村上和雄著「コロナの暗号」を読む ― 2 祈りで免疫強化? 村上vsドーキンス
村上和雄著「コロナの暗号」を読む ― 2 祈りで免疫強化? 村上vsドーキンス
村上和雄著「コロナの暗号: 人間はどこまで生存可能か?」を読んでいます。
p056
むしろ世界的に若い世代の人たち、たとえば国連でスピーチをしたグレタ・トゥーンベリ
さんのような人たちが、グローバルな視点で地球のことや環境のことを考えて行動し、
発信する姿に希望を感じます。
p059
医療・介護、小売り、清掃、郵便・宅配、保育など、人間が社会生活を維持する上で必要
不可欠な仕事に従事する人たちの献身が際立ちました。
これらの仕事は、感染の危険の中でも、人々の生命と生活を守るために欠かせない仕事
であり、一日の休みも許されません。 このような利他を体現した人々の働きのおかげで、
私たちは生き延びることができているのです。
==>> ここでは、将来の人類の環境を守るために活動している人たち、そして、
現在の危機の中で我々の生活を支えている人たちのことが語られています。
私は戦後の高度経済成長の時代に育ってきて、今や老い先短い高齢者になって
いますので、今の若い人たちに後ろめたい気持ちも抱きながら消えていく
運命であるようです。
私が生きている間に、日本でも、何か抜本的は人類にとって希望になるような
政策が大胆に取られるのを見てみたいものだと思っています。
p064
同じような規模の津波は、江戸時代にもありました。 ということは、予知ができなく
ても起こる可能性が十二分にあることは分かっていたということです。
・・・それは、他分野の専門家と協力し、大地震を想定して「どんな防災の設備を
つくればいいのか」「避難の手順はどうすべきか」ということまで考えぬくことでした。
原発事故でも同じです。
新型コロナウイルス感染症に関しても、「想定外」の発生で仕方ないと片づけるのでは
なく、不測の事態に備えて少しでも「想定内」にする努力が必要でした。
もちろん、すべてが科学者の責任であるなどと言うつもりはありませんが・・・・
そして、政治や教育、経済活動といった分野にわたって、科学がその基礎となるような
仕組みをつくるべきではないでしょうか。
==>> この部分についても、一般論としては十分に理解できます。
そうあって欲しいと思います。
しかし、おそらくこういう問題は、政治家が率先してリードすべき課題では
ないかと思います。
仕組み作りは政治家の仕事だと思うからです。
その意味で、付け足しで言うならば、日本学術会議の独立問題やら専門家会議
の格下げ問題などにも、政治家側の問題があるのではないかと感じます。
政治家が科学者、専門家をリスペクトしない風潮には日本の未来はないと思い
ます。
p070
私は生命科学の研究を50年間やっています。 命の本質を求めて遺伝子を解読する
ところまで漕ぎ着けました。その過程でたくさんの発見がありました。
それが人類のモラルという視点からの検証を経ずに、すぐに技術と結びついてしまう
シーンもまた数多く見てきました。 これは人類の将来を危うくします。
==>> この著者が他にどのような本を出版したのかをチェックしてみたの
ですが、その中の一冊「生命の暗号」の中で、著者は「科学と宗教は同根である」
と書いているそうです。また、「プラスの発想は良い遺伝子をONにし、悪い
遺伝子をOFFする」といのが著者の主張であるようです。
養生訓、人生訓、自己啓発、人生指南・・・みたいなものらしい。
実は、この著者の生命科学者として研究成果を書いたような一般向けの本を
もう一冊読んでみようかなと思ったのですが、どうも私が読みたい系の
科学的内容ではなく、この本と似たような傾向の本ばかりなので、
もう一冊買うのは止めました。
p072
日本では基礎研究を担う大学に行き渡る研究費が、2016年にドイツに抜かれて
世界4位に落ち、基礎科学の研究者に育つ修士号や博士号取得者数も、人口あたりの
数値が主要国で唯一減少するというありさまです。
京大の中山伸弥教授が世界に先駆けて開発したiPS細胞の研究でも、実用化以前に、
どのようにして個体は発生するのかという科学者の疑問がありました。
・・・しかし世間では、そういう科学の意義よりも、iPS細胞はどんな臓器や組織
にもなれる万能細胞で、難病治療にも繋がるといった技術的なことのほうが分かりやすく、
またそのことばかりが強調されます。
==>> このような日本の科学界の地盤沈下に関する報道を最近よく見かけるように
なりました。 日本では十分な研究ができないから、海外に出てしまう
研究者も増えているらしい。そして、今後はノーベル賞をもらえる日本人は
いなくなるのではないかとも危惧されています。
ここでもやはり、政治家が日本の将来をどうしたいのかが問題の根源に
あるように見えます。
p080
利根川氏らは、リンパ球の中の抗体を作り出す遺伝子が組み変って多種多様な抗体を
つくり出していることを解明しました。 ・・・そのおかげで、私たち人間は、遺伝子
の数をはるかに超える種類の病原体に対抗して生きていけるのです。
この仕組みは、脊椎動物に備わって進化し、このことが哺乳類を含めた脊椎動物が
感染症から逃れて長生きし、地球上で反映している理由になっています。
==>> これはおそらくB細胞のことを述べていると思えますので、下のサイトで
チェックします。
https://www.kango-roo.com/word/10684
「B細胞(びーさいぼう、B-cell)とは、T細胞と同じリンパ球の一種で、
免疫機構を担う重要な細胞である。B細胞はリンパ球の約20~40%を占め、
