ノーム・チョムスキー著「誰が世界を支配しているのか?」を読む ― その9 ゴルバチョフの激怒。 「貧乏人から奪う」が米国の信条。
ノーム・チョムスキー著「誰が世界を支配しているのか?」を読む ― その9 ゴルバチョフの激怒。 「貧乏人から奪う」が米国の信条。
ノーム・チョムスキー著 大地舜 神原美奈子 訳
「誰が世界を支配しているのか?」を読んでいます。
「第十三章 誰のための安全保障なのか?」
p230
米国には、学術研究や政府の発表、大衆の議論に共通する、ある「スタンダードな定説」
が存在する。 「政府の主要な仕事は安全保障だ」という定説だ。 さらに1945年
以降の米国とその同盟国にとって主要な関心事はソ連の脅威だったという。
・・・1989年にソ連の脅威が消滅したとき、何が起こったか?
答えは「何も変わらなかった」だ。
P231
米国はすぐにパナマへ侵攻し、数千人を殺害して傀儡政権を擁立した。
・・・
侵攻中の米軍の犯罪を非難する国連安保理の決議に、米国が拒否権を発動したことも
無視された。 英国が棄権した以外は全会一致で採択された決議だ。
すべてはいつものことだ。 そしてすべて忘れられた(それもまた、いつものことだ)。
==>> これらのことは、今現在進行中のロシアのウクライナへの侵攻にダブって
見えて来ます。
元々私は、政治オンチですから、今までにアメリカが世界でどんなことを
やってきたのかは、ベトナム戦争以外は、ほとんど知りませんが、ロシアの動き
に関しては、日本のニュースが報道しますから分かります。
もちろん、日本はアメリカ側にいますから、それは当然でしょうが。
p232
米軍は新たな政策で、「防衛の産業基盤」を維持しなくてはならないと主張した。
「防衛の産業基盤」とはハイテク産業のことだ。 ハイテク企業は研究開発費を国家に
大幅に依存しており、その出所が米国防総省であることが多い。 それでも、多くの
経済学者は米国を「自由市場経済」だと言い続けている。
新たな政策で特に興味深いのは中東関連だ。
・・・50年間ウソをつき続けたあとで、この地域の大きな懸念はロシアではなく、
「過激なナショナリスム」、つまり米国の支配が及ばない国家主義であることを、こっそり
認めたのだ。
==>> アメリカ連邦政府の研究開発費については、文部科学省のサイトに
下のような記述がありました。
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/siryo/attach/1300032.htm
「アメリカ連邦政府の研究開発費1477億ドルのうち、軍事関連は817億ドル
(55.3%)、非軍事は660億ドル(44.7%)であり、我が国とは全く様相が
異なる。しかしながら、オバマ政権下では、非軍事研究への重点投資が行われ
ており、対前年比5.9%増(37億ドル増)となっている。」
また、研究開発費の世界ランキング(2017年)は下のようになっています。
https://theworldict.com/rankings/rd-expenses/
「研究開発費は研究開発活動に対して政府などの行政機関、企業、大学が投入
する費用や資本的支出の総額です。」
アメリカ 543,249(百万USドル)
中国 499,099
日本 170,901
ドイツ 131,339
韓国 90,980
フランス 64,672
インド 49,790
イギリス 49,345
ロシア 41,868
そして、2019年のデータですが、
「世界各国の政府の研究開発予算ランキング」がありました。
https://theworldict.com/rankings/research-and-development-budget/
「政府の研究開発予算:OECD (2019年)」
アメリカ 147,945 (百万USドル) 27%
ドイツ 45,205 34
日本 40,996 24
韓国
22,679 25
フランス 18,453 27
イギリス 17,525 35
ロシア 16,972 40
(右側の%は、2019年の政府支出の数字を上の2017年の総額で
仮に計算した割合です。)
・・・こちらのデータには中国の名前がありませんが、中国の場合は
上記の研究開発費総額が政府の支出と考えてもよいのでしょう。
これで見る限りは、アメリカの政府支出の割合が特段に高いということは
ありませんが、ロシアがちょっと突出しているようです。
さらに、GDPに対する政府支出の割合ランキングを見てみますと、
http://top10.sakura.ne.jp/IBRD-GC-XPN-TOTL-GD-ZS.html
フランス 48.29%
イギリス 44.71%
イスラエル 38.91%
ノルウェー 34.31%
ドイツ 29.15%
世界平均 27.76%
ロシア 26.33%
アメリカ 23.89%
