吉田敦彦編「世界の神話101」を読む ―3- インド・イランの神話、仏陀はヴィシュヌ神の化身、ゾロアスター教が最古の宗教なのか?
吉田敦彦編「世界の神話101」を読む ―3- インド・イランの神話、仏陀はヴィシュヌ神の化身、ゾロアスター教が最古の宗教なのか?
p141
インド・イラン
ヴェーダの神話
インドのカースト制の基本はバラモン(司祭)、クシャトリア(王侯・武士)、ヴァイシャ
(庶民)、シュードラ(隷属民)の四種姓である。
こうした区分は古代インドにさかのぼるらしく、最古の宗教はバラモンが独占していた
ので、バラモン教と呼ばれる。
このバラモン教の聖典はヴェーダ(「知識」の意)と呼ばれたので、バラモン教は
ヴェーダ宗教とも称される。数多いヴェーダの中でも最古の文献が「リグ・ヴェーダ」で
あり、紀元前1200年から1000年の間に成立したと考えられている。
インドラの名称はイランのゾロアスター教の悪魔にもみられるので、その起源はインド・
イラン期にさかのぼる。
・・・さらに・・・北欧神話の英雄神トールと酷似しており、おそらくインド・ヨーロッパ
語族に共通の英雄神話に由来すると思われる・・・・
==>> この章が「インド・イラン」となっていることを、なぜだろうと疑問に
思っていたのですが、上記のような歴史的な流れがあったようです。
バラモン教がインドへのアーリア人の侵入によってもたらされたことは
知っていましたが、こちらの地図をみると確かにイランから入って
きたんですね。
インド・アーリア人の侵入
https://rekisi.info/a-ria.html
「BC(紀元前)1500年頃からは、このインドの地にアーリア人が侵入して
くることになります。」
そこで、アーリア人を確認しておきます。
https://kotobank.jp/word/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%82%A2%E4%BA%BA-27940
「インド=ヨーロッパ語系諸族と同義に用いられることもあるが,正確には,
インド=ヨーロッパ語系諸族の一派でインドとイランに定住した民族。」
「中央アジアの高原地帯で遊牧生活を送っていたが,前2000年ごろから南下し,
インダス川上流にはいった。このインド−アーリアンに対して,遅れて西方に
移動し,イラン高原に定着したのがイラン人である。」
・・・これを見ると、イランからインドに侵入したのがアーリア人で、
その後イランに入ったのが今のイラン人ということになりそうです。
それにしても、北欧神話との繋がりまでありそうな話は、どう解釈すれば
いいのでしょうか。
p142
ヒンドゥー教の神話
ヴィシュヌ神はラクシュミーを妻とし、霊鳥ガルダを乗り物としている。
彼は世界を救うためにさまざまに化身する。 次の十の化身が最も有名である。
1. マツヤ(魚)・・・2.クールマ(亀)・・・・3.ヴァラーハ(野猪)・・・
4.ヌリシンハ(人獅子)・・・5.ヴァアーマナ(小人)・・・
6.バラシュラーマ(斧を持つラーマ)・・・7.ラーマ、叙事詩「ラーマーヤナ」
の主人公・・・8.クリシュナ・・・9.ブッダ(仏陀)・・・10。カルキ
==>> 仏陀の名前がここに出てくるとは驚きました。
ブッダはヒンドゥー教では神々の中のひとつだとは聞いていましたが、
ヴィシュヌ神の「化身」としてのブッダなんですね。
まるで、日本の密教で、お釈迦さんは大日如来の化身だとされている
のと似た構図になっていますね。
p143
