村上和雄著「コロナの暗号」を読む ― 1 「コロナ」に騙されて買った本、 ONとかOFFってなに??
村上和雄著「コロナの暗号」を読む ― 1 「コロナ」に騙されて買った本、 ONとかOFFってなに??
村上和雄著「コロナの暗号: 人間はどこまで生存可能か?」を読んでいます。
この本を買って失敗したと思ったのが私の感想です。
なぜ失敗したと思ったのか、その理由をグダグダと書いていきたいと思います。
まず、この本のタイトルに「コロナ」と書いてあったこと、著者が筑波大学の
生命科学者であるということで、この生命科学の分野で新型コロナウイルス感染症
がどのように見られているのかが分るのではないかという単純な理由で買ってしまった
のです。
また、「コロナ禍も東日本大震災も、想定外ではすまされない」という宣伝文句にも
惹かれました。
しかし、私はその「暗号」に騙されていたってことです。
一言でいうならば、この本は科学の本ではなく、スピリチュアル系の本であり、
言い換えれば宗教入門みたいな本でした。
かと言って、この本を全面的に否定するわけではありません。
私は宗教も好きなんです。
では、さっそく読んでいきましょう。
===
p011
このままでは地球は取返しのつかない状態になってしまう。 平成に入るより前から、
すでに世界中で警告されていました。 1962年に著されたレイチェル・カーソンの
「沈黙の春」・・・は、生態系の破壊を世に訴えました。 あれから半世紀、事態は悪化
の一途をたどっています。
p014
「人新世」とは人類が地球を破壊する時代
p015
クルッツェンが提唱したのは、人類の経済活動が地質学的なレベルの影響を与えている
時代として、現代を「アントロポセン」(人類の新しい世)、日本語では「人新世」(ひと
しんせい)または「じんしんせい」)という呼び名で区分けするものでした。
「アントロポス」はギリシャ語で「人間存在」、「セン」は新しい地質時代を表します。
地球と人間の関係が、人間の営みの影響でそれ以前の時代とは大きく変わってしまったと
いうのです。
==>> 著者に主旨はおそらくこの「人新世」という言葉で代表されているのだと
思います。 つまり、このままで人類は生存できるのかという危機感から
この本が書かれたものかと思います。
p016
こういった危機を引き起こすのは、これまで、地殻変動や火山活動、巨大隕石の衝突
などの自然災害でした。 一方でいま進行しているのは、森林破壊や化学物質の使用、
乱獲など人間活動が主因です。 しかも、かつてないほどの速度で進んでいます。
生物が地球上から消える速度は、恐竜時代には約1000年に一種と推定されていました。
ところが・・・・1975~2000年には13分に一種、と絶滅のスピードがどんどん
速まっています。
p017
まさにかつてなかった新しい危機であり、人類が、「利己的な遺伝子」に突き動かされ
愚かな生物であることを証明しているかのようでもあります。
しかし、私は長年の研究から、遺伝子には「利己的」なものと「利他的」なものの両方
があると考えてきました。
==>> 人間活動が環境を破壊していて、他の種を絶滅に追い込んでいるという
のは、いろんな情報から仕入れていますので、それは分かります。
ただ、後半に書いてある「利己的な遺伝子」というリチャード・ドーキンス
さんの遺伝子に関する定義について、この著者は「利己的」なものと
「利他的」なものとに分けて考えると言っていますが、どうも私には
次元の違う話ではないかと思えます。
なぜかと言えば、ドーキンスの「利己的な遺伝子」というのは、その遺伝子
自身にとって生き残っていける可能性のためなら、人間の利己的とか
利他的といかいう価値観を超えたところで、自分の遺伝子を残すための
あらゆる進化の道を選んでいくものだと思うからです。
p019
環境問題を語るとき、「地球に優しい」という言葉がありますが、これはとても傲慢な
言葉だと私は思います。 人間のほうが地球に守られて生きているわけですから、
「地球に優しい」ではなく「地球が優しい」のです。
==>> これはまったく正しい認識だと思います。
「地球に優しく」する活動は、人類自身を守るために「地球の人類に対する
優しさ」を破壊しないためであって、人類の為であるからです。
p023
これだけ精巧な生命の設計図を、いったい誰が、どのようにして書いたのか。
ヒトの遺伝子暗号は約32億の文字からなっています。 1ページ1000字で、
1000ページの大百科事典が3200冊にもなるような膨大な情報量です。
p024
それを人体にある37兆個の細胞の核の中、1グラムの2000億分の1という途方も
なく狭い空間に書き込み、一刻の休みもなく働かせている。
・・・そこで私は、人知を超える精巧を極めた仕組みを作った偉大な存在があるのでは
ないか、という思いに至りました。
==>> さて、ここが問題です。私がまず残念だと思ったのはここです。
生命科学者である著者が、その専門分野で、「仕組みを作った偉大な存在」
あるいは「サムシング・グレート」の存在を世に訴えるというのは
