投稿

3月, 2022の投稿を表示しています

福井直樹著「自然科学としての言語学:生成文法とは何か」を読む ― その2 個別言語の文法はいらない? 一番遠い英語と日本語の文法をどうまとめるの? 

イメージ
福井直樹著「自然科学としての言語学:生成文法とは何か」を読む ― その2 個別言語の文法はいらない? 一番遠い英語と日本語の文法をどうまとめるの?      福井直樹著「自然科学としての言語学:生成文法とは何か」 を読んでいきます。     「第二章 生成文法の目標と方法」     p031   チョムスキーのいう「プラトンの問題」 ・・・・というのは、一般的な形でいうと、 「人間は、外界から与えられる非常に限られた資料を基にして、なぜかくも豊かな 知識を持つに至るのか?」 という認識論上の問題であるが、このことを言語知識に 関して述べ直すと、「子どもに外界から与えられた資料は個別的であり、かつ量的にも 質的にも非常に限られたものであるのに、獲得された言語知識(=文法)は同一言語 共同体においてはほぼ均一であり、かつ、与えられた言語資料から帰納可能なものを はるかに超えた、豊かで複雑な知識である。  何がこのようなことを可能にして いるのか? 」という形の問題になる。   p033   このような問いに、 人間という種に生物学的に組み込まれている「言語機能」の存在 と いう経験的仮説を立て、それに関する自然科学的理論を構築することをとして答えよう とする営みが、すなわち生成文法理論なのである・・・・   ==>> ここに「生成文法」の根本的な考え方が集約されているように思います。      文法という言葉からは、元日本語教師である私にとっても、連想するのは      国文法とか日本語文法とか英文法などであるわけですが、ここで言っている      「文法」の意味は、一般的なものとはまったく異なるものだということです。     p034   誤解を恐れずに言えば、 個別言語における言語分析そのものは生成文法理論の関心事 ではない のである。    p035   生成文法の研究者は、言語機能に関する自然科学的理論の構築は可能である、という 見通しを信じて研究を続けているのであるが、根源的なところで、結着が未だついていない 「論点」が存在していることを忘れてはいけないと思う。   p036   物

福井直樹著「自然科学としての言語学:生成文法とは何か」を読む ― その1 「普遍文法」とは脳の初期状態? 言語学は今や理系の学問

イメージ
福井直樹著「自然科学としての言語学:生成文法とは何か」を読む ― その1 「普遍文法」とは脳の初期状態? 言語学は今や理系の学問       福井直樹著「自然科学としての言語学:生成文法とは何か」 を読んでいきます。   そもそも、この本を読もうという気になったのには、私にとって二つの意味があります。   その一つは、「意味とは何か」「志向性とは何か」ということを知りたいということで、 「意味論」に関する本を読んでみようと思ったことです。 それで、下のような本を買ってみました。     しかしながら、特に真ん中の「意味論」という本は、まったく期待外れに終わりました。 そして、左の「言語を生み出す本能」は、パラパラとめくってみたものの、私が 読みたくなるような内容ではなく、唯一右の 「認知言語学への誘い」 が、元日本語教師 としての私にとっては懐かしさを含めて、興味深い内容が書かれていました。   そして、二つ目の意味に繋がるのですが、この言語学で世界的に有名な チョムスキーの 「生成文法」 について書いてあったので、興味を引かれたのです。 「生成文法」については、十数年前に一冊買ったのですが、その時は、「この本は日本語を 教える現場では使い物にならないな」という感じだったので、「ツンドク」本になって しまったのです。   しかし、チョムスキーの本をいきなり読んでも、相当難解だろうなと思い、この 福井直樹著をまずは読んでみようと思ったわけです。 しかし、読んでみて驚きました。 現場の日本語教師が読むような内容ではまったく ありませんでした。 「ツンドク」本になっていたのは当たり前のことでした。   言語学者である ノーム・チョムスキー については、既に読んだばかりの 「誰が世界を支配しているのか?」 の感想文を書きましたので、そちらも参考と してください。 https://sasetamotsubaguio.blogspot.com/2022/02/blog-post_18.html   それでは、「生成文法とは何か」という視点から、この本を読んでいきたいと思います。     「まえがき」   piii   

ノーム・チョムスキー著「誰が世界を支配しているのか?」を読む ― その13(完) 自由民主主義の大衆は「見物人」だ。 世界を支配する巨大な私企業。

イメージ
ノーム・チョムスキー著「誰が世界を支配しているのか?」を読む ― その13(完) 自由民主主義の大衆は「見物人」だ。 世界を支配する巨大な私企業。     ノーム・チョムスキー著 大地舜 神原美奈子 訳 「誰が世界を支配しているのか?」を読んでいます。     「第二十三章 人類の支配者」     p343   「誰が世界を支配しているのか?」を理解するには、 アダム・スミスのいう「人類の支配者」 を無視することができない。  彼の時代における人類の支配者とは、英国の貿易商や 工場主だった。   私たちの時代では、多国籍企業や巨大な金融機関、超巨大小売業者 などだ。     p344   現在では、 支配者たちの組織が絶大な権力を握っている 。 それは海外でも、国内でも 変わらない。 彼らは国家に権力を守ってもらうだけでなく、経済支援も受けている。  人類の支配者たちが何をしているかを知りたければ、 国家が優先している政策に目を 向けるとよい。   たとえば TPP(環太平洋パートナーシップ協定) だ。 これは本来、投資家の権利に 関する協定だが、御用メディアや解説では「自由貿易協定」と不当に表示されている。 交渉は秘密裏に行なわれ、中身を知っているのは、細則を書く何百人もの企業弁護士 やロビイストだけだ。    ==>> ここで、こちらのサイトで TPPのメリット・デメリット をチェックします。       「 TPP とは?メリットやデメリット|国内産業への影響について解説」      ( URL が長すぎるので、一番下にリンクを貼ります)      「 TPP の目的は、環太平洋における経済活動を活発化することです。 その対象はモノだけでなく、知的財産、サービス、投資などのさまざまな分野 にわたります。」 「日本も2008年ごろから参加を検討していたものの、実際に参加したのは 自公連立政権になった2013年でした。」 「しかし 2016年10月、アメリカのトランプ元大統領が就任直後に離脱 を 表明します。その後アメリカを除く11カ国で新たに協議が行われ、2018年 に「 TPP 11協定」が11ヶ国で署名さ