渡辺正峰著「脳の意識、機械の意識」を読む ― 6(完) 自動運転車には意識がある? 記憶の転送はぜったい無理 

渡辺正峰著「脳の意識、機械の意識」を読む ― 6(完) 自動運転車には意識がある? 記憶の転送はぜったい無理     

 

 

渡辺正峰著「脳の意識、機械の意識」

なぜ人間は感じるのか? 「意識の問題」とは?

人工的に意識は作りだせるのか? ・・・・を読んでいます。

 

 


 

 

「終章  脳の意識と機械の意識」

 

p287

 

意識の機械への移植が、近い将来に実現する可能性などあるのだろうか

何を隠そう、グーグル社の技術開発部門を率いるレイ・カーツワイルは、21世紀半ば

までにはそれが現実化することを予言している。

 

p288       

 

仮に、チャーマーズのフェーディング・クオリアの論考が正しいならば、十分な精度で

脳を模した機械には、意識が宿ることになる。

この場合の要請は、人工ニューロンが物理的に存在し、同時並行的に相互作用することだ。

 

2014年の夏には、IBMの基礎研究所が百万ニューロン、二億シナプスの半導体

チップ、TrueNorth の開発に精巧し、サイエンス誌の表紙を飾った。

 

p290

 

筆者は、デジタル・フェーディング・クオリアが成立することに賭けている。 仮に、

これが成立すれば、ノイマン型コンピュータでシミュレーションされた神経回路網にも

意識は宿ることになる。

 

・・・原理的には、生体ニューロンにいくらでも近づけていくことが可能だ。

 

==>> この本は2017年が初版ですが、筆者はかなり強気にみているようです。

     今現在このような研究開発がどこまで進んでいるのか、非常に興味が湧いて

     きます。

 

p291

 

2017年、アメリカの国防高等研究計画局(DARPAは、ヒト用の侵襲のブレイン・

マシン・インターフェースとして、百万個のニューロンを同時に記録し、電気刺激する

計画を打ち立てた。 その具体的な手段として採択されたのは、食卓塩の一粒にも

満たない、極小のデバイスを脳に埋め込むものと、・・・・・

 

前者については、まったく新しい技術で、その全貌が明らかにされていない・・・

 

==>> なんと食卓塩の一粒にも満たないデバイスなんてのが本当にあるんだろうか。

     ほとんど陰謀論に出てくるようなシナリオですねえ。

 

 

p296

 

ちなみに、この再配線実験の目的は、左右の脳半球に宿る二つの意識が、半球間神経

連絡を通して一つに統合される仕組みを明らかにすることである。 そのためには、

意識が一つに統合されているか否かを、なんらかの方法で確かめなければならない。

 

==>> 既にご存知のとおり、右脳と左脳を繋いでいる脳梁を切断すると、

     右脳と左脳のそれぞれが全くの別人格として働き、左半身と右半身が

     それぞれ勝手な動きをすることは確認されています。

     その二つの人格がどのように統合されるのか、その仕組みをみていくと

     いうことのようです。

 

     考えてみると、人の頭には、いろいろと主張をする奴と、それに突っ込みを

     入れるもう一人がいるように思えますね。

 

p298

 

実際には、感覚意識体験が伴わない場合、課題の達成率が極端に落ちることが、サルを

用いた盲視の研究などから明らかになっている。 また、眼球運動その他から、感覚意識

体験の有無を見分ける研究も進んでいる。

 

==>> ここでは、分離脳の再配線実験などで、意識の自然則の検証を行なおう

     としているのですが、感覚意識体験(クオリア)抜きで、 盲視のように

     課題をクリアしてしまうケースもあるので、難しい点があることを

     述べています。

     しかし、上記のような研究も進んでいるので、区別はできるだろうとの

     観測のようです。

 

p299

 

ヒトの脳の完全なコンピュータ・シミュレーションを謳う野心的なプロジェクトが

すでに存在している。 スイスを拠点とするブルー・ブレイン・プロジェクトだ。

 

p300

 

このような平均的な機械半球の意識と、私の意識が一体化することははたしてある

だろうか。

 

ここでのポイントは、生体の脳半球どうしといえども、相方の巨大で複雑な神経回路網

の解剖学的構造など、何も把握しようがないということだ。 伝わってくるのは、その

活動のみで、ましてや、そのすべてが伝わってくるわけではない。アクセスできるのは、

脳梁や前交連などを通してつながる、その片鱗だけだ。

 

p301

 

機械半球は、個々のニューロン間の神経配線のレベルでは、元の脳半球とは似て非なる

ものだ。 しかし、神経アルゴリズムのレベルでは、ヒトの脳を踏襲していることになる。

 

