黒木登志夫著「新型コロナの科学」を読む ― 5 「菌は愛より強し」、PCR検査、スウェーデンの終末期医療とトリアージ

 

黒木登志夫著「新型コロナの科学」を読む ― 5 「菌は愛より強し」、PCR検査、スウェーデンの終末期医療とトリアージ

 

 

黒木登志夫著「新型コロナの科学:パンデミック、そして共生の未来へ」を

読んでいます。

 

 


  

p200

 

スウェーデンの方針を決めたのは、国の公衆衛生局の疫学者、テグネルである。

彼らの独立性はスウェーデン憲法で保障されているため、国はテグネルの方針に

したがった。 それに、ロックダウンで市民の行動を制限することも憲法違反

あった。

 

==>> スウェーデンのこのような体制や政策を真似しろとはいいませんが、

     少なくともそれぞれの危機管理の司令塔がどこにあるのか、責任がどこに

     あるのかをはっきりすることが日本には必要だと思います。

     太平洋戦争のような結果を招かないためには、一部の暴走があっては

     なりませんし、東日本大震災の時の原発事故のような「想定外」が

     繰り返されることも御免こうむりたいです。

     学術会議のような専門家集団を潰すようなリーダーでは、日本に未来は

     ないと思います。 メルケルさんの話を聞くまでもなく、日本は民主主義

     の国なんですから。

 

p204

 

検査法の大きな違いは、診断の目的である。

― PCR検査と抗原検査: 「現在感染しているかどうか」を診断する。

― 抗体検査: 「以前に感染したことがあるかどうか」を診断する。

 

・・・抗原はウイルスのタンパク、抗体はウイルスタンパクに反応して身体が作った

免疫タンパクである。 両者は原因と結果の関係にある。

 

==>> 卑近な例で申し訳ないのですが、 私がワクチン接種を2回やった後に、

「抗体検査」をやった時の経験談はこちらにあります。

https://sasetamotsubaguio.blogspot.com/2021/07/blog-post_14.html

 

 

p205

 

検査法の正確さは、感度と特異度でしめされる

― 感度: 検査の正確さを示す数字。 感度90%は、新型コロナ感染者100人を

  検査して、90人をコロナと診断できたとき。 残りの10人は、感染者なのに

  感染と診断されなかったので、偽陽性となる(偽陽性10%)。

― 特異度: 新型コロナに感染していない人を検査して、99%の人が陰性であれば、

  特異度は99%になる。 1%の人は、本当は病気でないのに病気と診断された

  偽陽性となる。(偽陽性1%)

 

==>> そこで、をPCR検査はどの程度の数値なのかなんですが、

     感度は75%、特異度は99.2%と書いてあります

     つまり、感染者の75%を正しく判定できるということになりそうです。

     そして、非感染者を0.8%偽陽性にしてしまうということですね。

     問題は、感度が75%ですから、25%の感染者を取り逃がしてしまうという点

     でしょうか。 なので、何回か検査するしかなさそうです。

 

p211

 

綜合して考えると、PCR検査は、信頼性の高い技術である。 しかし、サンプルの

採取時期と方法によって影響されやすい。 発症後2週間以内であれば、PCR検査

の感度は、70―80%に達する。 さらに、精度を上げるためには、繰り返しPCR

検査を行う必要がある。

 

p212

 

インフルエンザの診察を受けた人は多いであろう。 鼻の奥を綿棒でこすり、

チューブ内で処理した後、板状の小さな検査装置に落とす。 15分もすると、

装置の端の方に青い色のバンドが見えてくる。 ・・・・新型コロナの抗原検査も

インフルエンザの検査と同じ原理、同じような装置である

 

p214

 

WHOは、抗体をもっていることが将来感染しないということを保証するものではなく、

したがって「免疫パスポート」としては使えないと忠告した。

 

==>> 結局、検査は何度かやって正確度を上げるしかなさそうです。

     気になるのは「免疫パスポート」の件なんですが、

     最近のニュースにはこんなことが書かれています。

 