ヒンドゥー教では世界は創造、持続、破壊を繰り返すと考えられ、創造を司る
のはブラフマー、維持するのはヴィシュヌ、そして世界期(ユガ)の最後に
世界を破壊するのはシヴァとされる。
・・・しかし破壊は再生につながる。 シヴァの生殖・生産の側面はリンガ
(男性器)の形で崇拝される。
==>> このあたりの話は、こちらの本で詳しく読みましたので、
復習してみます。
定方晟著「インド宇宙誌 ― 宇宙の形状、宇宙の発生」
https://sasetamotsubaguio.blogspot.com/2021/12/blog-post_6.html
「p72
ヒンドゥー教の聖典「ヴィシュヌ・プラーナ」によると、宇宙に巨大な卵の殻が
浮かんでいる。 この卵の殻は「ブラフマー神の卵の殻」と呼ばれ、そのなかが
ブラフマー神の創造の場であり、そこにわれわれの生活する大地や、日月星辰の
運行する天界や、聖仙たちの修行する聖界が存在する。
・・・卵を「地」とすると、・・・「地」「水」「火」「風」「エーテル(空)」「元素
の初源」「「大なるもの」の七つの層が形成されることになる。
・・・最後の「大なるもの」は「根本原因」あるいは「根本原資」と呼ばれる原
理によってとり囲まれている。
・・・「根本原資」のなかには「精神」が宿っている。・・しかも、「根本原資」
と「精神」は万物の支持者ヴィシュヌ神に支持されている。」
「p139
ブラフマー神の創造は続く。 かれの腿から阿修羅が生まれ、かれの口から神が
生まれ、かれの頭から髪の毛がおちて蛇になった。 昼や夜や暁といった天然
現象や、飢餓、韻律、ヴェーダ聖典といった抽象的なもの、文化的なものもかれ
らのからだから生まれた。そして、あの有名な四階級の起源もブラフマー神の
からだに結び付けて説明される。」
・・・そして、こちらでは阿弥陀仏も出てきていました・・・・
「p160
このエピソードには称名と救済のテーマが示されているが、これは仏教の称名
念仏を想起させる。 仏教ではヴィシュヌの代わりをするのはアミダ仏である。
仏教の浄土思想に対するヴィシュヌ教の影響が学者によって論ぜられているが、
それは決して不当ではない。 ちなみに、「ヴィシュヌ・プラーナ」には神々の
名としてアミターバ(無量光)が見出される。 」
「p173
・・・バラモン教の聖典が「ヴェーダ」だとすれば、ヒンドゥー教の聖典は
「プラーナ」である・・・・
「プラーナ」とは「古い物語」を意味し、「古潭」と訳される。
一種の疑似歴史書で、わが国の「古事記」のごときものといえよう。神代の宇宙
創造から、歴史時代の王統史までたどられる。」
・・・つまり、 バラモン教は聖職者バラモンの宗教であって、ヒンドゥー教
は庶民の宗教になり、その聖典である「プラーナ」は、日本神話の「古事記」
に相当するということのようです。
p146
「ラーマーヤナ」 叙事詩の神話2
・・・・コーサラ国はガンジス河中流に位置する。
天上世界の神々は、ラークシャサと呼ばれる悪魔の一団(仏典は羅利と音写)の王で
あるラーヴァナの乱暴に悩んでいた。 そこで神々は、ヴィシュヌ神が人間世界に
生まれ、ラーヴァナを殺すように求めた。 ラーマこそヴィシュヌ神の化身であった。
==>> 上記で仏陀がヴィシュヌ神の化身と書いてあったのは、このケースと
同じく、人間世界に生まれた化身という位置づけのようですね。
しかし、なんでまた、天上の神々がラーヴァナの乱暴に悩んでいるという
のに、人間世界にヴィシュヌ神の化身を送り込まなきゃいけなかったんで
しょうかねえ。 悪魔の一団は人間世界で暴れていたのか??
