ブライアン・グリーン著「時間の終わりまで」を読む ―3― 生物は、負のエントロピーを食べて、エントロピーの増大に抵抗する、 星と生命の誕生、シュレディンガーとヒンズー教
ブライアン・グリーン著「時間の終わりまで」を読む ―3― 生物は、負のエントロピーを食べて、エントロピーの増大に抵抗する、 星と生命の誕生、シュレディンガーとヒンズー教
「第4章 情報と生命力」に入ります。
p121
シュレーディンガーが自ら課した任務は、ある重要な問題に進展をもたらすことだった。
「生物の空間的境界内で起こる空間と時間の中の事象を、物理学と化学によって説明する
にはどうすればよいか?」
ウサギの体内で起こっているいったい何が、ウサギという粒子集団と、石という粒子集団
を、これほどまでに違うものにしているのだろうか?
p123
「生命とは何か」のエピローグには、意識について書かれたくだりがあり、シュレーディン
ガーはそこでヒンズー教のウパニシャド哲学に訴えて、われわれはみな「至る所に存在
する、いっさいを理解する永遠の自己」の一部なのであり、ひとりひとりの人間が行使
する意志の自由が、われわれに神のような力を与えているのだと述べて、一部の顰蹙
を買った。
==>> シュレーディンガーさんは、こちらのサイトで紹介されています。
「オーストリアの物理学者。波動力学の建設者であり、1933年ディラックと
ともに「新しい形式の原子理論の発見」によりノーベル物理学賞を受賞。」
「また生物物理学の考察から『生命とは何か』(1944)を著し、『科学とヒューマ
ニズム』(1952)、『自然とギリシア人』(1954)などの科学啓蒙(けいもう)書も
ある。」
「ド・ブロイの物質波の考えを発展させて1926年シュレーディンガーの波動
方程式を発表,波動力学の体系を展開してマトリックス力学とともに量子力学
発展の基礎を築いた。」
「シュレディンガーの猫」というのが非常に有名みたいなので、動画でその
意味を見ておきましょう。 量子力学における観測問題に関するものです。
https://www.youtube.com/watch?v=GJHj-_Cl_b8&t=531s
それにしても、れっきとした物理学者が、それもヨーロッパのキリスト教圏の
人が、よりによってヒンズー教のウパニシャド哲学を持ち出すとは、そりゃあ
顰蹙を買うでしょうね。
ちなみに、いままでいろいろ仏教関係の本を読み漁ってきた私としては、日本の
密教はほとんどヒンズー教みたいなものだという感覚があるし、その曼陀羅は
宇宙論的な響きもあるし、高野山の偉い坊さんが最先端物理学と密教は
類似するところがあるなんてことを言っていますから、おそらく当たらずとも
遠からずな感じはあるのでしょう。
p128
これまで発展させてきた熱力学という応用範囲の広い観点から、生命を見ていこう。
そうすることで、生物は、単に生物同士のあいだで類似性をもつだけでなく、恒星や蒸気
機関とさえ深い類似性を持つことがわかるだろう。生命は、物質に閉じ込められたエントロ
ピーを解放するために、宇宙が利用しているひとつの手段なのだ。
p131
複雑な原子の起源について初めて提案がなされたのは、1920年代のことだった。
イギリスの天文学者サー・アーサー・エディントン(「アインシュタインの一般相対性理論
を理解している三人のうちのひとりだそうですね?」と尋ねられて、「三人目は誰だろう」
と言ったことで有名)は、複雑な原子の起源について正しい考えを得ていた。
恒星の内部は高温だから、複雑な原子をゆっくりと料理するには、お誂え向きだろうと
いうのだ。
p132
たとえば、太陽質量の20倍の質量を持つ大きな恒星は、その一生のうち最初の800万年
間は、水素を融合させてヘリウムを作り、その後の100万年間は、ヘリウムを融合させて
炭素と酸素を作る。
==>> 生命とその大元である原子が生み出されるところにエントロピーが関係
しているらしいのですが、今のこの時点では、どういうカラクリなのか
理解できません。
p135
・・・さまざまな原子は、宇宙空間を漂い、やがて空間の中で渦を巻き、大きなガス雲
に成長し、長い時間をかけて寄り集まり、新たな恒星や惑星となり、最終的にはわれわれを
作り上げた。それが、あなたがこれまで出会ったものすべてを作り上げている材料の起源
である。
p139
地球の歴史に劇的な時期がなかったわけではない。 誕生から5000万年から1億年
ほど経った頃に、地球は、テイアという火星ほどのサイズの惑星に衝突されたらしい。
・・・その塵とガスの雲が重力によって集合し、月ができた。
==>> さて、原子のような材料ができ、地球や月が出来上がり、その地上に
生物が生まれる土俵ができてきました。
p143
その量子的観点を原子に当てはめたとき、あたかも惑星が太陽の周囲をめぐるように
電子が原子核の周囲をめぐるとする、古い「太陽系モデル」はお払い箱になった。
量子力学はその代わりに、原子核を取り巻くぼんやりした雲として原子を描き出す。
その雲の密度が、原子がそれぞれの場所に見いだされる確率を与える。
==>> おお、「太陽系モデル」はお払い箱になったんですか。知りませんでした。
今や「雲モデル」じゃないといけないわけですね。
こちらのサイトに「太陽系モデル」から「電子雲モデル」への変遷について
解説がありました。
学校で習った「原子核の周囲を電子がぐるぐるまわるモデル」はもう古い?
