村上和雄著「コロナの暗号」を読む ― 3  「つつしむ」こそがコロナの暗号? スピリチュアルな科学??

 

村上和雄著「コロナの暗号」を読む ― 3  「つつしむ」こそがコロナの暗号? スピリチュアルな科学??

  

村上和雄著「コロナの暗号: 人間はどこまで生存可能か?」を読んでいます。

 

 


  

p123

 

マラリアは世界で一年間に推定2億人が感染し、40万人が以上が死亡する感染症です。

このマラリアに感染しない人たちがいます。

それは鎌状赤血球症の遺伝子をもつ人たちで、彼らの赤血球の酸素を運ぶ能力は比較的

低いのですが、マラリアは流行ったときには、かえってこのような人たちが生き延びて

いったのです。 

そういう意味でも、多様性こそが素晴らしいのです。 パンデミックが起こったときでも

この多様性によって全体の滅亡を避けることができます

 

==>> これについては、新型コロナウイルスで、日本などの一部の国で感染者数や

     死亡者数が少ないのは何故かというファクターXが話題になりました。

     しかし、最近、そのファクターXはこれだという日本人の60%が持っている

     遺伝子が突き止められたという研究発表がありました。

     残念ながら、その遺伝子は、デルタ株によって突破されてしまったようです。

     それについてはこちらでどうぞ:

 

     「ファクターXは HLAA24で決定?」

     https://sasetamotsubaguio.blogspot.com/2021/08/hlaa.html

 

 

p135

 

・・・水耕栽培(ハイポニカ農法)を考案した野沢重雄氏は・・・

 

「いまある植物というのは、一つの条件に対応した限られた可能性しか出していません。

なぜもっと大きな可能性が現れないのかと考え、さまざまな条件を調べていったのです。

その一つが、土がじゃまをしているという見方でした。」

 

・・・通常の1000倍ものトマトを実らせたことで見事に証明されました。

 

p137

 

ですから、私たちは、自然をよく観察して、その法則に合致した生き方をすれば

いいのです。 もしそれができれば、私たちはあのトマトのように、信じられない

ほどの大きな力を発揮できるようになるはずです。

 

==>> この水耕栽培のトマトの話を、人間の生き方、考え方に広げるという著者の

     考えは、腑に落ちません。

     トマトが元々農業に使われる前に、その原産地で原種としてどのような

     環境でどのように育ったのかは知りませんが、その原種のトマトはトマト

     として、環境に応じて、その法則に合致した形で生きていたと思うからです。

     トマトとして1000倍の実をつけることが、それも土という様々な栄養や

     微生物と共生していたところから、水耕栽培という人工的な環境の中で

     生きることが幸せなのか、という点です。

     水耕栽培という人工的な環境は、人間の都合で強制された環境でしかないのに、

     それが「自然をよく観察して、その法則に合致した生き方」であり得るのか

     ということです。

     この著者のこうした比喩的な表現は、人類は将来は宇宙空間に基地をつくって

     水耕栽培のトマトと同じような環境に身を置けと言っているように聞こえて

     しまいます。

 

p141

 

・・・・劣等感で一杯でした。 私の遺伝子はOFFのままだったのです

そんな私が変わったきっかけはアメリカ留学でした。 実力主義で自由な研究環境の

中で、私は変わりました。 遺伝子が一気にONになったようで、私は研究に本気で

打ち込むようになったのです。

日本人研究者の中には、外国に行っていい仕事をする人がしばしばいます

日本の研究土壌が合わなくて、遺伝子がONになっていなかっただけのことだったのでしょう。

 

==>> 遺伝子がONかOFFかの話は置いといて、日本から海外に出て生活をする

     のは本人に大きな影響を及ぼすのは本当だと思います。

     私も過去15年間フィリピンの高原学園都市バギオに住んできましたが、

     日本にいたら全くできなかったようなことがいろいろと出来たように思い

     ます。 少なくとも息苦しい日本の環境からは解放されます。

     もちろんそれは、外国人という気楽な年金生活者であることが大きいとは思い

ますが。

 

p161

 

ガイア理論では地球が自己調整システムを持ち、生物は地球環境に適応するとともに、

環境に働きかけて環境を変化させるという相互関係にあるものとされます。ここで地球を

「生きている」とすると、生命の概念は大きく広がっていくと思います。

 