     「ワクチン2回接種後に「ブレークスルー感染」70人」

     https://www.nishinippon.co.jp/item/n/783870/

     「福岡市で、新型コロナウイルスワクチンの接種完了後に感染するいわゆる

「ブレークスルー感染」が、630日~86日に少なくとも70人いたこと

が市の調査で分かった。重症化した人はいないという。」

「厚生労働省はワクチンを2回接種した場合でも100%の発症予防効果が得ら

れるわけではなく、有効率はファイザー製で約95%、モデルナ製で約94%と

している。市は「ワクチンで感染を完全に防げるわけではなく、引き続きマスク

着用や手指消毒などの基本的な予防策を続けてほしい」と呼び掛けている。」

 

 

p222

 

厚労省は、無症状者への検査に敵意をもっている。 しかし、感染しても無症状の若者

が街を歩き、無症状者からの感染が半数を占めているのが明らかになった今、無症状者

への検査こそが、感染予防にとって重要な意味を持っている。

 

==>> PCR検査に関連して、「積極的疫学調査の縮小」ということが最近いわれ

     始めました。 これについては、第五波の全体像が見えなくなるという

     懸念が出ているようです。

 

     https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/293435

     「「積極的疫学調査の縮小により、一見、新規感染者数などの数値が改善された

ように見えても、水面下で感染拡大は進行します。検査を受けられなかった潜在

陽性者に対する治療もできなくなり、死後、コロナの陽性が判明するケースが

増えてもおかしくありません」

 都は今年1月の第3波で保健所業務が逼迫し、1月22日から「調査縮小」に

踏み切った。この時は新規感染者数のピークは過ぎ、減少傾向に転じていた。

第5波はいつピークアウトするのか分からない。調査縮小により、数値と実態

がかけ離れれば、第5波の全貌も把握できなくなる。」

 

 

     一方で、民間のPCR検査センターで陽性になった場合に、どう扱われるかが

     気になるところです。

     基本的には陽性になっても、さまざまなデータに陽性者としてカウントされる

     こともなく、医師や保健所なども動いてはくれないと考えて方がよさそうです。

 

     「安価な新型コロナPCR検査センターの課題 

陽性だったが対応がとられず重症化した事例も」

     https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20201219-00213318

     「症状がない・濃厚接触歴がないなどの理由で行政検査の対象にならない方に

とっては、自費でPCR検査が行える検査センターは良い選択肢となりえますが、

陽性であった場合にきちんと保健所に届け出がされ、陽性例がそのまま放置

されることがないようにしなければなりません。」

 

・・・・民間の検査で陽性となった人たちが野放しということになると、

感染拡大を抑えるという観点からはまったくの無策ということになりますね。

 

 

p229

 

体内に入ったが、細胞にとりつかず、浮いているようなウイルスをやっつけるのは

抗体の役割である。 新型コロナ薬は、細胞内に入ろうとしているウイルスと細胞内で

複製中のウイルスを標的とする。 さらに治癒した患者の血漿を注射する血漿療法、

サイトカイン・ストームに対処する薬剤がある。

 

p232

 

クロロキンとヒドロキシクロロキンは、マラリアの予防治療薬として使われているが、

ウイルスの細胞内侵入を抑える働きもある。 しかし・・・大規模二重盲検試験で

効果が否定された。 ・・・・論文は撤回された。 トランプ大統領は密かに服用

していたが、心臓への副作用を指摘され、中止した。 ブラジルのボルソナーロ

大統領も服用していたというが、二人とも新型コロナに感染した。

 

p234

 

安倍首相はアビガンに前のめりであった。 しかし有効性が分かっていないときに、

国のトップが特定の薬に度々言及するのは、問題である

特に、政府資金を投入するとなると利益相反になる。

 

==>> 世界中で様々な治療薬が研究・開発されているようですが、話だけが

     先走って一国のリーダーまでが無責任なことを口にする場合もあるようです。

     どこかの文献に出ていたからと言って、個人的に服用するのはリスクが

     あるようです。

     また、そういう情報に飛び付いて株で大損することのないようにご用心。

     まさか、安倍首相の周りで株を売り逃げした人なんていないでしょうね。

 

