辛島昇著「インド文化入門」を読む ― 6  インドの植民地化、ヒンドゥー教における女性蔑視と女神崇拝 

辛島昇著「インド文化入門」を読む ― 6  インドの植民地化、ヒンドゥー教における女性蔑視と女神崇拝 


今回は「インド文化入門」を読んでいます。

 


          

「13  ティプ・スルタンの理想 ―― イギリスとの戦い」

 

p211

 

イギリスの東インド会社がヴィジャヤナガル王国のナーヤカからマドラスの地を得たのは

1639年であり、東インド会社の設立に遅れをとったフランスがボンディシェリーを

獲得したのは1673年のことであった。 両国はそこに商館と要塞を建設し、以後、

その地はそれぞれのインド進出の拠点として発展した。

 

p215

 

プラッシーの戦いでイギリス軍を率いたのはクライブであったが、彼は65年にベンガル

知事となり、ムガル皇帝にベンガル、ビハール、オリッサの徴税権(ディワーニー)を

割譲させた。 これによってイギリスは、実質的にその地の支配権を獲得し、イギリス

東インド会社の支配の下でインド人が徴税その他の業務を担当するという、いわゆる

「二重統治」が始まった。 それは、イギリスによるインド植民地化の第一歩であり、

南インドを舞台に、アングロ・マイソール戦争が起こったのは、その直後であった。

 

==>> プラッシーの戦いは、世界史でならった記憶があるんですが、

     予備校の動画で思い出しましょう。

     「「インドの関ヶ原」―天下分け目のプラッシーの戦」

https://www.bing.com/videos/search?q=%e3%83%97%e3%83%a9%e3%83%83%e3%82%b7%e3%83%bc%e3%81%ae%e6%88%a6%e3%81%84&docid=607998860524485953&mid=3DFB59ADE3C118F244753DFB59ADE3C118F24475&view=detail&FORM=VIRE

 

     「マイソール戦争」は記憶にないので、こちらでお勉強。

https://kotobank.jp/word/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%83%AB%E6%88%A6%E4%BA%89-135426

     「18世紀後半,インド南部を支配していたイスラム系のマイソール王国と

イギリス東インド会社との間で行われた4次(1767―1769年,1780

―1784年,1790―1792年,1799年)にわたる戦争。初めマイソール側は

ハイダル・アーリーとティプ・スルターンの2名君を得て優勢であったが,

マラーター同盟や北部の有力者ニザームなどが英国と協力したため敗北。

この結果,イスラム系に代わってヒンドゥー教徒のマイソール王国が成立

英国の管理を受けることになり,インド南部の植民地化は決定的となった。」

 

・・・これを読んでいると、日本の戦国時代にも裏切りはあったようですが、

敵対する相手の背後に外国勢力がいたのは、天草四郎の島原の乱のときに

チラッと可能性があったぐらいで、その後は幕末の動乱期でしょうか。

いずれにしても植民地になることは防ぐことができたわけですね。

しかし、現在の日本は、外国人が土地を所有できるみたいですけど、大丈夫

なんでしょうか? フィリピンの場合は、外国人はマンションの一部しか

所有できませんけど・・・・

 

「外国人は日本の不動産を購入できるのか?」

https://www.plazahomes.co.jp/news/can-a-foreigner-buy-property-in-japan/

「日本の不動産は、外国人であっても日本人と同様に所有権を取得する事が

可能。土地についても所有権が認められております。」

「日本においては、諸外国に見られる外国人向けの規制、または永住権や日本

国籍の有無、ビザの種類による規制もなく、土地・建物共に外国人の不動産所有

が認められております。

 

所有権の期限は無く、自由に売買することができ、贈与、相続させることも

可能です。 不動産の購入、所有、売却時にかかる税金等も日本人の場合と

違いはありません。

また、日本では不動産を購入したという理由でビザや永住権が得られるような

ことはありません。」

2021616日、国会にて土地規制法が成立しました。 

近年、北海道や離島などでの外国人による土地購入が問題となっておりました

が、日本政府は外国資本の不動産購入に規制を加える方向で動いております。」

 

・・・やっと日本政府も動き出しているようですが、遅すぎじゃないですかね?