・・・助け合い、譲り合い、分かち合いという「三つの“合い言葉”」が、本当の進化の

原動力だとする考え方なのです。

 

==>> さて、ガイア理論という言葉が出てきました。

     こちらで確認します。

     https://kotobank.jp/word/%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%82%A2%E7%90%86%E8%AB%96-456718

     「地球上において、大気や地殻などの自然環境と、動植物などの生物が相互に

影響し合うことで、地球という惑星が一つの大きな生命体のように活動して

いると見なす理論。」

 

・・・私自身は、この考え方に賛成です。

仏教の様々な言葉の中で、私が一番好きな言葉は「相依り」というもので、

万物は相互作用によって発生するという考えかたです。

いわゆる「空」の考え方ですね。

 

 

p162

 

ひと頃、「利己的遺伝子」という言葉が大きな話題になりました。 イギリスの動物行動

学者で進化生物学者のリチャード・ドーキンスが書いた「利己的な遺伝子」という本が

きっかけでした。

 

・・・「生命の主体は私たちを含めた生物ではなく、あくまで遺伝子であって、私たちは

遺伝子が生命を繋いでいくために利用されている道具にすぎない」

そして、遺伝子は自分自身を残すためならどんな手段でも使う利己的な存在だと言う

のです。

 

p163

 

・・・これは、いわば遺伝子ファーストの考え方であり、すべてが遺伝子のために

働いていることになります。 しかし、それは遺伝子の一面的な見方であり、それだけでは

遺伝子の多様な働きを説明できません。

 

p164

 

しかし、遺伝子は逆に、「利他的」に振る舞っているとしか思えない現象を見せることも

あります。

 

・・・それらは利己的に働いているわけではなく、お互いが助け合って機能しています。

だから臓器としての固有の働きができ、さらに臓器同士が有機的に結びつくことで身体

全体が生きているのです。

 

p166

 

私はリチャード・ドーキンスのこの書籍が流行り、それが人間の本質、生物の本質で

あることが世界の潮流となって以来、ずっとその説に異論を唱えてきました

遺伝子にも利他的な働きをする情報が存在し、助け合いのために必要な情報はDNA

に書き込まれているという仮説を提唱してきたのです。

 

 

==>> ここの記述については、著者である村上さんは、ドーキンスの説を誤解して

     いるように思えます。

     私が過去に読んだ本の中にこのようなドーキンスの話がありました。

     ここでドーキンスさんは「短絡的な思い違いを正すためです」と言っています。

 

     「リチャード・ドーキンス 特別講義「進化とは何か」」

     https://sasetamotsubaguio.blogspot.com/2021/07/blog-post_89.html

     「p225 

利己的遺伝子は、協力的な個体を作り出すのです。 「利己的な遺伝子」の中で、

「だまされやすい人vsだます人」の例を用いてゲーム理論を説明し、

「やられたときだけやり返す」ようないい人はとてもうまくいくことを示し

ました。その章に「気のいい奴が一番になる」という見出しをつけたのは、

利己的遺伝子は利己的な固体を作る、という短絡的な思い違いを正すためです。

 

==>> ここでドーキンス著「神は妄想である」を振り返ってみますと:

     http://baguio.cocolog-nifty.com/nihongo/2021/03/post-dda1e9.html

     「P314 

利己的な遺伝子という考えの趣旨は、自然淘汰の単位(つまり利己主義

の単位)は利己的な個体ではなく、利己的な集団でも、利己的な種でも、

あるいは利己的な生態系でもなく、利己的な遺伝子だということにある。

情報という形で、多数の世代にわたって生き残るか、残らないかという

のは遺伝子なのである。」 

 

ここでは「利己的」としている遺伝子というのは個ではなくあくまでも

遺伝子レベルという意味であって、その意味では「利他的」であるという

ことでしょうか。

     だから、騙されやすいけれども、「やられたときだけ」やり返すという

     気のいい個であるということになりそうです。

 

     ・・・おそらく、これは私の妄想ですが、村上氏は「科学は宗教である」

     考えている人であり、一方でドーキンスは無神論者であることを主張して

     いる人ですから、根本的なところで考え方が異なっているということでしょう。

     実際に村上氏はドーキンスの考えを厳しく批判した人だそうです。

 