==>> 筆者は、このような機械半球と人体の脳半球との接続が可能になるのは

     いつだろうかと書いていますが、1970年生まれの方ですから、

     もしかしたら存命中に可能になるのかもしれません。

     ポイントは我々が「実感する」意識、クオリア、がどのように実証されるのか

     ですね。 その「実感」で連想するのは、立花隆著「臨死体験」に出てくる

     「実感」としての体験です。 薬などによる幻想や夢ではない、実感です。

     映画「マトリックス」が成功するためには、それによって操られる人間に

     生きているという実感がなければいけないわけですからね。

 

p302

 

意識の自然則があるとすれば、それは宇宙誕生の瞬間から存在していた可能性が高い

自然則の在り方からして、広い宇宙のどこかで最初の生命が誕生し、その進化とともに

降ってわいたものだとはどうしても考えにくい。 だとすれば、意識の自然則は、地球型

の中枢神経系に特化したものにはなっていないことになる

 

p303

 

神経アルゴリズムとしての生成モデルは、世界を取り込む鏡のようなものと考え

られる。 表面の見てくれだけではなく、その因果的関係性をも含めて取り込む鏡だ。

 

・・・もっと言えば、脳の一部の処理も、意識を担う脳からすれば、取り込むべき外界

に相当する。 ・・・早い判断を要求される意思決定などは、意識のメカニズムの

窺い知れないところで進んでいる。 それが意識のメカニズムに取り込まれることに

よって、意識のもとの自由意志の錯覚が生じるのかもしれない。

 

p304

 

だとすれば、自動運転車などには、すでに意識が生じていることになる。各種センサー

情報をとおして、外界の因果的関係性を取り込み、自己回避などの自らの行動に

反映させているからだ。

 

==>> 「宇宙誕生の瞬間から存在していた」ということになると、まさしくこれは

     汎心論であって、あらゆるものに意識が宿るということになりそうですね。

     それは湯川秀樹博士が発想した素領域論にもとづく保江邦夫氏の「神の物理学」

     みたいな話になってしまいそうです。

     ただし、この本の著者は、一応統合情報理論をベースに話を進めている

     ようなので、その違いが気になります。

 

p304

 

朝めざめたとき、私が私であることに確信を持てるのはなぜだろう。 睡眠中は、夢を見て

いる時間をのぞけば、意識は完全に消失している。 つまり、意識の連続性という意味に

おいて、昨日の私と今日の私は別物だ。

 

それでも、私が私でいられるのは、広い意味での記憶があるからだ。

 

==>> 記憶ということで考えさせられるのはこの本です。

     この人の体験した記憶喪失は、目の前に展開する事物が何であるのかすら

     記憶から消失している状態です。

     ましてや、自分というものすら失っている状態だと言えるでしょう。

     つまり、クオリアだけがある状態だと言っていいかもしれません。

 

坪倉優介著「記憶喪失になったぼくが見た世界」

     http://baguio.cocolog-nifty.com/nihongo/2020/09/post-51fabb.html

     「p18

なにかが、ぼくをひっぱった。おされてやわらかい物にすわらされる。ばたん、

ばたんと音がする。とつぜん動きだした。外に見える物は、どんどんすがたや形

をかえていく。

(これは、誰かに引っ張られて、自動車の中の椅子に座らされ、ドアが閉まり、

走り出す様子です。誰かに、ではなく、なにかが引っ張ったとかいてあります。)

 

上を見ると、細い線が三本ついてくる。すごい速さで進んでいるのに、ずっと

同じようについてくる。しばらくすると、こんどは四本になった。急に、いま

まで動いていた風景が止まった。すると、上で動いていた線も止まる。

さいしょと同じ三本になっている。みんないっしょにきてくれたんだ。

(車窓から見える電線を書いていると思われます。 「いっしょにきてくれた」

という表現が独特です。 もしかしたら、自分が人間であることも、細い線が

人間ではないことも、区別がつかない状態なのかもしれません。)

 

 

p305

 

映画「トランセンデンス」では、ジョニー・デップ扮する主人公がテロリストの銃撃に

倒れ、彼の頭脳を救おうとした妻により大型コンピュータへとその意識は移植される。

 

==>> この映画は、この本を読んだ後に実際に観てみました。

     AIに繋がれた主人公が世界を支配しようとしていくストーリーでした。

     https://www.youtube.com/watch?v=CKIZi5CwOjY&t=10s

 

 

p307

 