骨髄(Bone marrow)で産生され骨髄内で分化、成熟する。Bone marrowの
頭文字をとってB細胞と呼ばれる。
B細胞は分化の過程で遺伝子の再構成を行い多様なB細胞に分化する。1つの
B細胞は1種類の抗体しか産生できないが、抗体遺伝子の組み合わせを変化させ
ることで多様なB細胞に分化し、多様な病原体に対する抗体を産生すること
ができるようになる。」
ところで、最近みたNHKの「サイエンス・ゼロ」でワクチンの話が出て
いました。 従来型のインフルエンザワクチンは有効率が60%程度ですが、
これは従来型の製法で作られているためB細胞に作用して抗体をつくるだけに
終わってしまう。 一方で、今回初めて新型コロナウイルス向けに採用された
mRNAワクチンは、B細胞で抗体をつくると同時に他の免疫細胞である
キラーT細胞などにも指令を届けるので、有効性が95%前後になったものと
考えられているそうです。
従って、今後は、おそらくインフルエンザワクチンもmRNAワクチンに
置き換えられていくのではないかとの話でした。
p083
私たちは生きる力を自分の中に備えています。 大事なことは、未来は自分自身で描ける
ということを常に忘れず、「こころ」と免疫、そして身体は繋がっていると信じることなの
ではないでしょうか。 そうすることで、いわば「こころの免疫力」が働き、眠っている
よい遺伝子をONにすることができるのだと思います。
この遺伝子ONの典型的な実例として、ある女性の奇跡的な体験があります。
・・・「すると私の意識がどんどん膨らんで、いつのまにか地球を飛び出して宇宙から
地球を見ていたんです」と語ります。
==>> さて、この辺りから、この著者の言いたいことがどんどん出てきます。
私自身は奇跡的な話にはあまり興味がありませんので、興味のある方は
この本を手に取ってお読みください。
上記の女性の体験談の「地球を飛び出して宇宙から地球を見ていた・・」
という部分については、私が真言宗のお寺でやっている瞑想会(阿字観会)
でやっているイメージとほぼ同じです。
p093
アメリカでは祈りの効果をみる実験が多く行われました。その中のひとつに、サンフラン
シスコの総合病院で行われたものがあります。 心臓病集中病棟の患者393名の協力
を得て、祈られるグループと祈られないグループにランダムに分け、祈りの有無以外は
すべて同じ高度な治療を受けました。結果は祈られたグループが祈られなかったグループ
に比べて予後が良かったというものでした。
==>> この記述には正直驚きました。
実は、このような実験が実施されたという話をドーキンスさんの本で
読んでいました。 しかし、その内容はまったく逆です。
「リチャード・ドーキンス著「神は妄想である」」
http://baguio.cocolog-nifty.com/nihongo/2021/03/post-a3a824.html
「p98
2006年4月発行の<アメリカ心臓病雑誌>に報告された結果は、
一目瞭然だった。 祈ってもらった患者と祈ってもらわなかった患者
のあいだに差はなかった。 驚いたことに、自分が祈られている
ことを何等かの方法で知っていた人間と知らなかった人間のあいだ
では差があった。 しかし、この結果は或る意味、期待もしなかった
ものであった。 というのは自分が祈りの受益者であると知っていた
人間のほうが、知らなかった人間よりも厄介な事態により多く苦しめ
られたのである。
・・・「お祈りチームを呼ばなければならないほど私は重い病気なの
だろうかと、不安がらせてしまったのかもしれない」・・・」
・・・ちなみに、wikipediaによれば、著者の村上氏は天理教の信者であり、
「サムシング・グレートが天理教の「親神様」のことを指していることを認め
ている。」と書いてありますので、「神は妄想である」の著者であるドーキンス
さんとは真逆であることは道理かもしれません。
p094
私も真言宗の僧侶にご協力いただいて、祈りがどのような影響を及ぼすのかを調べる
実験を行いました。 その結果、日々の行(瞑想や祈り)によって他者への共感や
慈悲の心を育むことは、免疫機能の強化にも何らかの影響を及ぼすことが分かりました。
・・・そしてそのメカニズムには、心よりも深い「魂」と呼ばれるものが関わっている
のかもしれないと私は考えているのです。
==>> おお、私が準檀家になった真言宗ではないですか。
おまけに私は月に一回ですが、その瞑想会に参加しています。
きっと良い影響があると思います。
それは、ともかく、ここまで書くんだから、どのような実験をして、
どのような根拠で、どのような結果となったかも書いて欲しいです。
はっきり言えば、生命科学者が宗教に逃げるなんてずるいよなあ。
私がこの本の内容は「喰い足りない」というのはこういうところです。
p108
もちろん、バイオテクノロジーが食糧問題や医療、生物学の進歩に貢献することは
明らかです。 ですから、それをやめることはできないでしょう。 ただ知っておかなけ
ればならないことは、科学の進歩は善悪とは別の次元にあり、科学的な意識を人間が
持っている限り、絶対ストップできないということです。
・・・人間がこの問題をどのように解決するのかは宗教や哲学にとっても非常に重大な
問題です。
==>> これについては、「サピエンス全史」や「ホモ・デウス」を書いたハラリ氏が
警告しているものに通じます。 ハラリ氏の場合はもっと現実的に我々が
どのような未来を作るのかはどのような政治体制を我々が選ぶかにかかって
いると述べています。
== その3 に続きます ==
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