ブライアン・グリーン著「時間の終わりまで」を読む ―2― 宇宙のすべては朽ちて行く、 熱力学第二法則とエントロピー、 赤ちゃんの周りには無秩序が

ブライアン・グリーン著「時間の終わりまで」を読む ―2― 宇宙のすべては朽ちて行く、 熱力学第二法則とエントロピー、 赤ちゃんの周りには無秩序が

 


 

 

「第2章 時間を語る言葉、 過去、未来、そして変化」に入ります。

 

 

p045

 

ラッセルはこう述べた。「科学的な根拠にもとづくかぎり、宇宙はなだらかな段階を這うよ

うに進み、ここ地球上ではいくぶんみじめな結果になったが、さらにみじめな段階を這う

ように進み、宇宙の死とも言うべきものに向かっている。」

 

「もしもこれが、宇宙は目的をもって作られたことを示す証拠なら、そんな目的はまったく

魅力がないと言わざるをえない。 それゆえ私は、いかなる神であれ、信じる理由がわから

ないのだ」。

 

彼らの研究は徐々にひとつの法則へとつながっていった、今では知らない人とてない、かの

有名な<<熱力学第二法則>>だ。

思いきって嚙み砕いて言うと、熱力学第二法則は、廃熱が出るのは避けられないと断言

している。 

 

p046

 

この法則は(ここでもまた思いきって噛み砕いて言うと)、宇宙に存在するものすべては、

衰え、劣化し、朽ちるという、抗しがたい傾向を持つと述べているのである。

 

==>> さて、「今では知らない人とてない」と書いてあるんですが、私は知りません

     でした。 なので、ここで熱力学第二法則って何?をチェックしてみます。

 

     熱力学第二法則とは?高校物理をわかりやすく解説

     https://juken-mikata.net/how-to/physics/second-law-of-thermodynamics.html

     「熱力学第二法則は、端的にお伝えしますとエネルギーの移動の方向と、エネル

ギーの質に関する法則だと考えてください。」

「熱いものから冷たいものへ熱は自然に動いていきますが、その逆は何らかの

仕事をしなければ起こらないというものです。」

「ある熱源から熱を取りだしたとしても、それをすべて仕事に変えられない」

「エネルギーの移動は高い方から低い方へと自然に起こるけれどその逆は起こ

らず、熱をすべて仕事に変換できないということです。」

 

エントロピーとは、日本語にすると乱雑さ、無秩序、不確定性といったような

意味になります。どの意味をとるのかは、取り扱う分野によっても異なってくる

のですが、一般的には乱雑さと覚えておくといいでしょう。

熱理学第二法則では、このエントロピーは断熱系において常に増大し続ける

ものである、と考えています。」

 

・・・昔の物理の授業では私は熱力学第二法則などは習いませんでした。

理系の進学コースならあったのかもしれませんが・・・

で、結局、ここで私にとって重要なのは、「エントロピー」という言葉です。

 

 

p053

 

物理法則が過去と未来を区別しないということは、ある特定の成り行きが物理法則に

よって許されるなら、時間を反転させた成り行きもまた許されるということを意味する

のである。

 

p054

 

映画の一部を逆向きに映写すると奇妙な感じがするのは、スクリーンに映し出される

光景が、われわれの経験するどんなものとも違うからだ。

 

==>> ほお、物理法則ってそういうものなんですか。まあ、いつでも法則は同じ

     ということではそうなんでしょうが、逆向きということも考えられるん

     ですね。私には、ちょっと発想が届きませんが・・・

 

 

p054

 

エントロピーは、基礎物理学の中でも混乱を招きやすい概念のひとつだ。 そのわかり

にくさのせいで、エントロピーの増大を「秩序から混沌へ」、あるいはもっとシンプルに

「状況の悪化」という意味で使いたがる文化的傾向に歯止めがかからない。

ごく普通の会話でなら、そんな使い方をするのもいいだろう。 

 

しかし、エントロピーは、われわれの旅のガイド役を務める科学的概念でもあり、

ラッセルの暗澹たる未来像の核心でもあるのだから、もう少し正確な意味を洗い出して

おこう。

 

==>> いやあ、この文章を読んで、私はホッとしました。

     今までいろんな本を読んできて、何度も「エントロピー」という言葉に

     出会い、その度に、インターネットでいろいろ調べもしたのですが、

     今一つ腑に落ちない言葉だったのです。

     混乱を招きやすい概念をもつ言葉だということが分かっただけでも、私に

     とっては安心材料になりました。

 

 

p061

 

分子というミクロなレベルでは、温度とはどういう意味なのだろうか?