p147
「ラーマーヤナ」は「ラーマ王行状記」の意味で、「マハーパーラタ」と並ぶ古代
インドの大叙事詩である。
ラーマ王の伝説が集成されたのは紀元前の数世紀であるが、・・・現存のかたちに
なったのは紀元後二世紀頃と推測されている。
翻訳されてインドばかりでなく東南アジアにも広まり、インドネシアのワヤン(影絵
芝居)など芸能にも影響を与えた。
中国や日本にも「六度集経」などの漢訳仏典中の説話として伝わった。
日本では平安時代末、平康頼の「宝物集」に紹介されている。
==>> 「宝物集」で検索しても、そこにラーマーヤナの話が載っているとの
記述はありませんでしたが、こちらに興味深い記事がありました。
1042)『宝物集』ラーマーヤナ説話の出典について
https://ameblo.jp/konjaku-aaa/entry-12654332784.html
「なお、『六度集経』の所伝はわが国において平康頼の『宝物集』巻五に見られ
るが『六波羅蜜経』に記されている旨が述べられている。現存の『六波羅蜜経』
には『ラーマーヤナ』について記事は見られず、おそらく『宝物集』の記事は
『六度集経』の誤りと思われる。」」
『六度集経』にどのような形でこの「ラーマーヤナ」が仏教説話となって
いるのかはわかりませんが、もしかしたら、こちらの目次の中に
あるのでしょうか・・・・
https://honto.jp/netstore/pd-contents_0630991200.html
買うには高すぎ、地元の図書館にも在庫なしなので・・・・無理です。
p148
ゾロアスター教神話
善神アフラ・マズダーは・・・悪神アングラ・マインユに対して、光と闇の戦闘に
三千年ずつの3つの期間を設けることを提案し、アングラ・マインユもこれに同意
して闇の世界にもどった。
この提案がなされたとき、宇宙の開闢から3千年が経過していた。 つまり世界の
始まりから終末、そして最後の審判、復活までは、3千年の期間が4期で都合
1万2千年になる。
==>> こちらの解説ではこのように書いてあります。
https://kotobank.jp/word/%E3%82%BE%E3%83%AD%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E6%95%99-90525
「成立年代、場所に関しては諸説あるが、聖典の言語、内容、形式の分析による
と、紀元前1200年ころ、東北イランに定着するようになったインド・イラン語
族の間に広められたと考えられる。」
・・・そして、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教などの世界宗教に
大きな影響を与えた、いわば元祖宗教なのではないかということもかかれて
いるようです。
一方で、こちらのサイトでは、ユダヤ教が世界最古の宗教であると書かれて
います。「最古級」というところが微妙ですが・・・
https://kotobank.jp/word/%E3%83%A6%E3%83%80%E3%83%A4%E6%95%99-145181
「古代イスラエルに発祥し,唯一至高の神ヤハウェを奉じる世界最古級の宗教。」
こちらでは、はっきりとゾロアスター教の方が最古だと主張しています。
世界最古の宗教「ゾロアスター教」がその後の宗教に残した影響
https://diamond.jp/articles/-/269541?page=3
「BC1000年(プラスマイナス300年)頃、古代のペルシャ、現代のイラン高原
の北東部に、ザラスシュトラという宗教家が生まれました。ザラスシュトラの
英語読みがゾロアスターです。」
「セム的一神教は「アブラハムの宗教」とも呼ばれます。
セム的一神教は、天地創造や最後の審判も、天国も、地獄も、洗礼の儀式も、
すべてゾロアスター教から学んだのです。」
・・・・ということで、一応ここでは、ゾロアスター教(拝火教)が
ユダヤ教よりも古いということにしておきましょう。
ただし、こちらの年表を見ると、問題がありそうですね。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%97%E6%95%99%E3%81%AE%E5%B9%B4%E8%A1%A8
「前2494-2345 ピラミッド文書は知られているうちでは世界でもっとも古い
宗教的記述である。」
なにをもって、特定の宗教の成立とするか・・・ですね。
それはともかく、1万2千年サイクルって、短くないですかね?
こちらのサイトを見ると、ホモ・サピエンス(現生人類)がもう既に
20万年ってことになっていますし、ネアンデルタール人だと35万年まえ
からってなっていますからねえ。
その間に創造と復活までのサイクルが何サイクルになりますかねえ。
その点、仏教なんかの時間間隔はとんでもなく永いのですが・・・・
p148
最初の動物は月のように白く輝く牛だった。
そして最後に・・・・人間が創造された。 人間は太陽のように輝き、何も食べず、
動かず、老いや衰えを知らなかった。
p149
そしてゾロアスターが生まれて、第四の3千年期となる。 ゾロアスターの死後、
千年ごとに救世主が出現する。 最後の救世主は処女懐胎によって生まれる。
病気と死は終わりを告げ、死者は復活し、最後の審判を受ける。
善のために戦った者は天国に行き、悪を行ったものは地獄に落ちる。
==>> この前半の部分は、なんだかインドの宗教で牛が神聖なものとされること
を示唆しているように見えます。
後半の部分は、ひとつひとつがキリスト教的な感じに見えますね。
p149
ゾロアスターの言葉や思想をまとめた聖典は「アヴェスター」と呼ばれ、イラン語派
最古の文献である。 その中でもゾロアスター自身の言葉とされる部分が「ガーサー」
である。 インド語派最古の文献「ヴェーダ」と「アヴェスター」を比較すると、
両者の類似は著しい。
インド・イラン語派の人々はアーリア(高貴な者)と自称していたが、イランの国名も
これに由来している。
==>> ゾロアスター教はインドのバラモン教・ヴェーダにもかなり影響を与えて
いたということですね。
ってことになると、ヒンドゥー教は仏教にも影響があるわけですね。
そして、同時にユダヤ教、キリスト教、イスラム教にも影響があった??