もうこれは宗教ではないかと感じるからです。
「なんだかすごい存在」というのなら、子どもにでも分かります。
大人の専門の科学者がそれを言ったらお終いよという感じがするのです。
せめてアインシュタインのように、「自然法則が神であり、それを解き明かす
ことが科学者の役目である」と言って欲しいわけです。
「アインシュタインが信じた「神」とは?」
https://christianpress.jp/n210314/
p026
世界の学者の全知識を集結しても、世界の富を集めて研究しても、大腸菌一つ人間の力
では元からつくることはできません。
元からではなく、コピーならいくらでも作製可能です。
==>> 私は科学者の態度としては、下のリンクにあるようなものが科学者ではないか
と思います。
「世界中の研究者が挑戦している、人工的に生命を創り出す試み。」
https://www.rikkyo.ac.jp/research/story/mknpps00000081nw.html
「まずは何をもって「生命ができた」というかが問題となる。
末次先生は、「自己増殖し、その過程で進化していくもの」を生命と呼んでいる。
地球外生命を探査しているアメリカのNASAと同じ定義だ。」
もちろん、人類にそんなことが許されるのかというような宗教的、倫理的な話は
また別の話です。
p036
数々の治験を経て接種がはじまりましたが、ワクチンの安全性が完全に確認されている
わけではありません。 たとえばmRNA型のワクチンはいままで人類において使用
されたことがないので、情報開示が必要であるとともに、監視や強制があってはならない
でしょう。
まとめ: mRNA型ワクチンは、いままで人類に未使用。
一年後、五年後の安全性をどう考えるか?
==>> ここでは、今現に接種されているワクチン接種に関するコメントがあります。
しかし、私自身の感想は、これは科学者のコメントとしてはなんとも無責任
なコメントではないかということです。
ところで、この著者・村上氏は2021年4月に亡くなられています。
この本は、著者が亡くなった後にまとめられた「遺言」という位置づけで
出版されていますので、ご本人のさまざまな短い文章をまとめたような
構成になっていて、章ごとの文章は2~3ページしかありませんから、
紙面の都合もあったのかもしれませんが、未使用だから、五年後はという
ような漠然とした不安要因を書くだけでは不親切であろうと思います。
生命科学者として、どのように問題があるのかをもっと論理的に示して
もらいたいという希望です。
つまり、内容が喰い足りないという感じです。
ちなみに、このmRNAワクチンの開発の話は、NHKの番組でも紹介
されていましたが、下のようなサイトで解説がされています。
「「急造ではない」ファイザー社の新型コロナ「mRNAワクチン」のよくある誤解」
https://www.businessinsider.jp/post-230148
「mRNAワクチンは新しいタイプのワクチンで、急ピッチで仕立て上げたもの
と思われているかもしれない。しかし、実際には、何年も前から研究開発が進め
られており、ようやく日の目を見ることができた技術、という表現が正しい。」
・・・・ワクチンの接種が始まったのは2021年になってからのことで、
著者が亡くなったのが2021年の4月、この本が出版されたのが7月です
から、世界における接種の結果を十分に見ることもなく出版されたのかも
しれませんが、いずれにせよ、科学者が書く内容としては物足りません。
p040
ここで考えてみていただきたいのです。
私たち人間がこの地球で存続するために地球環境を綺麗にすることが、自らの肺胞
細胞を生きやすくし、結果的に肺を守ることに繋がることを、そして免疫力を強化
することで、自ら治癒できる可能性を広げることを。
もしかしたらこの新型コロナウイルスは、より強い人類への新たな進化を促すもの
かもしれません。
==>> 私は愛煙家なので、ここでは静かにしておくほかはありません。
免疫力に関しては、今は「免疫力を上げる」という宣伝文句が巷に溢れて
いることが、本当にそうなのか・・という疑念はもっています。
ある本によれば、免疫力にも限界があって、なんらかの理由で下がっている
免疫力をその限界まで上げることはできるが、それ以上には上げられないと
書いてありました。
それはそうだろうと思います。
私の場合ならば、喫煙で下がっている免疫力を、煙草を止めることで元の
健全なレベルに戻すことはできるのでしょう。
「もしかしたら」以下の文については、先に読んだ「ネオウイルス学」の
本にも書かれているように、ウイルスの「潜伏感染」とか「内在性ウイルス」
とか「持続感染」とかいわれる形で、ウイルスの遺伝子が人体に取り込まれる
ことによって人体の新たな進化に寄与するものがあるかもしれないという
ことは想像ができます。
そういうところまで少しは立ち入った説明が欲しかった。
p041
未知の感染症の伝播という事態は、国や民族を超えた人類全体の大きな節目になる出来事
であり、地球規模の協力体制が整わなければ対応できないということです。