その答えはよく知られている。 温度とは、分子集団の平均速度なのだ

物体は、構成要素である分子の平均速度が小さければ冷たく、大きければ温かい。

 

そのため、温度がどんな影響をエントロピーに及ぼすかを明らかにすることは、

分子の平均速度がどんな影響をエントロピーに及ぼすかを明らかにすることなのだ。

 

==>> おお~~!! 温度とは平均速度!!

     もうびっくりです。 そんな話過去70年間聞いたこともない。

     でも、なるほどそうなのか、という感じは分かるような気がします。

     なんか、あっちっちというほど熱いのは、速度が速い感じがするじゃない

     ですか・・・あははは

 

p063

 

以上の話をまとめると、分子が少ないか、温度が低いか、占めている体積がちいさければ、

エントロピーは低い。 分子が多いか、温度が高いか、占めている体積が大きければ、

エントロピーは高い。

 

・・・そのルールとは、「あなたが何かの状態に出くわしたら、その状態のエントロピーは

高いと思ったほうがいい」というものだ。

 

・・・一方、低エントロピーの状態に出くわしたら用注意だ。 低エントロピーの状態を

実現させる粒子配置は少ないので、その状態は、例外的で、まずらしく、注意深く作り

上げられた、特異的な状態だ

 

p064

 

エントロピーが低いということは、その秩序は、強力な組織力を持つ何者かによって

作られたことを示唆するのである。

 

==>> つまり、一般的には、低エントロピーから高エントロピーの方向へ移り変わる

     可能性が高いということですね。 それが無秩序へ向かう方向性だって話

     になっているようです。

     なので、エントロピーが低い秩序のあるものは、変なものみたいです。

 

 

p065

 

第二法則は保存則ではない。 それは成長の法則なのだ。 第二法則は、エントロピー

は時間とともに増大する圧倒的な傾向があると述べる。

 

p066

 

煎じ詰めれば、確率の問題だ。 

 

p067

 

パンが焼けるにつれて放出された分子は、はじめはオーブンの近くに集中しているが、

徐々に拡散していく。 その理由は、1セント硬貨の場合と同じく、香りの分子が

取りうる配置の数は、オーブンの近くに集中しているより、広い空間に拡散したほうが

大きいからだ。 そのため、分子たちがランダムに衝突したり揺すぶられたりする

うちに狭い場所に集中する確率より、外向きに拡散する確率のほうがずっと高い

 

こうして、オーブンの近くに集中していた低エントロピーの粒子配置は、家中に拡散

した高エントロピーの状態になっていく。

 

==>> 1セント硬貨の例が、この前に詳しく書かれているのですが、

     それは、100個の1セント硬貨の裏表を整列させていたものを、袋に

     入れて、何度か揺すった場合に、その裏表の状態がどれだけバラバラになって

     いくかという実験の話をしています。

     最初は裏表が決められて秩序のある状態から、次第にバラバラの無秩序に

     なっていくという例示になっています。

     そして、100個の硬貨のひとつひとつに連番を付けてみた場合の、

     100個の裏表の組み合わせがどういうことになるのかという話です。

 

 

p068

 

爆発前のダイナマイトのエネルギーは、「高品質」だという。

エネルギーがコンパクトにまとまっていて、利用しやすいからだ。 一方、ダイナマイトが

爆発した後のエネルギーは、「低品質」だという。 エネルギーが広く散らばってしまい、

非常に利用しにくくなるからだ。

 