国防だなんだといろいろ騒いでいるのに、あちこち穴だらけなんじゃないかと

心配になります。

 

 

p223

 

当時のインドには稀な国際的感覚をもち、イギリス人には残忍な「マイソールの虎」として

恐れられたティプ・スルタンの王国は、滅亡したのである。

ティプの生涯について、その姿を余りに理想化して描くことは、現実に反することである

かもしれない。

・・・しかし、当時のインド、あるいはアジアの様々な統治者と比べたとき、彼の姿が

一つの輝きを発しているのもまた確かである。 彼の生涯は、イギリスから独立したインド

の国営テレビの大河ドラマとして、全国に放映されたのである。

 

==>> ティプー・スルタンがどんな人物だったのかを見てみます。

https://kotobank.jp/word/%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%97%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%B3-1565419

     「インド、マイソールの国王(在位178299)。父王ハイダル・アリーの病死後

即位し、父の方針を受け継ぎ、イギリスの植民地的侵略(マイソール戦争)に

抵抗するかたわら、王国の富国強兵を目ざして近代的改革に乗り出した

たとえば、中央集権的官僚制度の整備、軍事制度の確立、郡県制の施行、農地

改革、その他多くの改革を行った。当時のインドではまれにみる国際的視野に

たった国家建設であったが、あまりに性急、強引なやり方に封建的勢力から

反感も買った。」

 

・・・これを読むと、なんだか幕末から明治維新にかけて日本がやった

ことに似ていますね。

おそらく、国土は広大だし、民族、宗教、言語も違うし、日本みたいには

いかなかったんでしょう。

 

 

「14 インドのフェミニズム ―― ヒンドゥー教における女性蔑視と女神崇拝」

 

p226

 

伝統的ヒンドゥー教社会にあっては、女性はほとんど人格を認められていないに等し

かった。 そのことはヒンドゥー教徒の日常生活における行動規範を示す古代の

「マヌ法典」を紐解けば自ずから明らかなことで、そこには女性についてつぎのような

規定が見られる。

子供のときは父の、若いときは夫の、夫が死んだときは息子の支配下に入るべし

女性は独立を享受してはならない。

夫は、性悪で、勝手気ままに振る舞い、良い資質に欠けていても、貞節な妻によって

常に神のように仕えられるべし

 

==>> 男にとっては天国みたいな国ですね。

これを読むと「家父長制」だなと連想します。

     193か国中で166位と、女性議員の割合が中東諸国の平均よりも遅れて

いる日本ですから、今でもしぶとくこのような考え方が日本に残っていると

考えた方がいいのかもしれません。

いわゆる「選択的夫婦別姓」がなかなか国会を通らないのも、世界の中での日本

が男女平等になっていないことのひとつの要素と捉えられているようですし。

 

     「家父長制」

https://kotobank.jp/word/%E5%AE%B6%E7%88%B6%E9%95%B7%E5%88%B6-465852

     「古代ローマの家父長制家族はその典型であり、家父長の権力は、家の成員が

男であれ女であれ、子であれ奴隷であれ、財産同様に取り扱い、生殺与奪の権

さえもっていた。子は自由人として奴隷とは区別されたが、家父長権は自分の子

を奴隷として売ることも、遺言に基づいて奴隷を子とし同時に相続人とする

ことさえもできた。

 家父長権は、このように家に属するものに対するいっさいの支配権を集中

した単一のものであったが、のち、子孫に対する家父権、妻に対する夫権、奴隷

に対する奴隷権、物に対する所有権などに分化した。家父長制家族は近代家族と

対比され、日本の家における家長もこれに準ずるようにみる説がある。」

 

「男女格差(ジェンダーギャップ)指数ランキング(2021年版)」

https://memorva.jp/ranking/world/wef_global_gender_gap_report.php

「日本は前年より1ランク順位を上げ120位となった。 分野ごとの順位は、

経済が117位、教育が92位、健康が65位、政治が147となっている。

女性の政治参加が少ないことなどにより、政治の評価が低い。 男女ともに平均

寿命が長いことなどにより、健康の評価は多少良い。

アジア太平洋地域ではニュージーランドがトップで、4位にランクインしている。

 フィリピンは前年から1つ順位を落として17となった。 韓国は6つ順位を

上げ、日本より上の102位となっている。 中国も日本より上で107位。」

 

・・・元世界第二位の経済大国が156カ国中の120位ですからねえ。

日本という国は何を目標に経済アニマルをやってきたんでしょうか。

 

ついでに、「幸福度ランキング」も見てみましょう。

https://eleminist.com/article/1184

 

  1位  フィンランド

 11位  オーストラリア

 13位  ドイツ

 17位  イギリス

 19位  アメリカ

 46位  ルーマニア

56位  日本

61位  フィリピン

76位  ロシア

84位  中国

     118位  イラン

139位  インド

149位  アフガニスタン

 