https://note.com/biore840/n/nc13265f81497
「量子力学においては、電子は特定の場所に存在しているわけではなく、あくま
でも電子が存在する可能性がある場所として示されます。これは電子雲と呼ば
れ、存在する可能性が高い場所ほど雲は暗く描かれます。」
「電子雲のモデルは原子モデルの中で最新のものとなります。そして世界中の
科学者が使っているのです。」
・・・学校の理系の先生たちは大変ですねえ。
世界で三人しか理解していないという相対性理論を教室で教えろと言われても
困っちゃいますよねえ。
私が理系の先生だったら、youtubeのurlを教えて終わりにしますけど・・・
p145
われわれは共有した電子を通して手を結び、電気的に中性の分子になる。 原子を結合
させることで電子の列を満たすというこのプロセスが、われわれが化学反応と呼んでいる
ものだ。 これらは、地球上や生物の体内、そして宇宙のいたるところで起こっている
化学反応の典型である。
==>> 化学反応というものが「共有した電子を通して手を結ぶ」ことだというのが
私にとってはちょっと驚きです。
従来の私の感覚としては、wikipediaでの説明を借りて言えば、
化学反応というのは「化学反応は・・・化学変化の事、もしくは化学変化が起こ
る過程の事をいう。化学変化とは1つ以上の化学物質が別の1つ以上の化学物
質へと変化する事で、反応前化学物質を構成する原子同士が結合されたり、逆に
結合が切断されたり、・・・・・広義には溶媒が溶質に溶ける変化や・・・
・・・液体が固体に変わる変化等も化学変化という。」
という感じであって、そこに電子が介在しているといういわば物理反応的な
ものを理解していなかったからです。
私が何を勘違いしていたかについては、こちらのサイトの説明を読んで
ああ、なるほどと思いました。
物理変化と化学変化、状態変化の違いとは?
「物理変化は簡潔に言えば、化学反応が発生しない変化のことです。化学反応と
は原子構造が変化する反応であるので、物理変化では原子構造、つまり原子の
組み合わせが変化しないことになります。」
私の勘違いの原因は、高校の化学の授業では、試験管やビーカーなどで液体を
使っていろんな実験をやった記憶が強く、原子核や電子については物理の授業
でやったことが頭にこびりついていたからのようです。
p147
物質を捕まえて運び去る水の力は、身の回りを清潔にするというレベルをはるかに超えて、
生命にとって不可欠だ。 細胞の内部は、ミニチュアの化学実験室のようになっていて、
さまざまな成分を迅速に移動させなければならないーーー栄養分を取り込み、老廃物を
排出し、細胞機能に必要な物質を作るために化学物質を混合するといった仕事をこなさ
なければならない。 それを可能にしているのが、水なのだ。
「水は、生命の物質にして母胎であり、生命の母にして培養液である。 水なくして
生命はない。 皮膚を作ることを覚えたとき、生命は海を離れることができた。・・・」
==>> 近年の宇宙探査計画の中で、生命がありそうな星などを探すのに一番重要な
要素としてはやはり水があるかないかだと言う事になっていますから、
科学的な一般常識としてはやはり水が生命の器なのでしょう。
物質から生命が誕生したことについては、こちらの動画にまとめてあります。
【生命の起源】物質からどうやって生命が誕生したのか?