そして、爆発したダイナマイトは第二法則に忠実に従って、秩序から無秩序へ

――低エントロピーから高エントロピーへとー移行するから、われわれは低エントロピー

を高品質のエネルギーと、高エントロピーを低品質のエネルギーと結びつけるのである。

 

==>> 高いと低いが入り繰っているので、ちょっと混乱しそうですが、

     低エントロピーのほうが中身がギュッと詰まっていて高品質という話の

     ようです。

     いずれにせよ、秩序から無秩序の方向へ流れていくということですね。

 

p071

 

あなたがこれまでの人生で日々経験してきた、エントロピーが増加するプロセスは

すべてーーガラスを割るといったありふれた出来事から、身体の老化のような深い

変化までーー逆転させることができるのだ。 エントロピーは減少してもかまわない。

ただし、そんな現象が起こる確率は、馬鹿馬鹿しいほど低いということだ。

 

・・・未来のエントロピーは今より大きくなる可能性が圧倒的に高いから、未来は

今とは違ったものになる可能性が圧倒的に高いということになる。

 

・・・過去と未来が違う理由を探究している人たちのなかには、それがわかったことで、

一件落着だと考える者もいる。

 

==>> これを大雑把に考えると、すべては滅びへ向かっているということに

     なりそうですね。それが過去と未来を分けている。

     ってことは、生命が生まれるということは、それに反逆しているってこと

     になりませんか。

     存在のすべてがエントロピーの増大に向かっている中で、生命は逆走して

     低エントロピーの秩序ある組織体を作っているということになりませんか。

 

p072

 

なぜわれわれは、惑星や恒星から、クジャクや人間まで、さまざまな秩序構造に満ちた

宇宙に生きているのだろうか?

 

・・・もしも今日の宇宙のエントロピーが最大エントロピーより低くなかったら、もしも

今日の物質が、予想される通り、最大エントロピーのありふれた配置になっていたら、

宇宙はこれから先もずっと同じだったろう。その場合、未来と過去は区別できない

 

==>> もしエントロピーが最大になってしまっていたら、それ以上は動けなく

     なるので、変化は起きず、過去も未来もなくなってしまうってことですね。

     だから、今というのは、最大エントロピー、無秩序の最大値になっては

     いけない。 生命や星々のように秩序を持ったものが生まれないことには

     過去も未来も、つまり時間も、無くなってしまうってことでしょうか。

 

 

p072

 

そしてその一昨日の状態は・・・と、エントロピーが小さくなる道を過去に向かって

さかのぼり、ついにはビッグバンに至る。 ビッグバンは高度に秩序立ったきわめて

エントロピーの高い出発点だったのであり、それが、今日の宇宙がエントロピー最大に

なっていない理由なのだ。

 

・・・当面、われわれが生き延びるためには、秩序が必要なのだと言っておこう。

生命維持に必要なさまざまな機能を支えている体内の分子レベルの組織から、高品質の

エネルギーを与えてくれる食料や、われわれが生きていくためになくてはならない道具類

や生息環境まで、われわれは秩序ある構造を必要としている

 

==>> ってことは、人類はただただ地球を食いつぶすだけでは生き延びられない。

     エントロピーの増大に逆らって、自分たちを生き延びさせるために、周りを

     含めて秩序あるものを生産しなくてはいけないってことになるのでしょうか。

 

 

p075

 

片手鍋の取っ手からあなたの手に流れ込んでいるのは、物質ではない。取っ手の分子は

取っ手に留まっているし、手の分子は手に留まっている。 流れるのは物質ではなく、・・

・・あなたの手へと伝わる分子の運動状態なのだ。

 

物質の特質――平均としての分子速度――は、取っ手から手に伝わる。

「熱は、温度の高いものから低いものへと流れる」と言うとき、われわれが言わんとして

いるのはそのことなのだ。

 

・・・取っ手を構成している分子の運動は遅くなり、分子の取りうる速度の範囲は狭まる

――そっくりに見える配置として可能なものの数が減少する。 したがって、鍋の取っ手の

エントロピーは減少する。 

なんと! エントロピーが減少する?