     私自身は、科学者は科学者らしく、無神論者でいて欲しいという考え方ですが、

     宗教は好きなんで、お釈迦さんや親鸞さんや空海さんなんかの本も読みます。

     村上氏が「科学は宗教である」と言ったとしたならば、私はそうではなくて、

     「科学は信仰である、宗教も信仰である」と言いたいと思います。

     要するに、科学も宗教もよう分らんってことです。

 

     ・・・上記の村上氏の文章の中では、「遺伝子には利他的な働きがあるという

     事実を無視するわけにはいきません。」

     と書いてあるのですが、それがどういう事実かについては、

     「ヒトはときに自分の命をなげうって見知らぬ他人を助けるという愛の行為を

     します・・・・」

     という個体レベルでの現象を提示しているだけになっています。

     私は「遺伝子レベルでの利他的事実」というものを村上氏には書いて欲しかった

 

 

p171

 

ミラーニューロンが注目されているのは、他者の行動やその意図を理解する手助け

になるのではないかと考えられているからです。 他人のことを我がこととして感じる

「共感」の能力などに関係しているのではないか、と考えられています。

それもまた、遺伝子の利他的な働きを示す一つの証拠といえるのではないでしょうか。

 

・・・赤ちゃんは自分自身に影響しない行為について公平な判断を下す。それは大人が

善いとか悪いとか評する行為に対する判断だ・・・・

 

==>> この章は「ヒトはうまれながらにして善なのか」となっていまして、

     その善の源泉としてこのミラーニューロンを考えているようです。

     イエール大学心理学教授の実験を基に、章の「まとめ」には、

     「乳児でも、利他的行為を見ると嬉しそうな表情をする」と結論づけて

     います。 

     しかし、残念ながら、私には心理学的研究内容がどのように遺伝子レベルの

     利他性に繋がるのかは分かりません。

     いずれにせよ、利他的な遺伝子があったとしても、利他的であることによって

     その遺伝子が生き残れるとするならば、それはその遺伝子にとっては利己的な

     振る舞いであるとも言えるので、見方が違うというだけのような気がします。

 

 

174

 

チンパンジーはゲノムレベルでヒトと1.2%しか違わず、その知能もヒトの幼児より

も高いほどですが、ヒトでは当たり前に行なう「助け合い」を決してしないといいます。

 

・・・つまり他人を信頼して思いやって助けるというのはヒトだけに見られる稀有な

性質だというのです。 

 

==>> これには賛成できません。

     この後にニホンザルの例が書いてあって、実験の結果、一般のニホンザルでは

     協力するのが1%で、淡路島のグループでは50%が協力するなどと

     書いてあるのですが、 私が最近よく目にするYOUTUBEなどの動画では

     多くの動物でも「助け合い」をする姿が記録されていますし、種を超えた

     動物の間でもそのような行動が見られることが報告されているからです。

 

p176

 

現在地球上で繁栄している我々人類は、特に高い寛容性を持った遺伝子を進化において

獲得した可能性があると言えます。

利他=善、利己=悪という二元論はもはや古い考えと言えるのではないでしょうか。

そもそも生命の働きに対して利他的とか利己的とかいうレッテルを貼ることも誤りかも

しれません

 

==>> 人類だけに特に高い寛容性があるというのには、いささか同意しかねます。

     歴史を見れば、多くの戦争など、非寛容な行動が人間にだけあったようにも

     見えるからです。

     後段については、そう思います。

     しかし、村上氏がどういう意味で述べているのかの真意は測りかねます。

     昔から「情けは人の為ならず」という言葉もありますし、利他=利己とも

     言えるのではないかと思います。

 

p179

 

もし、人間がほんとうに目の前のことしか見ることのできない生き物であるのならば、

ごく近い将来、滅びてしまうことになります。 おそらく地球はこの人類という、たった

一種類のがんのような生物種を淘汰しようとするでしょう。

 

==>> これには賛成します。

     今のパンデミックや温暖化はその兆しかもしれません。

     地球自身が免疫機能を作動させているのかも・・・・

 

 

p183

 

ダライ・ラマ法王はまた、「空」を「相互依存」と表現し、仏教はこの相互依存を掲げる

唯一の宗教であると説かれています。 自然を含めたすべての現象は相互依存で起こって

おり、それを仏教では「縁起」ともいいます。

 

・・・法王はこうした前提のもとで、仏教の考え方は、現代科学の基本概念と一致する

説かれます。

 