p042
ジャック・アタリは、こうした世界的な危機状況を受け、改めて利他主義への転換を
広く呼び掛けています。
・・・「・・・利他主義という理想への転換こそが人類サバイバルのカギである」と
言っています。
このピンチは何よりも一人ひとりの意識を変えることにやって可能になると強く
信じています。
・・・「精神的な満足」を与える商品やサービスの開発や、自然と調和する経済活動
の可能性を考えるべきでしょう。
==>> この部分については、確かにそうだと思います。
しかし、一般論としては理解できても、「精神的な満足」を与えるものとは
具体的になにを意味しているのかが分かりません。
宗教的なサービスと言うこともできるわけですから・・・・
p044
アタリは、共感や利他主義が人類を救うカギになると言います。
「利他主義は合理的利己主義にほかなりません。 自らが感染の脅威にさらされない
ためには他人の感染を確実に防ぐ必要があるからです。 利他的であることは、ひいては
自分の利益となるのです。 また、他の国々が感染していないことも自国の利益になります」
と述べています。
p045
ダライ・ラマ法王も、「他の人を思いやるということが自分の幸せをもたらすと理解して
自分のことをケアしていくというのが、賢い者の利己主義」だと言いました。
いま私たちにできることは、まずは自分自身の免疫力を上げることです。 そのためにも
心配や恐怖という感情に支配されてしまわないことが大切です。
==>> こういう意味の利他主義ということであれば、具体的にはワクチン接種を
自らのリスクを超えて行うということになりはしないかと思います。
集団免疫には二通りのやり方があるそうで、ひとつは自然のままにその
病気に感染して生き残って免疫を得る方法、そしてもうひとつはワクチンで
人工的に免疫を得る方法です。
どちらの方法でも、生き残った人は、免疫の限界を新たに超える免疫が
できて、免疫力を上げることになります。
自然に感染して死ぬのではないかという心配や恐怖は、ワクチンを接種する
ことで回避することができます。
私自身も、接種が終わって、抗体が出来ていることを確認できたので、
精神的にかなり楽になりました。
p051
遺伝子は外からの刺激である「環境」によってコントロールされているということでも
あります。 遺伝子は、情報そのものを自ら書き換えることはできませんが、外からの
刺激によってスイッチをONにしたりOFFにしたりすることで、生体をコントロール
しているということです。
その環境には、物理的なものや化学的なものだけでなく、思い、喜び、笑い、悲しみ、
言葉、習慣など、精神的なものや感情的なもの、文化的なものすべて含まれます。
・・・つまり、理想的な自分であるための秘訣は、できるだけ生き生きとした前向き
な心の状態「プラス思考」で生きることです。
==>> この部分を読んでいた、私はますますフラストレーションが溜まりました。
そのONとかOFFとかいうのは何なのという疑問です。
その科学的な説明は書いてありません。
そして、いきなり「プラス思考」という言葉に繋がっています。
私も、過去にいろいろ見聞きしたことで、例えば落語を聞いて笑えば、
なんとかというホルモンが出て、健康に良いとかいう話は知っています。
しかし、この生命科学者が書いている本が単なる「養生訓」になってしまって
いるのが、なんとも残念です。
ちなみに、先に読んだ本で、このONとOFFと思われる話を見つけました。
https://sasetamotsubaguio.blogspot.com/2021/08/blog-post_22.html
「p43
米国のグループからは、ウイルスが感染していると植物の乾燥耐性が強まる、
という報告がなされています。 ・・・・ウイルスが感染している植物は乾燥
に強く、多少しおれても生命を保ち続けるというのです。
英国のグループからは、ウイルスが感染した植物にはミツバチが多く集まり、
受粉率が高まるという報告がありました。
植物ウイルスは病気を起こすだけではなく、植物に有益な働きもしているの
です。
p46
これまでの私たちの研究では、ウイルスの感染によって、植物ゲノムの塩基
は変えずにゲノムの遺伝子発現を調整する働きがあることがわかってきました。
遺伝子の中にはタンパク質を合成してアクティブな状態にあるものと、活動せ
ずに寝ているものとがあります。
ところがウイルスが感染すると、遺伝子の発現を調節しているDNA領域に
脱メチル化という変化が生じ、遺伝子の発現スイッチを入れたり消したりします。
たとえばウイルスに感染した植物が水分不足の環境にさらされた時、それまで
寝ていた「乾燥から身を守る」遺伝子を目覚めさせ、それを働かせて乾燥耐性
をつくるのではないか。」
・・・要するに、ONとOFFという現象が、科学的にはどういうものとして
人体の中で起こっているのか、その説明が欲しいのです。
== その2 に続きます ==
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