 

p076

 

この例からわかるシンプルだが非常に重要な事実は、熱力学第二法則の「エントロピーは

増大する」という金言は、閉じた物理系の全エントロピーについて述べられたもの

ということだ。

互いに相互作用する系はすべて、ひとつの閉じた系に含まれる。

 

・・・あなたの手のエントロピーの増大は、取っ手のエントロピーの減少よりも大きく、

全エントロピーはたしかに増大しているのである。

 

==>> つまり、相互作用している範囲では、一部でエントロピーが減少することも

     あるけど、全体をみればやっぱりエントロピーは増大し、滅びの方向へ

     向かっているってことのようです。

 

 

p081

 

エントロピック・ツーステップは、無秩序に向かって突き進む宇宙が、恒星や惑星や

人間のような秩序ある構造をいかにして生じさせるのか、いかにしてそれらの構造を

支えるのかという問いへの答えの核心に位置している。

 

p082

 

あなたの身体は日々、あなたが摂る食べ物と呼吸する空気を燃焼させることで、体内の

組織や外部の活動にエネルギーを与えている。考えるという行為ですらーーそれは

あなたの脳内で起こる分子の運動だーーそれとまったく同じエネルギー転換過程から

動力を得ている。 そしてあなたは、蒸気機関と同じく、過剰な廃熱を環境に排出して

エントロピーをリセットしなければ生き続けることはできない。

 

==>> ここで「エントロピック・ツーステップ」という言葉が出てきましたが、

     これは本の中にも説明がありますが、こちらのサイトではこのように

     説明があります。

     生命誕生の秘密を物理学者が解き明かす──カオスからの秩序

https://gendai.media/articles/-/90979#:~:text=%EF%BC%88%E7%B7%A8%E9%9B%86%E9%83%A8%E6%B3%A8%EF%BC%9A%E3%82%A8%E3%83%B3,%E3%81%8C%E5%A2%97%E5%A4%A7%E3%81%99%E3%82%8B%E7%8F%BE%E8%B1%A1%E3%80%82

     「エントロピック・ツーステップ: エントロピーは増大するという普遍的な

プロセスの中で、ある領域(系)ではエントロピーが減少し、別の領域(系)で

はエントロピーが増大する現象。それによって宇宙に秩序が生まれるが、足し

合わせると全体としてはエントロピーは増大し、普遍的法則を破らない。」

 

・・・このサイトは、たまたまですが、今読んでいる本を解説している

サイトでしたから、好都合でした。

 

「そんな秩序あるパターンは、「エネルギーを[環境に]散逸させる」ことから、

《散逸構造》と呼ばれている。環境のエントロピーまで含めた全エントロピーは

増加するが、系にたえずエネルギーを注入してやれば、エントロピック・ツー

ステップを継続させて秩序を生み、それを維持することができるのだ。」

 

「散逸適応は、ある種の分子の系に、立ち上がってエントロピック・ツーステッ

プを踊ろうと誘いかけるための普遍的なメカニズムになる可能性がある。そし

てそれは、生物が生きるためにやっていることなのだから(生物は、高品質の

エネルギーを取り込んで利用し、熱やその他の老廃物という形で、低品質の

エネルギーを環境に戻す)、おそらく散逸適応は、生命が発生するためには欠か

せないメカニズムだったのだろう。」

 

「そんな分子は、適応度がより高い分子集団を選択する分子ダーウィニズム

力によって、情報を貯蔵し、伝達する能力を獲得しただろう。われわれはすでに、

そのプロセスを想い描くことができる。」

 

・・・ということが書いてありますので、これがどうも生命の誕生に関わって

いるもののようです。おまけに、進化に関わることまでも、DNAに関わること

までも示唆しているようです。

 

 

 

「第3章 宇宙の始まりとエントロピー、 宇宙創造から構造形成へ」

 

 

p086

 

なぜ自然は、原子や分子から、恒星と銀河、さらには生命や心まで、これほど秩序

立った構造をこれほど容易に生じさせるのだろう?  