==>> このような考え方は、日本の科学者の中では、ある一定の評価がされて

     いるようにもみえます。

     一神教のもとで科学は進歩してきましたが、最先端の科学は仏教の「空」の

     考え方に馴染むという認識があるようです。

 

 

==>> この後の章では、「日本人が果たす役割」など、日本人的にはちょっと

     手前味噌みたいな話が続くのでスキップします。

 

 

p226

 

およそ40年以上前に科学技術先進国のアメリカで始まりました。

「ニューエイジサイエンス」とよばれた一連の知のうねりがそれです。

1970年代後半に始まったこの動きは、物質と精神を区別して考える、要素還元論的な

古典的ニュートン科学に対して、物質と精神(意識)の相互作用を認めるものです。

量子力学や宇宙論、トランスパーソナル心理学などはその代表的な分野といえます。

 

==>> この「ニューエイジサイエンス」という言葉をググってみると、

     どうも「ニューサイエンス」というものと同じものであるようです。

     「コトバンク」にはニューサイエンスについて以下のような説明がありました。

 

     「ニュー‐サイエンス(new science

     1970年代に米国の自然科学分野で起こった反近代主義運動の一。西欧科学の

根幹である物質主義・要素還元主義の克服を目指した。米国では本来ニュー

エージサイエンスと呼ばれたが、日本でニューサイエンスと呼ばれるように

なってから、米国でもこの言葉が使われている。」

 

・・・で、そのニューサイエンスですが、過去に読んだ本の中にこのような

記述がありました。

 

「伊勢田哲治著「疑似科学と科学の哲学」」

     http://baguio.cocolog-nifty.com/nihongo/2021/02/post-d4b556.html

     「p87 

占星術の諸原理はより大きな理論に吸収されることもなく、「箱の外」にあり

続けてきた。 この一点だけをとっても、蓄積的進歩の考え方からいえば、

あれは科学ではない、と言い切れるだろう。・・・最近でてきたさまざまな

疑似科学も、直線的な発展の系列からそれてしまっている時点でアウトだろう。

p88

最近あまりニューサイエンスという言葉を聞かなくなったところをみると、

この「パラダイム」は科学革命につながることなく一時の流行として消えて

いったようであるが、いわゆる「とんでも科学」が新しいパラダイムを自称

する例は枚挙に暇がない。」

 

・・・と言うことで、「とんでも科学」とバッサリ切られています。

 

 

p229

 

私はむしろこれからは、いままで分からなかった、見えなかったスピリチュアルの

分野が、科学の進歩によって明らかになっていくのではないかと思います。

スピリチュアルは科学である、という時代に向かっていくでしょう。 そして

サスティナブルな世界もまた、科学によって実現していくものだと思います。

 

p230

 

合理を超えるものとは、非合理なもののことではなく、現在の常識や科学の力では

いまだに解明されていないもので、“超合理”とも呼べるものです。

 

p235

 

この「つつしむ」こそが、今般の「コロナ」が暗示するメッセージであり、度重なる

異常気象や大災害はもちろん、新たに危惧される地球の危機状況から、私たち人類が

読み取るべき重要な教訓なのではないでしょうか。

 

==>> やっと、読み終わりました。

     私が最初に書いたように、この本はまったく「残念な」本でした。

     この「「つつしむ」こそが、「コロナ」が暗示するメッセージ」というのが

     「コロナの暗号」だったのかと今わかってがっかりしています。

 

この本のp056に下のような記述がありました:

 

「むしろ世界的に若い世代の人たち、たとえば国連でスピーチをしたグレタ・トゥーンベリ

さんのような人たちが、グローバルな視点で地球のことや環境のことを考えて行動し、

発信する姿に希望を感じます。」

 

という記述です。

村上氏がグレタさんに期待するのは私も同じく期待していますので、その点では同じ

気持ちですが、グレタさんが「私の声ではなく、科学に耳を傾けてほしい」というのは

スピリチュアルな科学ではなく、目の前にある科学であろうと思います。

https://www.bs-asahi.co.jp/sdgs/post-7683/

 

そして、グレタさんが言うように、グレタさんに期待するのではなく、世界の科学者と

政治家に期待するのが筋というものだろうとも思います。

単なる思想的潮流をグレタさんが期待しているのではなく、何もしない我々大人に対して

怒っているわけですから。

速く、さっさと、後始末をしてくれと・・・・

 

 

=== 完 ===

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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