     さらに、幸福でない人々の「自殺率ランキング」を見てみましょう。

     「世界各国の自殺率ランキング 日本は先進国(G7)でトップ

     https://mieluka.com/68/

     「ここでは日本や世界の主要国の自殺率(人口10万人あたりの自殺者数)を

ランキングで表しました。」  

43か国での比較です。

 

 1位  ロシア  31.0人

 2位  韓国   26.9

 7位  日本   18.5

 9位  フランス 17.7

     10位  スイス  17.2

     11位  インド  16.3

     15位  アメリカ 15.3

     32位  中国    9.7

     34位  イギリス  8.9

     43位  サウジアラビア  3.2

     「注目すべきは、ほぼすべての国で男性の方が女性よりも自殺率が有意に高い

     点です。国によっては10倍近い差があります。日本でも2倍以上の差があり

ます。」

 

     別のサイトで、2019年度版をみると、183カ国中で

       4位  韓国   28.6

       9位  ロシア  25.1

      23位  アメリカ 16.1

      25位  日本   15.3

      39位  インド  12.7

     137位  ブータン  4.6

     174位  フィリピン 2.2

 

p232

 

今日なお続く女性差別をさらに雄弁に物語るのは、日本でも報道された「焼かれる花嫁」

の話であろう。 カーストによって風習が異なりはするものの、ヒンドゥー教社会で

一般的には結婚に際して、女性側が男性側に対してかなりの額の贈与金(ダウリ)を

支払い、結婚後も何かと金品をださせられる。 そして、その額が少ないといじめられ、

ついには焼き殺されるという事件が多発したのであった。

夫の側は、つぎの結婚で、またダウリをとろうというのである。

 

==>> この風習はかなり日本人的にはショッキングですね。

     日本の伝統的なしきたりをチェックしてみると、結納ぐらいしか思い出せ

     ないのですが、日本書紀にも書いてあるそうです。

     https://www.anniversaire.co.jp/brand/omotte/magazine/tips/4919

     「「結納」は、結婚や婚約の成立を、品物などを取り交わして行う儀式。古くは、

今から1400年前(平安時代)、仁徳天皇の皇太子が黒媛を妃として迎えるに

あたり、絹織物や酒・肴などの「納采」が贈られたと、日本書紀に記されて

います。元は婚礼儀式として貴族、公家や武家の間でのみの儀式が、明治時代に

なり、庶民の間でも行われるようになりました。結納の語源は、結婚を結び申し

入れる際に男性から持ち寄る酒肴を「結いのもの」と呼んでいたことが由来、

または、結び申し入れる婚礼を申し込むという意味の「言い入れ」など諸説

あります。」

 

・・・上記リンクには、関東では男と女が取り交わす、関西では男が女に

納めると書いてありますが、地域によっていろいろと風習もあったようです。

特に名古屋は嫁入り道具のトラックというのが有名でした。

https://www.styles.jp/lazorgarden-nagoya/wedding/information/wedding-lab/party/nagoyawedding/

「名古屋ではたくさんの豪華な嫁入り道具を持って嫁ぐ風習があり、そんな

結納式の様子から「結婚式が派手」と定着したようです。

徳川家康のお膝元でもあった名古屋。徳川家に嫁ぐ娘のために豪華な結納品

を持たせたのが、豪華な結納式の始まりだそうです。それ以来、名古屋では結婚

の際に豪華な結納品を持って嫁ぐことが習慣となったと言われています。

ただし、現代では豪華な嫁入り道具と共に嫁ぐ方は減少傾向。」

 

・・・いずれにせよ、婚約指輪や結婚指輪についても、日本の場合は、男の側が

頑張らないといけません。少なくとも私が結婚した50年程前はそのような

感覚であったと思います。

 

 

p232

 

それに敢然と立ち向かう女性が現れた。話題となったのは、「女盗賊プーラン・デーヴィー」

である。 彼女は低い農業カーストの貧乏な家に生まれ、種々の苦労の末結婚した夫にも

虐待され、ついに盗賊団に加わった。

 

やがて一派の首領となって、かつて自分を輪姦した地主たちを襲い、殺すなどして

復讐した。 地方の人々はそのような彼女に喝采を送り、彼女は免責を得てついに

国会議員にまで選出されたのであった。

 

 

p233

 

女性の差別、蔑視とうらはらに、インド、あるいは他の南アジアの国々における「女性」

の活躍には、目を見張るものがあるのである。 

 