 

p239

 

新型コロナという新たな病気について、たくさんの論文が発表されているが、その半分

以上は査読のないジャーナルである。 その中には、査読がないだけに、間違った

内容の論文があるかもしれない。 

 

p240

 

NEJM、ネイチャーなどの評価の高いジャーナルは、お高くとまり、読むなら金を

払えというような態度であったが、コロナ禍の中で、少なくとも新型コロナに関する

論文はオープンアクセスとして、誰でも読めるようになった。 これは、ジャーナルの

使命を意識した決断といってもよいだろう。

 

p241

 

サイエンス誌によると、 デサイによって創設されたサージスフェアは、もともとは

医学の教科書を売るような小さな会社であった。 デサイは医師であるが、数々の

問題を起こしているという。 注文主の目的に合うように作られたデータベースを

買って論文を書くという安易な「研究」が、コロナ禍のどさくさの中で容易に通って

しまったのだ。 他にもこのようないい加減な研究があるかもしれない。

 

==>> 様々な医学論文がインターネット上でさかんに参照されていること自体は

     良いことだと思うのですが、その中にはかなりいい加減なものも

     含まれていることを念頭においたほうが良さそうです。

     (おまけに、SNSなどでは自分に都合のよい部分だけを切り取って

      フェイクニュースを拡散する輩がいるので困ります。)

     もちろん、私は全くの門外漢ですから、そのような論文を読んだところで

     チンプンカンプンなだけですので、信頼できるサイトで公表されている

     論文要旨なり、論文の解説なりを読むしかありません。

     信頼できるメディアがそのような役割を果たしてくれると助かります。

 

     インターネット上で、信頼できそうなサイトはこんなサイトではないかと

     思います。

     このプロジェクトは、複数のメンバーが論文などに目を通して、

     正しい情報であると確認したものを掲載しているそうです。

     https://covnavi.jp/manager/

     「運営:(一社)保健医療リテラシー推進社中

     「こびナビ」は新型コロナウイルス感染症や新型コロナウイルスワクチンに

関する正確な情報を皆さんにお届けするプロジェクトです。」

 

 

p243

 

特効薬と同様、ワクチンの効果もすごい

図11-1は、麻疹ワクチン接種前後のアメリカの麻疹患者数である。それまでは、

毎年30万人から80万人の麻疹感染者が出ていたのに、1963年に麻疹ワクチンが

始まると激減し、最近では年に160人の患者が出る程度である。

ポリオは1979年以来アメリカで感染者が出ていないし、天然痘(痘瘡)は1980年

のソマリア人の患者を最後に地球から消滅した。 人々が新型コロナワクチンの開発に

期待しているのは当然である。

 

 

p246

 

抗体は細胞内に入ることができないが、細胞の外にいるフリーのウイルスに結合して、

ウイルスを不活化する。 このように、感染を抑えるような働きをする抗体を

中和抗体という。

 

p246

 

新型コロナウイルスに対するワクチン開発については、この分野のトップの研究者

である河岡義裕によって分かりやすく解説された本があるので、参考にしてほしい。

 

==>> ワクチンの歴史がどうなっているかについては、こちらのサイトでどうぞ。

     https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%B9%B4%E8%A1%A8

     「多くのワクチンがヒトの疾病の為に存在するにもかかわらず、全世界から撲滅

できた疾病は天然痘だけである。小児麻痺とはしかとが、世界的な撲滅キャン

ペーンの現在の目標となっている。」

 

・・・撲滅はなかなか難しいようですが、国によっては消滅させたものも

多くあるようです。 おそらくワクチンの有効性の問題もあるでしょうし、

国や地域によってはワクチンの普及率や医療体制の難しさもあるのでしょう。

今現在の新型コロナウイルスも、もぐら叩きのように、こっちの国で消えても

あっちの国から入ってきたりして、行ったり来たりしながら変異を繰り返す

状況が続くのかもしれません。

 

河岡義裕氏の本はたくさんあるようですが、「ネオウイルス学」という本を

読んでみることにしました。

「研究者20名が解説!