 

 

無秩序へ向かう道のりの途上、エントロピーが増大する成り行きの一環として、秩序

ポケットは生命の出現を促しもするのである。

 

 

斥力的重力は、まさにその名の通りの仕事をする。 引き寄せるのではなく、引き離す

のだ。 アインシュタインの方程式によると、恒星や惑星のような大きな塊は普通の

引力的重力を及ぼすが、重力が斥力的に働く風変りな状況があるのだ。

 

グースが気づいたのは、ある種の物質が空間を満たし(その物質を「宇宙の燃料」と

呼ぶことにしよう)、燃料のエネルギーが均一に広がっているなら(恒星や惑星の

ような塊になっていなければ)、その重力はたしかに斥力になるということだった。

 

==>> ここでは、ビッグバンとは何かという話になっているのですが、

     そのことが生命を誕生させることに関係のある現象であるようです。

     そこに引き離す重力である斥力というものが関与するらしい。

     どういうことになるんでしょうか。

     ビッグバンの前はエントロピーが低く秩序ある宇宙だったのが、この爆発に

     よってエントロピーが増大する方向に動き、その中で逆の動きをするように

     星や生命が生まれてきたという流れでしょうか。

 

 

p092

 

1940年代、インフレーション理論が作られるよりだいぶ前のこと、宇宙誕生のときの

熱は空間膨張のために微弱な光になって、今も宇宙を満たしているはずであることに

物理学者は気が付いた。

 

「宇宙創造の残照」(専門用語では「マイクロ波背景放射」)と名づけられた驚くべき

その宇宙の遺物は、1960年代に、ベル研究所のふたり・・・によって初めて検出

された。 ・・・もしあなたが1960年代に生きていたなら、あなたもまたその放射を

漏れ聞いたことがあったかもしれない。

 

かつて旧式のテレビで、夜の放送が終了した局にチャンネルを合わせると聞こえた

ザーッというノイズの一部は、このビッグバンの名残の電波によるものだったのだ。

 

==>> はい、1960年代、私は中学生ぐらいの時でしたから、そのテレビの

     ノイズはしっかり見ていました。

     そうですか、あれがビッグバンの名残だったんですか。

 

 

p094

 

量子の領域で実在がぼんやり見えるのは、不正確であることが明らかな古典的世界像

と比較してのことなのだ。 古典的世界像は、われわれ人間がはじめて見出した世界

の姿だが、それが最初の世界像になったのは、その世界像がシンプルだから、そして

われわれの五感で感じ取れる細かさでは驚くほど正確だからなのだ。

 

実際には、古典的な世界の見え方のほうこそ、真の世界のありようである量子的実在

の近似であり、それゆえ不完全な見え方なのである。

 

==>> つまり、人間の五感は画素数が少ないから、真の世界である量子的な

     細かさを捉えるには目が粗すぎて、近似値としてみるしかないってことの

     ようですね。 でも、その五感は生まれつきのものだから、それが一番

     正確に実在を捉えているように思いこまされてきたということですかね。

 

 

p098

 

140億年ほど前に起こったと考えられる出来事を数学的に記述できるということ、

そしてその記述から、強力な望遠鏡で今何が見えるかを予想して、観測でそれを確かめ

られるということは、驚くべき快挙なのだ。

 

われわれはすでに宇宙の歴史的発展について強力な洞察をえているのである。

 

p099

 

ここで私がやろうとしているのは、その洞察を使って、エントロピーが増大し続けてどん

どん無秩序になることを運命づけられた宇宙が、その道のりの途上で、いかにして豊かな

秩序を生み出すのかを明らかにすることだ。

 

ビッグバンの時点でのエントロピーは、今日よりずっと低かったはずだ。

 

==>> 140億年まえ、ビッグバンの前には超低いエントロピーの状態だった。

     それが爆発してどんどん無秩序へと宇宙は向かっている。

     そんな中で、どのように星や生命が生まれてきたのか・・・・

 

p101

 

