定方晟著「インド宇宙誌 ― 宇宙の形状、宇宙の発生」 ― その4 ブラフマー神の一生は 人の年数に換算すれば 311,040,000,000,000年
定方晟著「インド宇宙誌 ― 宇宙の形状、宇宙の発生」 ― その4 ブラフマー神の一生は 人年に換算すれば 311,040,000,000,000人年
定方晟著「インド宇宙誌 ― 宇宙の形状、宇宙の発生」を読んでいます。
「ヒンドゥー教の宇宙観」
「プラーナの宇宙観」の続きです。
p116
前節までに述べた時間単位は、われわれ人間の経験の範囲に収まるものである。これより
大きい時間単位は神話の範疇に属する。
人間の一年が神の一日に相当する。 ・・・神の一日が360あつまって神の一年を
形成する。・・・神の一年が12,000あつまって1チョトルユガを構成する。
p120
1マハーユガは神の1年が12,000あつまったものである・・・・
・・・すなわち人間の432万年となる。
p121
このマハーユガが1,000あつまって1カルパという時間単位を構成し、これが
・・・ブラフマー神のたった1日でしかない。 ・・・ブラフマー神は神々のなかでも
別格の存在であることがわかる。
p122
ブラフマー神の一生は百年だから、ブラフマー神の一生には72,000カルパが
含まれることになる。 これを人年に換算すれば 311,040,000,000,
000人年になる。
p124
ブラフマー神の一生はクリシュナ神の瞬き一つだなどと記す書物がある。
==>> 古代インド人の時間感覚というのはとんでもないものだと思うのですが、
これだけ重層的な時間単位を考え出せるというのには恐れ入りました。
無限な時間とゼロを追求したインド人だからこそ、今のインド人の
数学的素養があるのでしょうか。
それに比べると、日本神話はどうなんでしょうか・・・・
私が古事記などの関連本を読んだ限りでは、そのような時間感覚を記述
したものはなかったように思いますが、もしかしたら古代日本人には
時間というものは無かったのかもしれません。
と言うのは、汎神論的な思想の一部には時間というものがない宇宙を
イメージさせるような部分もあるように思うからです。
もしかしたら相対性理論につながるものかもしれないと思ったりします。
・・・それに関連するかもしれない理論でこんなものがありました。
「宇宙に時間は存在しない!! ループ量子重力理論」
https://muplus.jp/n/n241df8635977
「この理論では、時間も量子のひとつとされるため、過去・現在・未来という
一方向の流れがなくなる。このとき、すべての超常現象が肯定される。霊も超能
力も死後の世界も、ループ量子重力理論によって説明できるのだ!」
「「宇」は東西南北の空間の広がりを、「宙」は古今の時間の広がりを表す。
今ふうにいえば時空間だ。それが宇宙であると、漢字をあてた中国人は考えた
わけだ。奇しくもそれは、アインシュタイン以降の宇宙観と合致する。
「人間は宇宙の雛型であり、宇宙は巨大な人体である」」
「常識に慣れた目には不可思議に見える量子重力理論だが、どのようにして
量子重力理論が生まれたかを知れば、納得がいく。というのも、量子重力理論は、
極微の世界=ミクロコスモスを記述する量子力学と、大宇宙=マクロコスモス
を説明する宇宙論を無理なくつなぐために考えられたからだ。
極論すれば、量子重力理論は、魔術や呪術などの古代思想と現代科学を橋渡し
する理論でもあるのだ。」
==>> 難しそうな本ですが、上記のカルロ・ロヴェッリが一般向けに書いた
『時間は存在しない』(NHK出版)を注文してしまいました。
書評を読んでみるとかなり難しそうなので、ムリだとは思うのですが・・・
p129
「宇宙の生成」
宇宙の根源、存在の根源はヴィシュヌである。 ヴィシュヌはあらゆる感覚を超え、しかも、
あらゆる時間、あらゆる空間、あらゆる存在物に遍在している。
