河岡義裕編「ネオウイルス学」を読む ― 1 ウイルスは生物ではない? ウイルスで作られた人体

 

河岡義裕編「ネオウイルス学」を読む ― 1 ウイルスは生物ではない? ウイルスで作られた人体

 

 



河岡義裕編「ネオウイルス学」を読んでいます。

 

 

先に読んだ黒木登志夫著「新型コロナの科学」の中で紹介されていた河岡義裕氏について、

感想文に下のように書きました。

 

「河岡義裕氏の本はたくさんあるようですが、「ネオウイルス学」という本を

読んでみることにしました。 新しいウイルス学ですね。

「研究者20名が解説!

新型コロナパンデミックで注目されるウイルス学の新領域

ウイルスと生命、共生と進化の未来を探る!」」

 

NHKの「ヒューマニエンス」という番組の中でも、あるいは他の本などでも、

ウイルスの病原体としての一面だけではなく、人類の進化にも寄与しているとの

話がありましたので、その辺りがなにか分からないかと期待して読んでみます。

 

 


=====

 

p3

 

現在、地球上には870万種の生物が存在していると推定され、その多様な生物種は、

「古細菌」「真正細菌」「真核生物」という三つのグループに大別されています。

見慣れない分け方かもしれませんが、これは遺伝の仕組みや生物学的な性質による

分類です。・・・「古細菌」とは高温環境や高濃度塩分環境など極限状況下で生存

する微生物、・・・・・

 

p4

 

ウイルスは、生物の最小単位である細胞を持たないため、生物学上の三つの

グループには属していません。

 

==>> 生物の分類の話が出て来たので、こちらのサイトで復習します。

     https://ameblo.jp/mizuno20070324/entry-12465179987.html

     「生物の分類(五界説)」の表が、この本の3つの分類を表しています。

     ただし、上記のとおり、ウイルスは生物ではないという扱いになっています。

 

     さて、問題はウイルスは生物じゃないのかという点です。

     そこでググってみたところ、生命の定義について書いてあるサイトをみつけ

     ました。 一応どこかの助教の方が書いているみたいです。

     http://xn--ols97e46f0m4a7qr.xyz/2016/03/11/post-182/

     「生命、3つの定義

1、外界と自己を隔てる膜を有している

2、自己と遺伝的に類似した子孫を残せる(=自己複製能力を有する)

3、代謝による生命維持機能を有する」

 

ウイルスは代謝機能をもたず、他の「生命」にとりついて「自己複製」を行

います。さらに、ウイルスはタンパク質の薄い膜と遺伝情報だけで構成されて

いて、「生命」を構成する基本単位のはずの細胞をもたない異様な存在です。

よって、ウイルスは「生命ではない」と考えられています。」

・・・というのが現在の学問での結論であるようです。

 

他のサイトでいろいろ探してみましたが、下手に生物だとか非生物だとか

言ってしまうと、最近の高度に発達したロボットのようなものとの明確な

線引きが出来なくなるというジレンマもあるようです。

 

p5

 

ネオウイルス学の領域では、すでにさまざまな報告がなされています。

たとえば、生物のゲノム(遺伝子の総体)の中にウイルス由来のゲノムが含まれて

いることです。 ヒトも例外ではありません。 はるか昔、体内に寄生したウイルスの

ゲノムが、そのまま私たち人類の遺伝子に組み込まれ、胎盤の形成やウイルス感染を

防御する役割を果たしています。

 

==>> 人類などの胎盤の形成については「ヒューマニエンス」でも詳しく解説

     されていました。 ウイルス感染を防御する話は後ほど出て来ます。

ともあれ、ウイルスは人類にとってなくてはならない存在であったし、

今後もそのようにして進化していくということです。

 

p30

 

「ヘルペスウイルスが潜伏感染していると、細菌に感染しにくくなる」というのが

その論文内容でした。 なぜこういう現象が起きるのか、そのメカニズムはまだ解明

にいたっていませんが、宿主を細菌に感染しにくくするとは、とびきりの「善玉」だと

おもいませんか?

 

p31

 

近年、腸内細菌叢の研究が進み、細菌ごとに特定の病気を抑制する効果や、免疫調整

の役割があることなどが明らかになってきました。

 

・・・単純ヘルペスウイルスの潜伏が、ある特定の病気と関係することがわかり・・・

 

==>> ヘルペスという病気についてはよく耳にするものですが、

     どんな病気なのかをここで確認しておきます。

     https://www.health.ne.jp/library/detail?slug=hcl_3000_w3000827

     「「ヘルペス」は、「ヘルペスウイルス」というウイルスが皮膚や粘膜に感染して、

水ぶくれができる病気のこと。これだけ聞くと、なんだか少し怖い気もしますが、

実はヘルペスウイルスはごく一般的なウイルスです。くちびるのまわりに

水ぶくれができる口唇ヘルペスの場合、2012年には、世界人口の67%が

ウイルスに感染していたというデータ もあるほどです。しかし、そのほとんど

は症状がなく、大半が感染していることに気付いていません。」

 