新型コロナパンデミックで注目されるウイルス学の新領域

ウイルスと生命、共生と進化の未来を探る!

 

 

p249

 

抗体依存性感染増強(ADE)

すべての医薬品には副作用がある。 ワクチンにも、さまざまな副作用があり、それを

理由に忌避する人がいる。 しかし、集団免疫を考えれば、みんなでワクチンを受け

なければ意味がない。

 

ワクチンの副作用の中で一番恐ろしいのは抗体依存性感染増強(ADE)と呼ばれる

現象である。 抗原に結合するが、それを中和して病気を予防する力のないような、

中途半端な抗体ができたときに起きる。 そのような抗体は、免疫担当細胞の表面に

存在するFcレセプターに結合する。 抗体の一方の端では抗原(=ウイルス)に結合

し、他方で免疫細胞と結合することにより、細胞内にウイルスを送ることになる。

・・・・ウイルスは爆発的に増え、病状は重篤化する。

このような抗体依存性感染増強は RNAウイルス、たとえば、デング熱、ジカ熱、

そして同じコロナウイルスのSARSMERSで起こることが知られている。

 

==>> このADEについては、今現在使われているワクチンでは報告されていない

     ので、とりあえず大丈夫なのでしょう。

     

     デング熱のワクチンについては、フィリピンでこのADEと思われる副作用

     が出て大問題になりました

     https://digital.asahi.com/articles/ASN5X6FPVN5PPLBJ00J.html

     「デング熱はワクチン中止に

 長崎大のモイ・メンリン教授によると、抗体がウイルスを無力化できないと、

抗体が架け橋のようになり、ウイルスが免疫細胞に入って、その中でウイルスが

増えて感染を強めると考えられているという。これがADEで、「デング熱」の

ワクチンとの関係が疑われたことがある。」

「デング熱は熱や筋肉痛などの症状が出る感染症で、蚊が運ぶデングウイルス

がひきおこす。フランスの製薬大手サノフィがデング熱ワクチンを開発。

フィリピン政府が接種を大規模に進めたが、2017年に中止した。」

 

 

p251

 

ワクチン効果のエンドポイントとして、最終目的である感染予防効果を見ようとすると、

ワクチン接種を受けた人が感染するかどうかを確認しなければならない。

感染の確率を1%とすると、1万人を対象に第三相試験を行っても感染者は100人程度

である。 統計的に有意なデータを取るためには、数万人の臨床試験が必要になる

・・・日本でワクチンの感染予防効果を見るのは無理である。

 

p251

 

政治家には、このような慎重な手続きが理解できないようだ。 プーチンお習近平も

トランプも、ワクチンを自分の手柄にしようと圧力をかけてくる。

特にトランプ大統領は再選選挙の11月3日前に承認するようにFDAに圧力をかけ

「あっという間に」などという発言を繰り返していた。・・・・大手ワクチンメーカー

・・・は共同で声明を出し、安全性、有効性のデータなしにFDAが承認しないように

求めた。

 

==>> ここでは、日本ではなかなか治験が実施しにくいことを述べています。

     致死率が非常に高い感染症であれば、比較的治験を希望する人もいるの

     でしょうが、感染率や致死率が微妙な場合は敢えて治験を受けるひとも

     いないでしょう。

 

     政治家の圧力に関しては、なにをかいわんやです。

     製薬メーカーとしても、後で問題になって補償金などの話がでてくることを

     嫌ったようです。 その点でも、スウェーデンのような法制度は見習うべき

     ではないかと思います。

 

p253

 

60%の人の免疫が必要

人々は、ワクチン接種により自分が感染しないことを期待しているが、ワクチンには

同時に接種を受けていない人々を守るという集団免疫への期待もある。

・・・実際、麻疹の感染は、ワクチンの普及による集団免疫により、感染を抑え込むこと

ができた。

 

p255

 

集団免疫に必要な免疫保有者のパーセンテージは、図11―4の上の数式から計算できる。

60%の人が免疫を以っていれば、新型コロナウイルスの集団免疫が成立することに

なる。

 