インフレーションの膨張をスタートさせるためには、やはり到底起こりそうもない

驚くべき偶然が重なる必要があっただろう。 そんな、特別で、秩序が高く、エントロピー

の低い、領域全体で均一な配置が実現することに対して何の説明もないというのは、

物理学者にとってはひどく気持ちが悪いことなのだ。

 

p102

 

インフラトン場の値が均一な小領域が生じるという、統計的には到底起こりそうもない

ことがついに起こったとき、いっさいが変わる。 その時ビッグバンが炸裂し、空間は

膨張しはじめ、宇宙論的なショーが始まるのだ。

 

==>> またまた新しい言葉「インフラトン場」が出てきました。

     これをチェックしておきます。

     (urlが長すぎるので、「宇宙の始まりを見る! 背景放射で拓く宇宙創成の

物理」で検索してください。)

 

     「既知の物理法則では、この奇妙な現象を起こすことは不可能です。そのメカニ

ズムとしては様々な提案が存在しますが、最も有力なものは、インフラトンと

呼ばれる場のポテンシャルエネルギーが原因となっているとするものです。

このポテンシャルエネルギーは常に負の圧力を生み出します。この負の圧力が

斥力として働き、万有引力に打ち勝てばよいのです。」

インフレーションを引き起こすインフラトン場は、量子論に従うと、様々な

波長のゆらぎを伴っています。インフレーション宇宙モデルでは、このミクロの

ゆらぎが急速な加速膨張で短時間に引き延ばされ、現在の銀河やその集団の種

となったと考えます。この予言は、これらのゆらぎが生み出す宇宙マイクロ波

背景放射の温度非等方性の観測により確認されています。」

 

もっとシンプルな辞書的説明では、こう書いてあります。

https://www.wdic.org/w/SCI/%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%83%95%e3%83%a9%e3%83%88%e3%83%b3

「宇宙初期のインフレーションを引き起こしたとして仮定される、仮想的な

粒子がインフラトンである。ただし、インフラトンが何であるかについては、

何も分かっていない。」

「宇宙誕生直後のエネルギーの高い真空「偽の真空」から、エネルギーの低い

真空「真の真空」に相転移する際、インフラトンがその場のポテンシャルの壁を

トンネル効果によって通って出現したことで、インフレーションが起きたと

説明されている。

ある説では、インフラトンは「場のポテンシャルエネルギー」であり、負の圧力

を産み出すことで斥力となり、後に素粒子からなる高温高密度のプラズマに

変化した、としている。」

 

「インフラトンの分布は均一ではなく、「量子ゆらぎ」により濃淡が存在したが、

この濃淡の分布は偶然(確率的)に決まったと考えられている。

インフレーションは、このミクロ世界の濃淡を均一化する間を与えず一瞬で

引き伸ばしたため、現在みられるような宇宙規模での物質分布の濃淡を作った

と考えられている。」

 

・・・内容はさっぱり分かりませんが、インフラトン場と呼ばれるものが

負の圧力を生み出していたという仮説があるようです。

そこにゆらぎがあって爆発しちゃったってことでしょうか??

 

 

p104

 

そしてその密度の変化が、次に起こる出来事にとって決定的に重要になる ――

物質が寄り集まった、恒星や銀河などの構造形成である。 密度が周囲よりわずかに

高い領域は、わずかに強い重力を周囲に及ぼし、近くの粒子をより多く引き寄せる。

 

p108

 

地球上では電磁力ほど身近には感じられないが、宇宙で繰り返しえんじられるいくつか

の場面でエントロピーを増大に向かって駆動するのは、自然の力のうち電磁力以外の

ふたつ、重力と核力だ・・・・。

 

p110

 

無秩序に向かって邁進する宇宙の中で、重力はいかにして自然な秩序を作り上げるのか

が理解できるようになるだろう。

 

==>> エントロピーを増大に向かって動かすのは重力?

     そして、一方で、重力はいかにして秩序を作るのか?