「例えば「帯状疱疹」は、子供の頃にかかった水ぼうそうのウイルスが長い間

体内に隠れていた後、突然暴れだしてしまう病気です。

ただ、一口に「ヘルペス」といっても症状はいろいろあります。ヘルペス

ウイルスはいくつかの種類があり、それによって引き起こされる病気も

違ってきます。」

 

腸内フローラ(腸内細菌叢)は、細菌の流行語みたいなものですが、

人体の細胞の数よりも多い細菌が我々の身体に勝手に潜伏していて、

勝手に良いことをやったり、悪いことをやったりしているようです。

ウイルスもそういう感じみたいです。

細菌やウイルスにとってみれば、つい最近まで人類は「いつでもどうぞ

お入りください」って言っていたのに、ワクチンみたいなものを作り

出して、玄関先で追い払うようなことを始めたってことになりそうです。

 

 

p35

 

パンデミックはある時、突然やってきますが、それがどんなウイルスによるものか

わかりません。 研究者が少ないマイナーなウイルスが、突如ヒトを死に追いやる

パンデミックウイルスに変異したり、それに近縁なパンデミックウイルスが突然

出現するかもしれないのです。

 

 

・・・それに備えるためには、さまざまなウイルスを持続的に研究し、ウイルス研究

の底上げをしておくことが急務だと思います。

新型コロナで経済も生活の質も深刻なダメージを被ったことを思えば、ウイルス

パンデミック対策は国策であり、国防にも匹敵するはずです。

 

==>> これはまさに現在進行形で、デルタ株の蔓延によって、昨年よりも

     各段に日本はダメージを受けそうな状況になってきました。

     関東地方だけでも、8月19日現在で6万人ぐらいの自宅待機を余儀なく

     されている感染者たちがいて、入院が出来なくなっています。

     紛れもなく災害であり、国防という意味でも重要だと感じます。

 

     「「苦しい助けて・・」息子の電話 入院まで1週間 母が感じたこと」

     https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210819/k10013212121000.html?fbclid=IwAR3NGhtZ9r6H5EOBv--OgffppRUym7EGffdipYGk28WdpOCUk8jeGah4LYg

 

     

 

p38

 

孝謙天皇が詠まれた歌で、「この里は 年じゅう霜が降りるのだろうか。夏の野で

私の見た草は色づいていた」という内容です。

 

ここでの「草」はヒヨドリバナとされ、のちの研究でその葉が夏から黄色く色づい

ていたのは、ジェミニウイルスに感染したためだと解明されました。

「万葉集」が編まれたのは奈良時代末で、世界的にもこの歌が最古の植物ウイルス

の記録とされています。

 

p39

 

17世紀になると、イラン原産のチューリップがオランダで一大ブームを巻き起こし

ますが、中でも珍重されたのは、花弁に斑が入ったチューリップでした。

・・・実は、・・・花弁の「斑」は、ウイルスが起こした病変です。

・・・このウイルスはチューリップモザイクウイルスと名付けられました。

 

==>> 植物本人にとって、それが病気と認識されるのかどうか分かりませんが、

     それを愛でる人類にとっては美しいものだったんですね。

     これが人間だったら、病気でうなっている人を「美しい」と言っている

     ようなものかもしれません。

 

 

p41

 

「鏡の国のアリス」に出てくる「赤の女王仮説」のようです。

「一つの場所に留まっているためには全力で走らねばならない」というのが赤の女王

仮説で、植物とウイルス、あるいは動物とウイルスも、常に変化しながら感染と防御

を繰り返しています。・・・・ある時点でどちらかが勝ったように見えても、結局は

バランスが保たれていくのです。

 

==>> 感染症による災いが人類史上どんなサイクルでやってきたのかは知りませんが、

     人体の進化の中にウイルスによる痕跡が認められるということは、

     そして人類が今も生存しているということは、そのバランスが

     保たれている証拠と言えそうです。おそらくそこには多くの犠牲も

     あったのでしょう。

 

p43

 

米国のグループからは、ウイルスが感染していると植物の乾燥耐性が強まる、という

報告がなされています。 ・・・・ウイルスが感染している植物は乾燥に強く、

多少しおれても生命を保ち続けるというのです。

 

英国のグループからは、ウイルスが感染した植物にはミツバチが多く集まり、受粉率

が高まるという報告がありました。

植物ウイルスは病気を起こすだけではなく、植物に有益な働きもしているのです。

 

==>> つまり、植物にとっての環境変化があると、その変化に応じるように

     ウイルスがなんらかの支援をしてくれるということなのでしょうか。

     もしそうだとしたら、ヒトにとっての気候変動という難題に対応するために

     ウイルスがパンデミックを通じてなんらかの支援をしてくれているって

     ・・・・単なる妄想です・・・・・

 

 

p46

 

これまでの私たちの研究では、ウイルスの感染によって、植物ゲノムの塩基配列は

変えずにゲノムの遺伝子発現を調整する働きがあることがわかってきました。

遺伝子の中にはタンパク質を合成してアクティブな状態にあるものと、活動せずに

寝ているものとがあります

 