p130
(第一次創造)
ブラフマはまず「純粋精神」(ブルシャ)の形態をとって現われ、つぎに「未開展者」
(アヴィヤクタ)、「開展者」(ヴィヤクタ)の二形態のもとに現われ、最後に「時間」
(カーラ)の形態で現われる。これら四つの形態が、生成、維持、消滅の現象の
基体になる。 これら四つのいずれでもあるヴィシュヌは子供が遊戯(リーラー)する
ように宇宙の創造をおこなうのである。
==>> う~~ん、最初に「純粋精神」というのが出てくるのが、非常に示唆的だ
と思います。 現代哲学の「純粋意識」あるいは「純粋経験」、はたまた
「クオリア」を連想させます。
p130
思惟機能が「根本原資」から生じるとされること、すなわち物質と同じ起源に由来する
とされることに注意すべきである。 「大なるもの」と呼ばれる理由は、それが最初に
作られた原理であり、その後の被創造物のなにものよりも大きな広がりをもつからで
ある。 「大なるもの」がさらに展開して、そこから「自我意識」(アハンカーラ)が
現われる。
==>> この辺りの表現は「神の物理学」にでてくる素領域論と完全調和の宇宙を
思い起こさせます。
おまけに、釈迦が唯物論を知っていたのではないかということも連想させます。
馬場紀寿著「初期仏教―ブッダの思想をたどる」
https://sasetamotsubaguio.blogspot.com/2021/10/blog-post_30.html
「p17
アーリア人の伝統的価値観では、ガンジス川流域は不浄な土地だった。 しかし、
まさにその地から、都市の成立を背景として、虚無主義、唯物論、運命論、
懐疑論などを説く思想家たちが現れた。 彼らの作品は伝存しないが、仏典には
こうした新思想の担い手たちが記録されている。 彼らは仏教側から「六師外道」
と呼ばれた。
==>> 唯物論もインドで生まれたということでしょうか。しかし、文字が
なかった時代とはなんとももどかしいものです。
「六師外道」をチェックしておきましょう。
「六師」と呼ばれる思想家たちは,
道徳否定論を説いたプーラナ・カッサパ,
7種の要素をもって人間の個体の成立を説いたパクダ・
カッチャーヤナ,
輪廻の生存は無因無縁であるとし決定論を説いたマッカリ・
ゴーサーラ,
唯物論を主張したアジタ・ケーサカンバラ,
不可知論を唱えたサンジャヤ・ベーラッティプッタ,
ジャイナ教の祖師であるニガンタ・ナータプッタ
(→マハービーラ ) である。」
p132
次に「自我意識」から次のような器官が出現する。 感覚器官としての「皮膚」、
「眼」、「鼻」、「舌」、「耳」、運動器官としての「肛門」、「生殖器官」、「手」、「足」、
「発声器官」である。
==>> これは驚きました。 現代科学の見方は感覚器官や脳から自我意識が生まれる
という方向ですから、まったく逆の思想ですね。
今の最先端の科学の中にも、素粒子レベルに意識があるという発想があります
から、意識が先だというのは、馬鹿にできません。
p133
卵のたとえは宇宙卵の内部構造に対しておこなわれるべきであろう。 黄味は地球に相当
する。 白味は虚空に相当し、地球は虚空のなかに漂っている。 薄膜ないし外殻は天球
である、という具合にである。
宇宙の生成神話に卵のイメージが登場するのはインドでは珍しくない。
・・・複雑な生命体の発生の原点としての卵をみなれていた古代人にとって、このような
発想はきわめて自然である。
ヴィシュヌが・・・ブラフマー神となって宇宙を作り、・・・「暗質」を楽しむとき、ルドラ
神(=シヴァ神)となって宇宙をのみこむ。
==>> これは「たとえ」として書かれている宗教的な表現・神話なのですが、
現代の理論物理学でも宇宙を生命体と考えている学者はいるようです。
「宇宙は巨大な生命体である」
https://www.excite.co.jp/news/article/EpochTimes_45063/