==>> 本にあるグラフでは、横軸に「基本再生産数(Ro)」、縦軸に免疫保有者(%)

     になっていまして、 例えば麻疹の場合、Roが12-18なので

     免疫保有者は90%ぐらい必要だと読めます。

     インフルエンザと新型コロナウイルスはRoがほぼ同じで2-3.5ぐらい

     となっていますので、集団免疫のためには60%ぐらいは必要だと

     判断しているようです。

     しかしながら、新型コロナの変異株の場合は、このRo(基本再生産数)が

     つまり感染力が1.5倍とか2倍とか言われてもいますので

     仮に2倍だとすると Roが最大7ぐらいになってしまいますから、

     その場合だと 免疫保有者の割合は80%ぐらいになってしまいます

     (グラフの読み方が間違っていたら御免なさい)

 

p261

 

BCGには、結核予防以外にも、乳児死亡の減少、高齢者の肺炎減少などの効果がある

ことが知られている。 大類孝(東北大学)は、脳卒中による寝たきり高齢者の肺炎が、

BCG接種により3倍以上抑えられることを2002年に報告している。

 

==>> ここではファクターXのひとつとも考えられているBCGのことが

     記載されていますが、関係機関はコロナ予防目的のBCG接種は認めて

     いないそうです。

 

p263

 

1980年代だったと思う。 東京・広尾の日赤医療センター結核病棟(今はない)

にお見舞いに行ったとき、病棟の入り口に「菌は愛より強し」と書いてあったのを

覚えている。 確かに、愛だけでは感染症を治せない。 院内感染も防げない。

ときに、愛は菌をうつす。

 

==>>  「菌は愛よりも強し」、「ウイルスは愛よりも強し」、

      これはけだし名言だと思います。思わず笑ってしまいましたが。

 

p266

 

なかなか正体のつかめない未知のウイルスへの恐怖に、泣きながら防護服を着る

スタッフもいました。 防護服の背中に名前を書いてあげながら、仲間を戦地に

送り出しているような気持ちになりました。

家族がいる私も、自分に何かがあったときどうするかを家族に伝えました。

 

==>> 医療現場の悲痛な叫びについては、五月にこんな本を読みました。

     この本は概ね2021年の1月までの医療現場の様子を書いてありました。

     「夏川草介著「臨床の砦」 この戦、負けますね」

     http://baguio.cocolog-nifty.com/nihongo/2021/05/post-ddcf4c.html

 

     第五波が急拡大を続けている中、最前線の医療現場の皆さんに掛ける言葉も

     ありません。 皆さんが倒れないことを祈るのみです。

 

p270

 

東京医科歯科大学、千葉大学を含む多くの病院では、新型コロナ担当の医療従事者は、

家族への感染を恐れて家に帰らず、ホテル住まいをしている。 病院はホテル泊希望者

のホテル代も負担している。

 

p271

 

大部分の病院でも、新規入院患者、手術患者、救急患者には、PCR検査により感染者

を同定し、さらなる感染を防ごうとしていたが、厚労省は5月中旬まで認めていなかった。

しかし、医学会が声をそろえて、PCR検査の承認を求めたので、さすがの厚労省も、

「無症状の患者に対して、医師が必要と判断し、実施した場合は、(診療報酬点数)

算定」できるという通達を5月15日に出した。

 

 

p272

 

コロナ禍の中で、病院の経営はますます厳しくなってきた。 コロナ患者のために、

病室を用意し、重篤患者のためにICUを確保する。 外来患者は減少し、手術は

できなくなる。 ギリギリで経営してきた病院があっという間に財政赤字になったのは

当然である。 そのため、ボーナスが出せなくなる。 やめる人が出てくる。

 

==>> 医療も経営あっての組織ですが、潰れられたら元も子もなくなります。

     人材が疲弊してやめる人が出てくるのも理解できますが、それも困ります。

     国民を守るためには、国はまず医療機関、医療従事者を支援すべきでしょう。

     もう既に1年半以上もの長い間先の見えない戦いに耐えてくださっている

     医療従事者に心から感謝します。

 

p274

 