もう、ぐちゃぐちゃです。
一方は一神教、他方は多神教みたいなもんですからねえ。
どう考えたらいいんでしょうか。
日本仏教で敢えて言えば、浄土真宗は阿弥陀一神教で、キリスト教に近い
と言われることはあるようですが・・・・
p150
イランの英雄神話
彼の治世は「ジャムの千年紀」と呼ばれ、適度な風が吹き、いかなる病気もなく、
人びとは不老不死だった。 そして繁栄の結果として生物の数が増えすぎて、
住む場所が足りなくなった。
その度に王は神の助力によって大地を広げた。 また神は王に、すべての生物を
滅ぼす大洪水が来ると警告した。そこで王はワラという巨大な洞穴を作り、すべての
種を保存し、大洪水の後に再び生物が繁殖するようにさせた。
・・・ザ―ハックは千年在位するが・・・・ファリードゥーンは・・五百年統治した。
・・マニューチェフルが成長し、・・・百二十年統治する。
==>> 日本神話の天皇たちはせいぜい百年ちょっとの在位で、いろいろと
疑問の声が出ていますが、イランでは100年なんてめじゃないですね。
おまけに、不老不死で数が増えすぎて、大地を増やしたり、大洪水で
意図的に減らしたり・・・・
戦争については記述がないですけど、戦争も数を減らす計画の中に入って
いるんですかねえ。人類は戦争が好きみたいだから・・・
p151
やがてルーダーベ姫は妊娠するが、子供は大き過ぎて、ルーベーダは出産時に息絶え
そうになる。 そこでザールが育ての親である霊鳥スィームルグの助けを借りて、
帝王切開によって母子ともに無事にロスタムが生まれた。
ロスタムは十人の乳母が乳を与え、五人前の離乳食を与えねばならないほど大食漢
だった。
==>> なんと、こんな神話の時代に、「帝王切開」???
真面目に翻訳しているんですかねえ。 その当時の医学はどんなことを
やっていたのか、興味がわいてしまいますね。
もしかして、桃から生まれた桃太郎の発想は帝王切開なんでしょうか?
p151
フィルドゥスィーの時代のイランはすでに唯一神アッラーを信じるイスラム教国で
あったが、「王書」の基本思想はむしろゾロアスター教的で、善と悪との二元論的
な戦いが基本構造である。
==>> 新しい思想や宗教が入ってきたにしても、神話的なものというのは
かなり伝統的なものが残されるということのようです。
おそらく、日本の場合も、神話は弥生的というよりも縄文的なのかも
しれません。
p152
スキタイ神話
スキタイ人の神話によれば、彼らは自分たちを世界中でもっとも歴史の新しい民族である
と考えていたらしい。 当時無人であったその地に最初に生まれたのは、ゼウスとポリュテ
ネス河の娘との子タルギタオスであった。
==>> これは珍しいですね。
普通ならば、うちの国が一番古い歴史を持つ立派な国なんだと歴史をつくり
たがりそうなものですが。 謙虚な人たちなんでしょうか。
p153
そして末っ子のスキュテスが試練を果たしたので、国に留まった。 スキタイの代々の
王はこのヘラクレスの子スキュテスの後裔であり、また盃の故事にちなんで、今もなお
帯に盃を着けているという。
イラン系の遊牧民族としてはスキタイ人、・・・アラン人などが知られている。このうち
最も有名であるスキタイ人は、紀元前8~7世紀に黒海、アゾフ海周辺の地域に姿を現わし、
馬上で弓を用いる攻撃法によって南ロシア黒海北方の肥沃なステップ地域に支配権を確立
した。
==>> 黒海北方の肥沃なステップ地域ということは、まさに今ニュースを独占して
しまっているウクライナの辺りではないですか。
ウクライナの歴史をチェックしてみますと・・・
「イラン系の遊牧騎馬民族が中央アジアから進出し、カスピ海東岸・黒海東北岸
のキンメリア人を追いやったのは紀元前750年から紀元前700年ごろのことで
ある。」
「かつてスキタイ人がウクライナの地を支配していたのは事実であるが、後世の
ロシア(ソ連)やウクライナの歴史においては異質な存在とされており、ウクラ
イナにおける「自分たちの歴史」としてみなしていない面もある。」
「スキタイ人は肥沃な大地から産出される小麦を元にギリシアとの交易により
栄華を極めたが、紀元前4世紀ごろより進出してきたイラン系の民族である
サルマタイ人によりドニエプル川流域を追われ、紀元前2世紀ごろにはクリミ
ア半島へと移動を余儀なくされた。」
