世界じゃないですか?

     もっとも、現実の世界がそうなんだから、あの世も同じだとしても不思議では

     ないのですが。せめて、あの世ぐらいは自由であった欲しいですね。

 

     日本では、臨死体験といえば木内鶴彦さんが一番有名みたいです。

     「木内鶴彦さんが臨死体験で見た真実」

     https://reisikantei.com/ufo/kiutituruhiko/

     この方の場合は、時空を超えて、それもご本人の意のままに、大昔や未来まで

     観て廻っているようですから、これが日本型の臨死体験だとするならば、

     私は絶対に日本型の方がいいですね。

 

     ただし、日本型と言っても、いろいろあるみたいで、例えば空海さんが

     唱えている十住心論には、顕教と密教の違いが書いてあって、そこには

     10段階の修行のレベルがあって、密教がいちばん上なんだそうです。

https://kotobank.jp/word/%E5%8D%81%E4%BD%8F%E5%BF%83%E8%AB%96-77042

     そして、あの世に行ったとしても、その10段階の修行を続けないといけない

     んだそうです。 一応即身成仏ですぐに成仏はできるんだけど、あの世に

     いっても階級があるらしいです。

     カントさんも「実践理性批判」で、あの世に行ってからも修行が大事と書いて

     いるそうですから、洋の東西を問わずに、あの世での自由を期待するのは

     ムリなのかもしれません。

 

     「NHK「100分で名著」より西研著「カント:純粋理性批判」

     http://baguio.cocolog-nifty.com/nihongo/2020/07/post-601eba.html

     「実践理性は「完全なる道徳的世界とそこでの生き方」を理念として思い描き、

それをそのまま実現するように命じる・・・」

「現実世界にあって、道徳的に正しく生きることを支えてくれるのが、神への

信仰であるとカントは述べます。」

「人間は、みずからを道徳的存在として完成させるために死後も修練しなけれ

ばならない、とカントはいいます。」

 

 

では、次回は 「9 死後の世界 ―― 人は何を与えられるのか」に入ります。

 

 

=== 次回その5 に続きます ===

 ギャラップ著・丹波哲郎訳「死後の世界」を読む ― その5(完) 日本の終末期医療は大丈夫かなあ・・・ぽっくり地蔵しかないか? (sasetamotsubaguio.blogspot.com)

 

 

 

 

     

 

 

 

 

 

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