「カナダのペリメーター理論物理学研究所の理論物理学者であるリー・スモーリン
は、上記の宇宙繁殖の問題について、理論的に肯定的な答えを示した:宇宙には
自分の家族と子供たちがいるが、彼らはブラックホールのエリアに隠されて
いる。」
「スモーリンは「宇宙は生物学に記述されているように成長している。ブラック
ホールを通して代々生み出し、そして宇宙群まで形成する」と述べた。」
・・・古代の人間は真実を見通していたというべきか、あるいは人間は
現代人が思うようには進化していないと言うべきか・・・
p134
ここで注意しなければならないのは、このヴィシュヌは決してキリスト教の創造主の
ような創造者ではないことである。 ヴィシュヌは被造物と厳密に区別されるような
創造者ではない。 かれは創造者として自らを創造し、維持者として自らを維持し、
破壊者として自らを破壊する。
p135
サーンキヤ学派では、ウパニシャドの哲人ウッダーラカの思想を批判的に改革して、
唯一なる有の代わりに二つの実在的原理を想定した。
一つは精神的原理としての純粋精神であり・・・・アートマンとも呼ばれる。
これに対して他の物質的原理は根本原資であるが・・・・
純粋精神は実体としての個我であり、原子大で、多数存在し、その本質は知または思で
あるという。 ・・・・これに対して根本原資は根本的な質料因である。 本来物質的
で活動性を固有し、純質、激質、翳質という三つの構成要素よりなっている。
・・・純粋精神の観照を機会因として激質の活動が起こると、根本原資の平衡状態が
破れて開展が開始される。 ・・・・・
==>> よく分からないのですが、古代インドの哲学は、お釈迦さんが考えたと
思われる縁起のような、つまり私が好きな言葉でいえば「相依り」という
相互作用によって宇宙が造られたということのようです。
表現としてはかなり科学的な表現のようにも見えます。
ところで、宇宙を創造し、それを破壊して、繰り返すという話に
ついては、現代の物理仮説でも出てきているようです。
「宇宙が誕生と消滅を無限に繰り返している証拠を発見!?」
https://creators.yahoo.co.jp/uchuyabaichkyabechi/0100159573
「ロジャー・ペンローズ博士がブラックホールの特異点定理の功績で2020年の
ノーベル物理学賞を受賞しました。
そんなペンローズ博士は、宇宙は消滅と再生を繰り返しているとする
「共形サイクリック宇宙論(CCC)」を提唱していることでも知られています。」
そして、つい最近入ってきた情報に下のようなものがありました。
「ダークマターはほかの物質をダークマターに変えて増殖する物質ではないか
との研究結果」
「オスロ大学のトルステン・ブリングマン氏らが唱えた説は、暗黒物質は通常の
物質同士が対消滅を起こしたことにより生まれたもので、その後暗黒物質が
通常の物質と対消滅を起こすことで暗黒物質が指数関数的に増えていったと
いうもの。
ブリングマン氏らが考案したモデルでは、宇宙誕生初期は通常の物質の量が
暗黒物質の量を上回っていたものの、暗黒物質の粒子が別の粒子と接触した
時に対消滅を起こし、既存のモデルと比べて爆発的に増えていったことが示唆
されるとのこと。このモデルは、現在暗黒物質と通常の物質の比率が6:1で
あることの確かな説明にもなるとブリングマン氏らは述べています。」
・・・どうやら、古代インドの思想が、現代物理学の仮説で証明されるのかも
しれませんね。 神が造ったり壊したりするみたいです。
p136
(第二次創造)
第二次創造はブラフマー神の一日(カルパ)ごとにくりかえされる。 この創造は
水のなかに没した大地を水上に引き上げる作業と、もろもろの生物、もろもろの文化を
創ることからなる。
ブラフマー神はその大地を平らにならし、前カルパで崩壊した山々を作りなおし、大地を