このウクライナの歴史をみると、スキタイはその後はクリミア半島に追いやら
れたとありますから、それが今のクリミア半島の政治状況にどんな影響を
与えているのかが気になります。
いずれにせよ、ギリシアとの交易により栄華を極めたとありますから、
その関係で、ギリシア神話最大の英雄であるヘラクレスに権威を求めた神話に
なっているということでしょうか。
p153
スキタイの神話においても、社会が祭司、戦士、生産者という三つの階層から成り立つ
というインド・イラン語族的そしてされにはインド・ヨーロッパ語族的な三区分世界観
が認められる。
==>> なるほど、そういう世界観がインドのカースト制度の元にもなっている
わけですね。
イランの国内ではどうなっているのでしょうか。
イスラム教では身分制度・階級制度がどうなっているのか検索してみたの
ですが、そのものズバリを記述したものは見つかりませんでした。
その中で、wikipediaには以下のような「信徒間の平等」というものが
書かれています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%A0%E6%95%99
「イスラム教の聖典『クルアーン』(コーラン)には信徒間の平等が記されてい
るとする意見があるが、少なくとも『クルアーン』には、「アッラーはもともと
男と(女)の間には優劣をお付けになったのだし、金は男が出すのだから、この
点で男の方が上に立つべきもの。だから、貞淑な女はひたすら従順に」と、男女
不平等を明記する記述もある。イスラーム社会では、他の宗教にみられるような
聖職者・僧侶階級をもたない。宗教上の指導者を有するのみである。」
・・・一応平等主義ということで、カーストのようなはっきりした身分制度
はなさそうですが、男女差別については議論が多々あるようです。
p154
オセット神話
やがてゼラセは死んで墓に葬られるが、彼女に恋していた悪精霊ワステュルジはゼラセを
死姦する そして死体からサナタが生まれた。 ・・・彼女は・・・たぐいまれな美女と
なる。 ・・・タブーである近親結婚によって兄の妻となる。
ある時サタナが河で洗濯をしていると、向こう岸にいた羊飼いがサタナの太股を見て
欲情して、自慰をして精液を漏らし、それが石にかかって石の中に胎児が生じた。
・・・ソスランと名付けられて彼女の子として育てられた。彼の身体は鋼鉄でできていて、
不死身だった。
==>> この神話は、日本神話に負けず劣らずエログロですねえ。
神話が作られた時代の人々はいずれもこのように自由な発想だったんでしょう
かねえ。それとも、タブーはタブーとして認識していたから意図的に作った
のか・・・・
p155
ロシアのコーカサス(カフカズ)地方に住むオセット人は、スキタイ系のアラン人の
後裔で、「ナルト叙事詩」を伝承している。 ここにもインド・ヨーロッパ、スキタイ
から伝承される神話系を認めることができる。
==>> ナルト叙事詩については、こちらで。
https://kotobank.jp/word/%E3%83%8A%E3%83%AB%E3%83%88%E5%8F%99%E4%BA%8B%E8%A9%A9-1192109
「ナルト族諸家の起源と武勲が主題で,海人族と精霊との間に生まれた美女
シャタナ(サタナ)とその息子ソスラン(ソスルコ)を中心に物語が展開する。」
こちらのサイトでは、やはりギリシア神話との類似性が書かれています。
「物語の中心となるナルトと呼ばれる民族は巨人族で、その中でも半神的な
英雄なんかが出てきて活躍したりします。またナルト神話は多くの点で
ギリシャ神話との類似点がみられます」
さて、これでインド・イランの神話を読みおわりました。
ここまででどうしても感じるのは、ユーラシア大陸という地続きの国々での
神話の類似性ということです。
もちろん、伝承が口から口へと広がっていったということもあるのでしょうが、
もしかしたら人類という種が根本的に持っているなにかが、似たようなことを発想すると
いうことなのかもしれないなと思ってしまいます。
では、いよいよ、日本の神話にもっとも多くの影響を与えたであろう、中国や韓半島の
神話を読んでいきましょう。
===== 次回その4 に続きます =====
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