日本 19.39%
カナダ 17.51%
・・・・これを見る限りで言えば、上記に
「ハイテク企業は研究開発費を国家に大幅に依存しており、その出所が米国防
総省であることが多い。 それでも、多くの経済学者は米国を「自由市場経済」
だと言い続けている。」
と書いてあることは、全体的にみれば当たらないかなと思います。
ただし、ハイテク分野での詳細なデータがないと、素人の私にはなんとも
言えません。
それはそれとして、フランスやイギリスが平均値よりもかなり高くて、
アメリカが24%で、日本はさらに少ないというのは驚きました。
単純に理解すれば、日本はかなり効率的にやっているということですよね。
どんなカラクリがあるんでしょうか。
それとも、素直に理解していいのでしょうか。
p233
もう一つの重要な出来事はヨーロッパで起きた。 ソ連のミハイル・ゴルバチョフ大統領
が、東西ドイツの統一とNATO加盟を認めたのだ。 近年の歴史に照らせば驚くべき
譲歩だ。 交換条件として、ブッシュ大統領とジェームズ・ベーカー国務長官は、NATO
を「一インチたりとも東へ」拡大しないと約束した。
東ドイツにすら広げないという意味だ。 だが、NATOはたちまち東ドイツまで拡大
された。
ゴルバチョフは当然ながら激怒した。
・・・これまた、いつものことだ。 米国民や西欧諸国がNATO拡大を黙って受け入れ
承認したのもいつものことだ。 その後、ビル・クリントン大統領がNATOをロシア
国境まで拡大した。 今日、世界が直面している一連の深刻な危機は、これらの政策の
結果なのだ。
==>> 今現在進行中のプーチンの激怒は、ここにそのルーツがあったわけですね。
仮にロシア側に立つとすれば、アメリカはさんざん世界中で金のために
他国に軍事介入をしているのに、嘘つきアメリカの傍若無人な振る舞いに
一矢報いてなにが悪いんだ・・・ってなところでしょうか。
(アメリカの場合は、一応民主主義国家ですから、選挙によって、国民が
軍事介入を是とするか否とするかを左右するわけですが、ロシアの場合は
かなり情報統制が実行されているようですから、ロシア国民としては
公正な判断が難しいように見えます。 もちろん、我々の側もなんらかの
情報操作がされていることはちょっと考えておかないといけませんけど。)
p234
「貧乏人から奪う」が米国の信条
米政府の理解では「最初に恩恵を受ける」のは米国の投資家であるべきで、ラテンアメリカ
はサービスを提供するだけのはずだ。 トルーマンやアイゼンハワーがあきらかにした
とおり、ラテンアメリカの「産業発展は行き過ぎてはならない」のだ。
米国の利益を損なう恐れがあるからだ。
==>> まあ、これは、日本がイケイケの時にさんざん米国に潰された歴史を振り返れば
なるほどなあ~~という感じですね。
「日米貿易摩擦の歴史(前編: 80年代まで)」
https://news.mynavi.jp/article/20170127-a167/
「日米貿易摩擦は、日本から米国への輸出の総額ないし特定品目の金額/数量が
相対的に大きく、逆に米国から日本への輸出の総額ないし特定品目の金額/数量
が小さいことから発生した。」
「60年代後半に日本の繊維輸出が問題となり・・・77年・・には鉄鋼・カラー
TVで日本が対米輸出自主規制を導入・・・80年代・・自動車や農産物(米、
牛肉、オレンジ)の日本の輸入が問題・・・85年・・日米半導体協定の締結
・・・88年・・包括通商競争力法を制定。その中で74年通商法の対外制裁に
関する条項を強化したスーパー301条を導入し、一方的な制裁の発動を可能と
した。・・・89年・・日米構造協議がスタートした。そこでは、日米の貯蓄・
投資パターン(日本の貯蓄過剰、米国の投資過剰)のほか、日本の流通や商慣行、
米国の企業行動や労働訓練などが俎上に上った。この頃が、日米貿易摩擦が最も
激しかった時期だろう。・・・79年に「ジャパン・アズ・ナンバーワン」が日本
の経済的成功を米国への教訓としたのに対して、この頃は日本を経済的な「敵」
とみなして、ジャパン・バッシング(日本叩き)という言葉が流行り・・・」
・・・ということで、日本もさんざん叩かれて、「日本封じ込め」のような
言葉もあったりで、まさに今の米中対決のような状況があったわけですね。
p236
1950年代にはアイゼンハワー大統領とダレス国務長官が、米国が直面する苦悩を
はっきりと説明した。 彼らによれば、共産主義者たちは不公平な強みを持っていた。
「大衆に直接アピール」し「大衆運動をコントロールできる」ことだ。 「われわれには
真似できない。 彼らは貧乏人にアピールし、貧乏人はいつも金持ちから略奪したがって
いる」
確かにこれは問題だ。 米国は、なぜか貧乏人にアピールできない。 米国の信条が、
「金持ちが貧乏人から略奪するべきだ」というものだからだろうか?