     なんだか矛盾する言葉が並んでいるようですが、どうなっていくんでしょう。

     いずれにせよ、そういう中で星や生命が作られるらしい。

 

 

p112

 

コーヒーから空気に移行した熱がマグカップの温度を室温に近づけるのと同じく、

ガス雲の熱が深部から周辺部に流れるから、中心部の温度は下がって周辺部の温度は

上がり、中心部と周辺部の温度は近づきそうなものだ。だが、重力がこのショーの

監督を務めると、結論は逆転する。

 

熱が中心部から流れ出すにつれて、中心部の温度は上がり、周辺部は温度が下がるのだ。

これは驚くべきことだし、その重要性は注目に値する。

 

周辺部が中心部の熱を吸収するにつれ、増加したエネルギーはガス雲をさらに膨らませ

ようとする。 外に向かうガス分子は、内側に引っ張る重力に逆らって力を振り絞る

ため、スピードは落ちる。 その正味の効果として、拡大する周辺部の温度は、上がるの

ではなく下がることになる。 

 

中心に向かう分子は、内側に引っ張る重力と同じ向きに流れるため、落下するにつれて

加速されてスピードが上がる。そのため、収縮する中心部の温度は、下がるでではなく

上がることになる。

 

p113

 

圧縮されてどんどん温度が上がる中心部の場合、自然は新たな物理プロセスを開始する

ことで、そのサイクルに介入する。 それが<<核融合>>だ。

 

核融合は、原子の中心部にある原子核を融合させる反応である。 ・・・核融合は

莫大な量のエネルギーを生み出し、そのエネルギーは猛烈なスピードで運動する粒子

として現れる。

 

==>> コーヒーのマグカップの話から、普通には理解できない宇宙空間での

     熱の動きの話になり、ついに核融合の話になってきました。

     まあ、話としては、理屈的にはなんとか理解できても、なかなかピンと

     くるところまでは理解が及びません。

 

p114

 

かくして、中心部で起こった核融合が、ガス雲の収縮を食い止めるのである。

こうして、ガス雲の中心部に、安定的に持続する熱と光の湧き出し口が生じる。

恒星の誕生だ。

 

重力の働きによって恒星のような大きな塊が形成されることは、たしかに秩序を高める

動きなのだ。 一方、周辺部では、体積が増えることでエントロピーは増大し、温度が

下がることでエントロピーは減少する。

・・・実際に計算してみると、増大分のほうが減少分よりも大きいことがわかり、

ガス雲の周辺部では、正味のエントロピーは増大することがわかる。

 

p115

 

ガス雲の中心部は、重力の働きで収縮することによってエントロピーを減少させて熱を

放出する。 ・・・秩序ある小部分は、その秩序の増加を埋め合わせて余りあるぐらいに

無秩序が増大する環境中で生まれるのである。

 

==>> おお、やっと星が誕生しました。

     そして、「秩序ある小部分は・・・無秩序が増大する環境中で生まれる」

     と言うのは、人間の赤ちゃんが生まれる家庭内の場面を彷彿とさせますねえ。

     単なるアナロジーですが・・・・

 

p118

 

重力が触媒となり、核力が遂行するこのバージョンのエントロピック・ツーステップ

こそは、物質が宇宙のいたるところで踏んでいるステップだ。 ビッグバンの直後から、

宇宙のダンスは主にこれだった。 それにより膨大な数の恒星が生まれ、秩序だった

その天文学的構造から発せられる熱と光のおかげで、少なくともひとつの惑星に生命が

宿った。

 

==>> さてさて、これでやっと、星と生命の誕生の端緒の部分に辿り着いた

     ようです。 次の章以降で、その生命などの話が展開していくようです。

 

 

それでは、次回は「第4章 情報と生命力、 構造から生命へ」に入ります。

 

 

=== 次回その3 に続きます ===

 ブライアン・グリーン著「時間の終わりまで」を読む ―3― 生物は、負のエントロピーを食べて、エントロピーの増大に抵抗する、 星と生命の誕生、シュレディンガーとヒンズー教 (sasetamotsubaguio.blogspot.com)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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