欧米諸国は全死亡の40%以上が介護施設である。 特に、スペイン、スウェーデン

では70%前後が介護施設の死亡である。 ・・・・それに対して日本ははるかに

少なく13%に過ぎない。

 

p275

 

スウェーデンでは、パンデミックに先立ち、ICU施設の治療に関して、トリアージ

指針が決められた。 80歳以上の患者、70歳以上で一つ以上の臓器障害を持つ患者、

60歳以上で二つ以上の臓器障害を持つ患者は、ICU治療の対象外としたのである。

・・・ このようなトリアージが受け入れられたのは、スウェーデンでは終末期医療

に際して、無駄な延命治療を行わないことで国民が理解していることがあるという。

 

==>> これを書いているたった今、NHKのニュースで聖マリアンヌ医科大学の

     医師が、重症者の行き場がなくなり、中等症も、自宅待機の軽症者も

     重症化しても受け入れられなくなっている窮状を訴えていました。

     既に医療が崩壊しやるべき医療レベルが保てていないという話でした。

     そして、「国が大規模な受け入れ先を作って欲しい」と訴えていました

     すでに何の指針もないまま日本はトリアージに入ってしまったようです。

     テレビの画面には、20代の男性がECMOが必要な状態で緊急入院して

     いると報じていました。自宅待機していたのが急変したのだそうです。

     デルタ株は、20―50代が9割で、いままでとは全く異なるものだという

認識が必要だそうです。

 

p281

 

ここまで来てしまったら、コロナは簡単に収まるはずがない。 収まったと思っても、

どこかに隠れているウイルスが、いつ顔を出すか分からない。 今世紀も来世紀も、

新型コロナウイルスは生き続ける。 われわれも、コロナと共に生き続けるほかはない。

 

p286

 

CDCに求められるのは、政府から独立した感染症の専門家集団として、しっかりと

意見を言うことである。 厚労省など行政組織はCDCにはなり得ない。

国立感染研が厚労省から独立し、大幅に拡大、組織替えをすれば、司令塔にふさわしい

組織となるだろう。

・・・・CDCのトップが政府の思惑を窺い、忖度し、正論を言わなくなったら、

ウイルスに付け込まれてしまう。

 

==>> さて、将来を見通して、日本にCDCのような独立した司令塔は

     出来るのでしょうか。

     論理的な真摯な議論ができる国会議員は何人ぐらいいるのでしょうか。

     法律を解釈で捻じ曲げるような政治家が多い中、しっかりした法律に

     基づく日本版CDCが作れるとは残念ながら思えないのですが、

     それでも国会議員の中にいる哲学をもった知恵者が将来の日本国民の

     命を守るべく立ち上がってくれるのを少しは期待したいと思います。

 

「国内初 ペルーで確認「ラムダ株」羽田空港」

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210806/k10013186021000.html

 

最近、まだ正体がつかめないデルタ株につづいて、ラムダ株というのが日本に

入ろうと狙っていうそうです。

 

「国立感染症研究所によりますと、ラムダ株は去年8月にペルーで最初に報告されて以降、南米を中心に感染が広がり、WHO=世界保健機関が「注目すべき変異株」に分類しています。

一方、国立感染症研究所は「感染力やワクチンへの抵抗力が従来のウイルスより強い可能性はあるものの、データが限られている」として、現時点では「注目すべき変異株」に位置づけていません。

 

厚生労働省は、ラムダ株について「情報が限られているため、現時点では評価が難しい。引き続きWHOや各国政府、専門家と情報を共有しながら監視体制を強化していきたい」としています。」

 

・・・・・

 






この本を読みながら、関連する情報をインターネットで検索しながら勉強して

きました。 いままで取っ散らかっていた情報が私の頭の中で少しはまとまって

きたように思います。

今後も、大きな変化があると思いますので、注意深く見て行きたいと思います。

  

==== 完 ====

黒木登志夫著「新型コロナの科学」を読む ― 6(続報) ファクターXは HLAーA24で決定? (sasetamotsubaguio.blogspot.com)








 

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