==>> いやはや、随分露骨な表現ですねえ。 私も金持ちから略奪したいですねえ。
アメリカの現在の分断も、元はと言えば、おそらく貧富の差が広がり
過ぎたためじゃないかと思います。
すでに日本にも、追随した結果が出てきて、コロナ禍でさらにダメ押しされて
いるような状況のようですが・・・・
ここで、所得格差をジニ係数で確認しておきましょう。
「格差はすなわち社会の不満となり、ジニ係数40%以上は社会騒乱の警戒
ライン、60%以上は危険ラインとされます。ジニ係数が低い国家では、税と社会
保障による所得の再分配が進んでいる傾向がみられます。」
「世界・収入不平等指数ランキング」
http://top10.sakura.ne.jp/CIA-RANK2172R.html
南アフリカ(2005年) 63.1% 63.0
香港(2011年) 53.7%
メキシコ(2008年) 48.3% 43.4
中国(2013年) 47.3% 38.6
シンガポール(2013年) 46.3%
アメリカ(2007年) 45.0% 41.5
フィリピン(2009年) 44.8%
イラン(2006年) 44.5%
ロシア(2012年) 42.0% 37.7
世界平均 39.5%
ブータン 38.7%
日本(2011年) 37.9% 32.1(2008)
インド(2004年) 36.8%
ニュージーランド(1997年)36.2%
台湾(2011年) 34.2%
イギリス(2012年) 32.3% 33.2
韓国(2011年) 31.1% 31.6
EU(2012年) 30.6%
ドイツ(2006年) 27.0%
スウェーデン(2005年) 23.0% 32.3
上記の右側の数字は、若干新しいと思われる数字を、下のサイトの
国連のデータから取って追記しています。
「なお国連のデータは、一部の国(アンゴラ、中央アフリカ共和国、
日本は2008年。エスワティニ、モルディブ、マリ、ナイジェリア、
パプアニューギニア、南スーダン、スーダンは2009年)を除いて2010-2017年
の間の最新年のデータである。」
このデータを見ると、アメリカは中国と肩を並べているんですねえ。
「ジニ係数40%以上は社会騒乱の警戒ライン」だそうですから、
アメリカも中国もロシアも、いろいろあって当たり前な国のようです。
アメリカが共産主義に引きずられているのか、はたまた中国が資本主義に
ひきずられているのか・・・・
まあ、日本が目指すべきは、もちろんEUや北欧の国々でしょうけど・・・
p237
CIAは「“カストロ主義”が大きな影響力を持つのはキューバの軍事力のせいではない・・
・・カストロが大きく不気味な影を落とすのは、ラテンアメリカ全体の社会的・
経済的状況が支配者に対する反発を呼び、急進的な変化を求めさせるからだ」という。
キューバはそうした変化のお手本なのだ。 ケネディは、ソ連の援助によってキューバが
発展の「見本」になることを恐れた。 そうなればラテンアメリカ全体でソ連が優位に
立ってしまうからだ。
==>> 上記のジニ係数でロシアとアメリカを比べると、アメリカの方が格差社会で
あることは明白ですから、その意味においては、「見本」になりそうな
状況はあるわけですね。
私個人としては、まともな生活ができないような国だったら、そりゃあ
もちろん政権に反発するでしょうね。 それが当たり前でしょうから。
共産主義だろうが自由民主主義だろうが主義は置いといて、ちゃんとまともな
生活ができるかどうかで社会の安定は決まるんじゃないでしょうか。
貧乏人から搾取するようじゃあ政権の資格はありません。
無理矢理に情報をコントロールしなくちゃいけないというのも、政権に
とって都合の悪いことが多すぎるということでしょうからね。
p238
キューバは1959年1月に独立するまで事実上の米国植民地で、独立後はずっと米国
によるテロ戦争と経済的締め付けの標的にされている。 これらは特にケネディ時代
に激しかったが、ソ連とはまったく無関係だ。
・・・この主張の真偽が試されたのは、ソ連の脅威が完全に消滅したときだ。 しかし、
驚いたことに米国の対キューバ政策は厳しさを増している。その先鋒は、ビル・クリントン
を含むリベラルな民主党政治家たちだった。