==>> 女盗賊は特異な例でしょうが、それにしても国会議員にまでなっている。

     そしてここには、インディイラ・ガンディー首相、 パキスタンのベナジール・

     ブット首相、スリランカのチャンドリカ・クマーラトゥンガ大統領、そして

     バングラデシュの女性首相たちの例が記載されています。

     世界中のあちこちで、女性の政治的リーダーが輩出していることを思えば、

     日本はいかにも遅れていると感じます。

     ガラスの天井などというよりも、露骨な天井があるんでしょうね。

 

p234

 

ここに、インド亜大陸の宗教伝統における女神の崇拝という事実との連関を観ることは

不可能であろうか。 ヒンドゥー教の中には明白にそれがあり、インディラ・ガンディー

の場合には、プーラン・デーヴィーのケースと並んで、そこに女性の力に対する期待、

信頼感のようなものが込められていたように思う。 インディラの最盛期、彼女が農村

に遊説に出かけると、人々に女神のように崇拝されたといわれている。

 

==>> こういう話になってくると、どうしても頭に浮かんでくるのは日本神話ですね。

     そして最近かまびすしい女系天皇の議論です。

     日本神話の中には、どれくらいの女神がいるんでしょうか

     こんなサイトがありました。

     ここにリストアップされている女神は32名ですね。

     https://shinwanosekai.info/goddess.php

     「日本神話の女神ついては三貴子の一柱として有名なアマテラスを含めて多く

の情報が「日本書紀」や「古事記」に記されており、女神達は神話内の様々な

エピソードにおいて非常に重要な役割を果たしています。」

 

私が知っていたのは、アマテラスとイザナミ、神功皇后、トヨタマヒメぐらい

しかありません。

アマテラスは太陽神ですから、仏教でいうなら大日如来、インドでいうなら

ヴィシュヌ神でしょうか。

https://world-note.com/gods-in-hinduism/#toc2

このヴィシュヌ神は、「世界に混乱が訪れた時、平和と秩序を回復させるために

ヴィシュヌが姿を現す」と、まるでアマテラスのようなことが書かれています。

 

さて、女系天皇の議論について、私もほとんど知識がないので、基礎知識から

みていきます。

https://allabout.co.jp/gm/gc/472397/

 

「天皇家が「万世一系(皇統が永久に続くこと)」と呼ばれるのも、「世界最長の

王朝」と言われるのも、神武天皇の時代から「男系天皇」を継続してきたから

ほかなりません。

この意味では日本の天皇家は「Y染色体」を連綿と受け継いでいる血統である、

と言えるでしょう。皇位継承など皇室に関する法律を「皇室典範」といいますが、

この第1条に「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」とあり

ます。「男系」にこだわる理由がよくわかりますね。」

 

「ここでも実はこの「Y染色体問題」が絡んでくるのです! もし女性天皇を

認めると、その夫が皇族外であった場合、その子どもには皇統の「Y染色体」が

受け継がれなくなってしまうのです! では推古天皇は女性なのになぜ天皇に

なれたのでしょうか。」

 

日本の歴史上、女性天皇は8人(10代)います。この8人のうち推古天皇・

皇極天皇(斉明天皇と同一)・持統天皇・元明天皇の4人は、夫が天皇または

皇族でした。よって、その子どもには皇族のY染色体が受け継がれています

また元正天皇・孝謙天皇(称徳天皇と同一)・明正天皇・後桜町天皇の4人は

生涯独身を貫き、子どもが天皇の位につくことはありませんでした。これにより、

歴史上の女性天皇は万世一系の皇統継承には影響はなかったと言えるのです。」

 

・・・素朴な疑問ですが、このY染色体って、科学的な分析が可能な代は

いつごろまで遡れるんでしょうね。 遺骨が残っていれば分析な可能なん

でしょうが。

 

ところで、話は飛びますが、Y染色体については、消滅するんじゃないかと

いう噂もありますね。

https://mycode.jp/topics/genes/evolution/Y_chromosome.html

「もともとペアーだった男性のY染色体と女性のX染色体は、長い進化の過程

で別々の道を歩み、Y染色体の遺伝子が急激に減っているのは不思議です。長い

進化の歴史の過程で、私たちが理解できていることは非常に限られているのか

もしれません。」

 