もとのように七つの洲に分けた。 それから、地面、虚空、天上、聖界の四つの界を
これまた前カルパにおけると同様に作り上げた。
つぎにブラフマー神は植物、動物、人間を作りだした。前カルパの世界消滅で消滅した
生きものを、ブラフマー神は、かれらの業に応じて、右の四種の存在のいずれかの状態
に作り出した。 すなわち、生きものは己の業の結果を決して免れることはできないの
である。
==>> ここでユダヤ教、キリスト教、イスラム教に共通する「天地創造」が
どんな内容だったのかを確認しておきましょう。
まんが朗読 旧約聖書「創世記」
https://www.youtube.com/watch?v=Zm3NQH7v-jg&t=147s
これを見ると、人の目に見える世界を素直にそのまま描写したように見えます。
しかし、私が気になるのは、そのすべてを人間の支配に任せたという部分です。
ところで、ユダヤ教はいつ頃成立したのかなんですが・・・・
こちらのサイトによれば:
https://www.lets-bible.com/judaism/digest.php
「ユダヤ教は、ユダヤ人が信仰する民族宗教で「世界最古の宗教」といわれて
います。 ・・・ユダヤ教は、紀元前13世紀(推定:紀元前1280年頃)
モーセが神から「十戒」の石板を授かったときが起点とされています。」
・・・ということだそうです。
一方で、ギリシャ哲学の時代はどうかとみてみると、wikipediaには、
「西洋哲学の特質はギリシャ哲学とヘブライ信仰(キリスト教信仰)をその基調
に持つ点である。
紀元前6-7世紀に哲学が発生した地域としてギリシャ(ソクラテスら)、
北インド(釈迦)、黄河流域(孔子ら)を挙げることができる。世界をひとつの
普遍的秩序において捉え、神話に囚われない自由な理性的思考に至った点で、
それらの地域は共通する。」
また、Wikipediaでは、古代インドの哲学については、
「ウパニシャッド - 宗教的な聖典の中でも、より哲学的な要素が多い書籍類の
総称で、200種類を超え、紀元前800年に書かれたものから、16世紀に書かれ
たものまである。」
・・・要するに、ユダヤ教は紀元前13世紀、ギリシア哲学やインド哲学は
それよりも数世紀あとに成立しているようですから、宗教、哲学、自然科学
がほとんど区別なく語られていたことを思えば、シンプルな内容から複雑な
内容に変化していったというのも自然なことかと思います。
p139
ブラフマー神の創造は続く。 かれの腿から阿修羅が生まれ、かれの口から神が生まれ、
かれの頭から髪の毛がおちて蛇になった。 昼や夜や暁といった天然現象や、飢餓、韻律、
ヴェーダ聖典といった抽象的なもの、文化的なものもかれらのからだから生まれた。
そして、あの有名な四階級の起源もブラフマー神のからだに結び付けて説明される。
==>> 神が神を産むというのは、日本神話にも共通する部分でしょうか。
古事記に語られている話は、かなりエログロな雰囲気の話ですが、
そのような雰囲気はユダヤ教の創世記神話にはなさそうですね。
ここで古事記の「天地初発」と「国生み」神話をチェックしてみましょう。
https://www.youtube.com/watch?v=FOGq-AazdQI
https://www.youtube.com/watch?v=Mfs8nSbhGoI
これを見ると、日本神話の神々は性別不明みたいな、一生独身みたいな神さまも
いますが、実に人間的というか、人間臭い労働もやっていて、ユダヤ教などの
一神教の神とはえらく違います。
一方で、古代インドとは似ているように思います。
次回は「終末と世界消滅」に入ります
=== 次回その5 に続きます ===
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