==>> チョムスキーさんのこの本の凄いところは、共和党にも民主党にも与しない
ところでしょうか。 アメリカの二大政党はほとんど同じで、選挙資金に
よって超大金持ちたちに絡めとられてしまっていると手厳しい。
p239
ヘンリー・キッシンジャーは、自立を目指すナショナリズム(国家主義)を「感染を
広げかねない病原体」と呼んだ。 これは米国の外交政策の本質をよく捉えている。
この発言は、チリのサルバドール・アジェンデ政権についてのもので、「病原体」とは
議会政治を通じて社会主義的民主主義が実現可能であるという思想のことだ。
このような脅威に対処するには「病原体」を破壊し、感染のおそれがある者にワクチンを
接種すればいい。 これは具体的には、殺人を得意とする“治安維持”国家を押し付ける
ことで実現されるが、チリはその成功例だ。 ここで重要なのは、この考え方が
今も世界中で採用されていることだ。
・・・独立したベトナムがナショナリズムという「病原体」を撒き散らすのを恐れたのだ。
・・・・それは大日本帝国が第二次世界大戦で目ざしたシナリオだ。
・・・ベトナムは破壊され、軍事独裁政権に取り囲まれた。 「病原体」は封じ込め
られたのだ。
==>> ここでは日本という国の恐ろしさが前提になっているようです。
戦前の日本には国家社会主義的な思想があったようですから、その日本が、
アジアで力を発揮することをアメリカは一番恐れていたということの
ようです。 そして、それは戦後も、経済摩擦という形で、日本を封じ込め
ようとするアメリカの政策として実行されたという見方を、チョムスキーさん
はしているようです。
おそらく、今後も、日本が、アメリカが望まない政治的な動きをした場合には、
中国に続いて、「日本を失う」ことがないように、歯止めをかけてくるという
ことなのでしょう。
それにしても、この文脈から連想するのは、タイやミャンマーの軍事政権
のことです。 裏で糸を引いているのはどこの国なのか・・・・
p240
サウジアラビアは言うまでもなく、きわめて過激なイスラム原理主義国家で、巨額を
投じてワッハーブ・サラフィー主義(厳格なスンニは思想)を国外に拡げている伝道国家
でもある。 米国は昔の英国と同じで、世俗的な国家主義と極度のイスラム原理主義
が対立すると、原理主義側に肩入れする傾向がある。 最近までは、自立を目指す国家主義
のほうが、“感染”の危険が大きいと考えられていたためだ。
==>> 宗教の原理主義という意味では、アメリカはさまざまな宗教の原理主義が
集合した国であるようですから、上記のような選択も納得ができます。
日本に関していえば、日本人は宗教的には淡白で、原理主義的であることは
難しい社会環境ですから、どちらかと言えば、政治家の一部が進めようとして
いるナショナリズムや国家主義のほうに進む可能性が高いように思います。
それは、このチョムスキーさんの文脈でいえばかなり反米的な動きになるの
だろうと思います。
p241
「安全保障」の意味・・・・
国家権力の“安全”を守ることの重要性を示している。
だが、誰から守るのか? 実は政府が一番気にしているのは、国家権力を自国民から
守ることだ。 時間をかけて公文書を漁った経験がある者なら知っているが、政府が
何かを秘密にするとき、理由が“安全保障”上の必要性であることは少ない。
だが国民を闇の中に置いておくためにはおおいに役立つ。
「米国の権力構築者たちは、感じるが見えない勢力を創らなくてはならない。力は
闇の中にある限り強いが、陽光に当たると蒸発しはじめる」
・・・「(軍事介入などの軍事行動を)納得させるために、ソ連と戦っているという間違った
印象をつくるときもある。 トルーマン・ドウトリン以来、米国はずっとそうしてきて
いる」
国家権力は国内の敵から守られる。だが、国民は国家権力から守られていない。
それをはっきり示すのが、オバマ政権が行った大規模な監視プログラムだ。
これは憲法違反だったが、もちろん「国家の安全保障」ということで正当化された。
もっともこれは世界各国で当たり前のように行われている。
==>> 日本には「忖度システム」のような眼に見えないシステムがあって、
官僚であっても、官僚であるからこそ、権力のために自殺に追い込まれた
悲惨なケースもありました。
今も、その妻が、裁判で闘っています。