・・・で、男系天皇と女系天皇、私はどう思うか・・・ですが、

どっちでもいいです。

男系であることを残していくことにどれほどの意味がわかりませんので、

どちらでもいいということです。

そして、「女性」天皇をどう思うか・・・は、いいんじゃないかと思います。

「女性」であることについては、「象徴天皇」を前提とすれば男でも

女でもいいと思います。

 

 

p236

 

インドの文化伝統において、女性原理と男性原理を統一しようという試みは、タントリズム

の中でなされてきたのである。 タントリズムを一言で説明するのは容易ではないが、

それは静的な男性原理と動的な女性原理を合体させることによって宇宙原理を実現させ、

それによって解脱を得ようとする試みである。

 

この一元論的考えは、女神信仰が盛んになってくる時期とほぼ時を同じくして力を得る

ようになってきた。 

 

・・その動きは、10世紀ころから急速に強まり、カジュラーホーに見られる男女合体

(ミトゥナ)を表す彫像群は、その視覚的表現に他ならない。

 

==>> 「タントリズム」については、こちらで再確認。

https://kotobank.jp/word/%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%83%A0-851001

     「教義としては,自己と人格的絶対者の同一性を求めることであり,自らの本質

を認識し,適当な修行を行うならば,神としての自己のあり方に戻るとされる。

教義の実践のためには師への入門式が重要で,これにより死後の解脱が保証

される。それでも死ぬまで毎日マントラ(呪(じゅ))を唱えて神を供養すること

が義務となり,これにより自分自身と神との一体性を修得するとされる。

現世で解脱を求める者は,性的儀礼,死体の儀礼という修行を通して自己の

絶対的自由を確認する。」

 

タントラと密教の関連については、こちらのサイトで、大日経や理趣経など、

主に真言宗で唱えられる経典が含まれています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%A1%E4%B8%8A%E7%91%9C%E4%BC%BD%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%A9

「その体系は徐々にまとめられ、7世紀に『大日経』『金剛頂経』が成立するに

至り、一応の完成を見る。これが日本にも真言宗として伝わっている中期密教

(純密)である。

しかし、インド仏教界はこれに飽き足らず、さらなるヒンドゥー教への対抗、

庶民に対する訴求力・求心力の維持・強化、そして仏(世界)との合一手段探求・

強化の一手として、「性」と「チャクラ」(つまるところ「クンダリニー・ヨーガ」

および「シャクティ信仰」)に、よりいっそう深く踏み込んでいくことになる。

こうして生み出されたのが、後に無上瑜伽タントラと総称されることになる

後期密教経典群である。」

 

 

p238

 

日本の場合は、儒教的な考え方、あるいは封建道徳に対する戦いというようにいわれたが、

インドの場合には、カースト制度と密接に絡んだヒンドゥー教的倫理(それは先述の

「マヌ法典」規定中に明白に見られる)に対する戦いであったと言えよう。

それは今も続いているといわなければならない。

 

==>> それは日本においても続いていると言わなければならないのでしょう。

     既にみたように、「男女格差(ジェンダーギャップ)指数ランキング(2021年版)」

     では、156カ国中 日本は120位で、インドは140位です。

その前後には、中東のイスラム教の国々やアフリカの発展途上国などが

ランキングしています。

日本人が「あの国は男女差別が酷い」と思っている国々と日本は同じなんですね。

     https://memorva.jp/ranking/world/wef_global_gender_gap_report.php

 

 

p239

 

カマラーの自伝が提起した問題は、プーラン・デーヴィーの場合と異なって、

第一波的な戦いを越えて、男性中心の社会そのものを糾弾する第二波の戦であった

ともいえよう。

 

カマラーが最後に求めたのは、タントリズムに則った、男女合体による宇宙原理への

解脱なのである。

カマラーのいうフェミニズムを、性別役割を温存する母性主義として切り捨ててしまう

ことは容易だが、ヒンドゥー教の中に、世界のフェミニズムの内実をより豊かにして

くれる何者かを見出すことは不可能であろうか。

 

==>> ここでカマラーは「私のフェミニズムは、西欧の女性のそれとは異なる。」

     語っています。 「二つの相反する原理を統合しようとする」試みであると

     期待されているようです。 それはつまり、ヘーゲルの弁証法的とも呼べる、

     あるいは仏教における「空」や「相依り」、つまり相互作用という意味かも

     しれません。

     両者が同じものであっては、相互作用は起こりませんからね。

 

     

=== その7 に続きます ===

 辛島昇著「インド文化入門」を読む ― 7(完) マハトマ・ガンディーの失敗? (sasetamotsubaguio.blogspot.com)

 

 

 

 

 

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