そんな記憶に対して、脳をちょっとやそっとスキャンしたところで、機械側に写し取る

ことなど到底不可能だ。 現在の技術をもってすれば、神経細胞間の結合関係を計測する

こと自体は不可能ではないが、開頭して特殊な顕微鏡を脳表面に密着させる必要があり、

数千兆のうちのたった一つを読み取るにしても数十分を要する。将来、このような侵襲

的な手法がどれほど発展したとしても、短時間のうちに記憶を転写する方法はちょっと

思いつかない。

ましてや、映画に登場するような非侵襲の脳計測装置では絶対に不可能だと断言しても

よい。

 

==>> ああ、それを聞いて、ほっとしました。

     アメリカで映画製作の勉強をした某映画監督が、「ハリウッド映画は

     未来を描いているものが多いが、かなりの映画が現実になっているように

     思う」と言っていました。 まさに時代を先取りしているという意味です。

     少なくとも、「トランセンデンス」は、当分起こりそうにないことに安堵

     しました。

     しかし、心配なのはテレビドラマの「日本沈没」です。

     

     現実の世界でも、こんなことが言われていますからねえ。

     「12月末までに巨大地震がくることは、充分考えられます

地球物理学者で武蔵野学院大学特任教授の島村英紀さんが解説する。
立命館大学・環太平洋文明研究センター特任教授の高橋学さんも、驚きをもってこう話す。」

https://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/%E4%B9%9D%E5%B7%9E-%E6%B2%96%E7%B8%84%E6%B2%BF%E5%B2%B8%E3%81%AE%E8%BB%BD%E7%9F%B3%E5%A4%A7%E9%87%8F%E6%BC%82%E7%9D%80-%E5%A4%A7%E5%9C%B0%E9%9C%87%E3%81%A8%E3%81%AE%E9%96%A2%E9%80%A3%E6%80%A7%E3%81%AF%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B/ar-AAQTlFU?ocid=msedgntp&fbclid=IwAR2PrHMI_ix-TqjRzXhelwcK8Zrx0XQO6kpwVxcCor2mWEXlxW_ea9Z7wXE

     「「太平洋プレートは、北米プレートの下にも潜り込んでいます。人工衛星に

よる地殻変動のデータを見ると、東日本大震災(2011年)以降、北米プレート

は太平洋プレートに巻き込まれるような形で『西から東』に動いていました。

しかし、福徳岡ノ場が噴火した8月半ば頃から、その動きが変化しました。北米

プレートやフィリピン海プレートなどが太平洋プレートに押されるような形で、

『北東から南西』に、それまでとは異なった移動を始めたのです」

 

この異変は9月末頃まで続き、10月に入ると従来の動きに戻り始めたという。

「過去の例から言うと、地殻変動に何らかの異常な動きが起きてから、2か月

後に大きな地震が起きることが多い。

たとえば、東日本大震災、阪神・淡路大震災(1995年)、熊本地震(2016年)

のときも、発生の2か月ほど前に似たような地殻変動の異変が見られました。

 4580日間という幅はありますが、この期間は経験上、『空白の60日』と

呼ばれ、大地震の危険が迫っている時期といえます。つまり、今年の8月半ば

から9月末にかけて異変があったわけですから、12月末までに巨大地震がくる

ことは、充分考えられます」(高橋さん)」

 

 

さて、やっと読み終わりました。

 

私のテーマは「意識とは何か」ということで、いろいろと読んできました。

そして、その中で、かなり具体的な意識のプロセスを書いていた本は、

この本ともう一冊は 下の本でした。

 

前野隆司著 「脳はなぜ「心」を作ったのか ― 「私」の謎を解く受動意識仮説」

https://sasetamotsubaguio.blogspot.com/2021/09/blog-post_8.html

「この著者は、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授です。

今までに私が読んできた脳や意識の本は、哲学者、脳科学者、神経科学者、数学者などが

著した本でした。しかし、映画「マトリックス」などでご存知のように、AIやシステム

の分野が、脳や意識、あるいは心というものに関連して、SF映画の世界であるにせよ、

SFは未来の現実を先取りしているという過去の歴史もあるので、その未来と開発の

現場がどうなっているのかを知りたいと思って読んでみることにしました。」

 

 

そして、この本、「脳の意識 機械の意識」の著者 渡辺正峰氏も

東京大学大学院工学系研究科准教授という立場の方です。

 

意識という分野が、哲学や医学の領域だと思っていた私にとっては、

システム系や工学系の分野で、ここまで進んでいるということに驚きもありますが、

より具体的な理詰めで分かりやすいということを発見しました。

(もちろん、かなり難しいところはあったのですが、腑に落ちることが多かったと

 感じました。)

 

今後は一転して、古代インドの宇宙観や仏教の世界を覗き込んで、今現在の上記のような

科学との違いや似ているところを探してみたいと思います。

あくまでもテーマは「意識」ですが・・・・

 

 

 

=== 完 ===

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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