ところがウイルスが感染すると、遺伝子の発現を調節しているDNA領域に

脱メチル化という変化が生じ、遺伝子の発現スイッチを入れたり消したりします

たとえばウイルスに感染した植物が水分不足の環境にさらされた時、それまで寝ていた

「乾燥から身を守る」遺伝子を目覚めさせ、それを働かせて乾燥耐性をつくるのでは

ないか。

 

==>> これは非常に面白いですね。

     ヒトのゲノムの場合も、何に役立っているのか分からない塩基配列が

     たくさんあるそうですが、一般の平凡な人間では眠っているような

     遺伝子が、たとえば アインシュタインや、大谷さ~~んや、

     トップアーティストなどのような人たちでは スイッチがオンになって

     いる人たちが多いのかもしれませんね。

     もちろん、そのような大物まではいかなくとも、人それぞれに個性が

     あるということは、オンになっている遺伝子が人それぞれに異なって

     いるということなのでしょう。

     私の場合は、ほとんどがオフになっちまってるようですけど・・・・

 

p48

 

動物と同じように、植物にもウイルスを排除しようとする免疫がありますので、

その機構が分子的にどうなっているのかも研究対象です。

 

実験のデータがまとまったら学会で発表し、それをいくつかセットにして英語の論文

にまとめ、それが評価されると新しいプロジェクトの予算がつく、というサイクルで

研究室が運営されています。

 

==>> 植物における免疫機構・・・・なんだか分らんけど面白そう。

     あれこれ調べてみると、動物と植物の共通祖先みたいなものがあるというのが

     一応の通説になっているらしい。

     Wikipediaによれば、

     「1977年、カール・ウーズらによって原核生物が古細菌および真正細菌から

なることが提唱され、後々の研究から3ドメインの概念は統一的見解が得られ

ているといっても過言ではない。」

・・・ということです。

 

それでふと思い出したんですが、私の子が生まれる前に「母性看護学」という

看護学校で使われていた教科書を読んだんです。

そこには写真だか絵だかが掲載されていまして、人類に到る進化の過程を

思わせるような胎児の成長の様子が描かれていたんです。

そこで私が妄想したことは以下のようなストーリーでした。

 

まず、女性の身体は地球です。 その子宮という大地に種が撒かれる、

その種が根っこをはやし、芽を出し、魚のようになり、トカゲのようになり、

お猿のようになり、そしてそれが木の実のようにポトリと子宮から離れ、

まるで木が根っこを大地から抜いて、足に変化させて歩き出すような。

 

・・・それはともあれ、研究室の運営というのは、なかなか大変そう

ですね。 まずは論文を書いて、発表して、次に英文のレポートに

まとめて、それが評価をされないことには予算がつかない。

なぜ英文レポートじゃないといけないのかがちょっと気になりますが、

世界レベルの研究であるようなウイルス研究でないと意味がないので

しょうね。

 

 

p53

 

インフルエンザウイルスは、もともと野生のカモの体内にいるウイルスで、カモには

まったく病気を起こしません。カモの体内にはいったインフルエンザウイルスは、

静かにカモと共生し、一緒に進化します

 

・・・インフルエンザウイルスを例にとると、自然界の宿主であるカモを絶滅させ、

周囲の環境もすべて変化させなければインフルエンザウイルスを撲滅することは

できません。

 

==>> カモはなぜ病気にならないんでしょうね。

     大古の時代にカモはインフルエンザに罹って苦しんだ末に、そのウイルスを

     体内にとりこんで自分のゲノムの一部に組み入れてしまったんでしょうか?

     もしそういうことが自然に出来たのだとしたら、人類もいずれそのように

     インフルエンザウイルスと一緒に進化するのかもしれませんね。

     

     カモやその周辺の環境を絶滅させるか、それとも人類が絶滅させられるか。

     そこでその両極端をとらず、共生しようという考えが出てくるのでしょう。

     その為には、人類の死亡者が少なくなるような妥協案を作るしかないわけ

     ですね。 それがワクチンあるいは治療薬ということでしょう。

あるいは自然に人類全体に免疫が出来るまで気長に待つ、自然選択に

任せるか・・・・

ただし、免疫が出来るまでの間の犠牲は覚悟しなくちゃいけません。

 

 

p57

 

近年、蚊やマダニのゲノムには、ウイルスに由来するゲノムが含まれていることが

わかってきました。 かつて蚊やマダニに感染したウイルスが、そのまま蚊やマダニ

のゲノムに組み込まれた証です。 これを内在性ウイルスと言いますが、こうした

現象から蚊やマダニとウイルスの関係を調べています。

ウイルスが宿主におよぼすプラス面、また宿主と共存するウイルスの存在意義、ウイルス

と宿主の共進化過程など、私たちはネオウイルス学的な探求もしているのです。

 

==>> ネオウイルス学というのは、従来のウイルス学は、人類に害を及ぼす病原体

     としてのウイルスを研究するものだったようですが、ウイルスというものが

     そもそもどういうものなのかということを幅広く研究するということの

     ようです。

 

 

 

== その2 に続きます ==

 河岡義裕編「ネオウイルス学」を読む ― 2  類人猿に感染した痕跡、ウイルスベクターワクチン (sasetamotsubaguio.blogspot.com)

 

 

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