監視プログラムということで言えば、圧倒的に中国の方が進んでいるの
でしょう。 さまざまな行動・活動を点数化して、個人ごとの評価システム
まで導入されているようですから、それがAIでコントロールされるように
なったら、それこそ恐ろしい管理社会になってしまうのでしょう。
「足跡すべてを政府が把握 中国の監視社会とは」
https://globe.asahi.com/article/13516296
「ある意味、中国はいま、ビッグデータを駆使した「デジタル情報社会」で世界
の先端を走っている。日常生活で現金を使うことはほとんどない。決済はアリ
ババの「アリペイ」とテンセントの「ウィーチャットペイ」に集約。スマホでの
食事やコーヒーの注文、食材の配達、交通機関や携帯電話、インターネットの
利用を通じて、個人の行動範囲や好みなどの情報が集められている。」
「個人情報などを集めたビッグデータは、人工知能(AI)の時代、「産業の
オイル(原油)」とも言われる。中国の14億人のビッグデータを手にしたアリ
ババやセンテントは、世界の中でも特殊な存在だ。個人情報の多目的な利用が
ますます厳しくなっている欧米とは異なり、便利になるならと市民も個人情報
の広範な利用に寛容な傾向もある中国は、独自の発展を遂げている。」
p243
NAFTAなどと同じく、TPPもTTIPも自由貿易協定ではない。 貿易協定ですらない。
主として投資家の権利を守る協定だ。 ここでも秘密主義は、政府が国内の支持層を守る
ために極めて重要だとわかる。 “国内の支持層”とは、つまり大企業だ。
p245
私たちは今、人類史上でもっとも恐ろしい決断を迫られている。
対処すべき問題は多いが、圧倒的に重要なのは環境破壊と核戦争だ。
・・・しかも遠い未来の話ではない。
・・・政策を変えるために行動しなければならない。 そうしなければ、手遅れになる。
==>> TPPに関する一般的な解説としては、以下のようなものかと思います。
「5分でわかるTPP!内容や加盟国、メリット、アメリカの動きなど」
https://honcierge.jp/articles/shelf_story/7976
「各国の成長にともなう利益を享受できるというのは、大きなメリットだとい
えるでしょう。そのほか、関税が撤廃されることにともない、輸出品の国際競争
力向上、輸入品の価格低下、医療機器や医薬品の輸入価格が低下することによる
国民の医療費の抑制などが挙げられます。またTPP域内のルールが統一される
ことで、投資環境の整備、知的財産権の保護、労働人材の流動性増加も考えられ
るでしょう。」
「食料自給率が低下する可能性です。もともと日本の食料自給率は各国と比べ
て極端に低く、カロリーベースで38%しかありません。
・・・遺伝子組み換え作物など、日本に比べて安全規制が緩い国の食品が流入す
る危険性が指摘されています。
最後に、医療格差の拡大です。日本では「健康保険法」によって国民全員が平等
に医療を受けることができる環境が整っています。しかしTPPに参加すると、
医療の「ビジネス面」が重視される恐れがあるのです。」
・・・ここでは、「投資環境の整備」と簡単に触れられているだけです。
「投資家の権利を守る協定」という点については、協定の内容を読み込んで
正しく理解する必要がありそうです。
日本においてのデメリットが、食糧自給率、食糧の安全性、医療格差への懸念
として上の述べられていますが、これらは、確かに投資家の権利を守る側を
優先し、日本国民の側の懸念を増幅するものではあるのでしょう。
特に食料の自給率については、まさに安全保障の問題でもあるわけですが。
「圧倒的に重要なのは環境破壊と核戦争だ。」というのは、全面的に賛同します。
しかし、アメリカでは、特に共和党が科学者のデータを無視する態度で、議論にもならない
ようですし、核戦争という点に関しても、現在進行形のロシアのウクライナ侵攻に
関連して、いろいろと情報が飛び交っているようですから、まさに「圧倒的」に重要
であると思います。
次回は、「第十四章 アウトレイジ(暴挙と激怒)」に入ります。
=== 次回その10 に続きます ===
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