https://www.youtube.com/watch?v=mtEPPsjVrW8
p148
われわれの細胞には、一見してヒトのものだとわかるようなーー他の生物のものではない
ことを示すようなーー何か重要な印が刻まれているのでは? ところが、そんな印は
ないのである。 ・・・・複雑な細胞生物はすべて、同じ単細胞の先祖から分かれた
末裔なのだ。 ・・・・出発点が同じだからなのである。
p149
細胞が生命維持機能に指令を与える情報をエンコードし、それを利用するために使って
いる方法が、すべての生物で同じなのである。
・・・・細胞が生命維持に必要な機能を作動させるためのエネルギーを利用し、
貯蔵し、配備する方法が、すべての生物で共通なのである。
p153
タンパク質を組み立てるためのその指示が、すべての生物で、まったく同じやり方で
コードされているのである。
==>> 上の動画にも説明があるように、すべての生物は元々は同じ単細胞から進化
した末裔だってことですね。
大雑把にいえば、ウイルスや細菌が進化したのが人類って話ですかね。
p158
エネルギー抽出のプロセスはほぼ同じだ。 主な違いは、電子の供給源である。
動物は、電子を植物から得ているのに対し、植物は、電子を水から得る。
緑色をした植物の葉っぱに含まれる葉緑素に日光が当たると、日光は水分子から電子を
もぎ取って、その電子にエネルギーを充填し、動物の場合と同様に酸化還元の階段に
放り込む。
「生命とは、一個の電子が、休息できる場所を探し求める行為にほかならない」
==>> 葉緑素・・・光合成・・・の話みたいなんですが、
私の高校時代までの知識では、それと電子がどう結びつくのか分かりません。
なので、こちらのyoutubeでお勉強します。
【高校生物 10】同化【C3植物の光合成】を宇宙一わかりやすく
https://www.youtube.com/watch?v=C8mGiEpACX0
ここで、<クロロフィルaについて>という説明の中にある「光が電子をはじき
とばす」というのが初めて学ぶ感じの内容です。
これは物理の光電効果に関係するらしい。
p164
科学者はまだ生命の起源を明らかにしていないが、・・・その問いは三つの部分から出来て
いることは明らかだろう。 遺伝的要素・・・代謝的要素・・・・自己充足的な袋――
細胞――はどのように生じたのか? ・・・・ダーウィン進化論――を頼りに進むことは
できる。
p166
ダーウィンがそうした細部を知らずに進化論を作り上げることができた・・・・
(変異をともなう遺伝と、生存競争)の普遍性と威力を物語っている。
・・・・DNAの構造が明らかになり、遺伝の分子的基礎へと続く道が見えたのは、
それから約100年後の1953年のことだった。
==>> 生命の起源はまだ研究中だけれども、ダーウィンの進化論を頼りに進めて
いけば、きっと解明できるはずだと著者は書いています。
p172
40億年ほど前に、生命の先ぶれとなる分子ダーウィニズムの段階をスタートさせた
かもしれない分子として、RNA(リボ核酸)に人々の注目をむけさせた。 RNAは
DNAのごく近い親戚だ。
RNAはあらゆる生命体にとってなくてはならない分子であり、ずば抜けた万能の働き手
である。
p173
しかし、RNAとDNAには、ひとつ重要な違いがある。 DNAが、細胞の神託を伝える
媒体、細胞の活動に指示を与える知恵の泉という立場に満足しているのに対し、RNAは
自ら進んで手を汚し、化学的な反応プロセスの手作業に従事していることだ。
実際、細胞のリボソームーーアミノ酸をつないでタンパク質を作るミニチュアの工場
――の中核を担っているのは、特定の種類のRNA(リボソームRNA)なのだ。「
このように、RNAはソフトウェアであると同時にハードウェアでもある。
==>> 話がいろいろと難しくなってきているので、ここでRNAについて
一番やさしく解説をしてあると見える動画で勉強しておきます。
【生物基礎】#7 RNAのはたらき
https://www.youtube.com/watch?v=OGGU92T3ORc
RNAについては、感染症のワクチンに初めて利用されたということで
mRNAが有名になりましたが、この動画を見ると、その働きの基本が
分かると思います。
確かに、上に書いてあるように、「RNAは手を汚して自ら仕事をしている」
ようです。
p174
1950年代には、・・・地球の初期の大気を構成していたと彼らが考えたいくつかの
ガス(水素、アンモニア、メタン、水蒸気)を混合し、それに雷が当たったらどうなるかを
シュミレートするために、混合ガスに電流を流すという実験を行い、その結果として
生じた茶色の泥に、タンパク質の構成要素であるアミノ酸が含まれていたと発表したのは
有名な話である。
==>> この辺りの「生命の合成」の歴史については、こちらの動画にありました。
【ゆっくり解説】生命創造への挑戦ー合成生物学
https://www.youtube.com/watch?v=2yIdHuS42c0
上記のスタンレー・ミラー氏の実験の話も出てきます。
少なくとも恐竜の復活は無理みたいですが・・・・
p181
生命は、これらふたつの影響力の両方に従っている。 生命は進化によって生まれ、改良
されてきた。 そしてあらゆる物理系がそうであるように、生命もまたエントロピーの
命じるところに従う。
物質が寄り集まって生命になると、その生命は長期にわたり秩序を保つ。そして生命が
生殖すれば、やはり秩序のある構造に配置された分子集団が新たに生じる。
==>> ここでは、生命というのは、進化とエントロピーのふたつの影響下にあること
を述べています。
そして、シュレディンガーの言葉を引いて、
「生物は、負のエントロピーを餌としてとり入れることで、エントロピーの
増大に抵抗していると述べた」としています。
それがどういうことなのか、その意味は今の時点では私には理解できません。
次回は「第5章 粒子と意識、 生命から心へ」を読んでいきます。
===== 次回その4 に続きます =====
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