ノーム・チョムスキー著「誰が世界を支配しているのか?」を読む ― その2 ビン・ラディンは米国に400兆円を使わせた、暗殺は米国のお家芸?
ノーム・チョムスキー著「誰が世界を支配しているのか?」を読む ― その2 ビン・ラディンは米国に400兆円を使わせた、暗殺は米国のお家芸?
ノーム・チョムスキー著 大地舜 神原美奈子 訳
「誰が世界を支配しているのか?」を読んでいます。
p034
この「人類の支配者たち」とは国家政策の「主要な立案者」であり、「すべて自分のもの、
他者には何も与えない」という“邪悪な処世訓”を追い求める人々だ。
三極主義者は米国憲法の初期の精神に従っているともいえる。
歴史学者ゴードン・ウッドによると米国の憲法は「基本的に貴族政治の文書で、当時の
民主主義的傾向を抑えることを狙っていた」。 そのために「より良いタイプ」の人々に
権力を与え、「金持ちでない者、生まれが良くない者、著名人でない者」は政治から排除
していた。
==>> ここでもう、ほとんど全てが語られているようなものですが、
トルーマンの時代の例としては、「ごく少数のウォールストリートの弁護士と
銀行家と協調することで国を統治できた」としています。
つまり、ほんの一握りのアメリカの支配者です。
しかし、驚いたことに、三極主義者とは、「1975年に三極委員会(日米欧
三極委員会)のリベラル派国際主義・・・・」とありますので、ここには
日本も入っているようです。
Wikipediaで基本情報をチェックしておきましょう:
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E6%A5%B5%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A
「1973年にデイビッド・ロックフェラー、ズビグネフ・ブレジンスキーらの
働きにより、「日米欧委員会」として発足した。日本・北米・ヨーロッパに設け
られた三つの委員会によって総会が運営される。参加国は委員会の規定では
「先進工業民主主義国」とされている。三極委員会の目的は、先進国共通の国内・
国際問題等について共同研究及び討議を行い、政府及び民間の指導者に政策
提言を行うことである。」
「日本の関係者
渡辺武 - 発足時の日本委員会委員長。大來佐武郎 - 以下、同委員。
宮沢喜一 牛場信彦 永野重雄 岩佐凱実 土光敏夫 盛田昭夫 長谷川閑史」
・・・・なるほど、経済界で指導的立場にいる人たちがメンバーになって
いるようですね。
p036
「知識人」を二種類に分類することで、「知識人の責任」を決める枠組みができる。
・・・優位な立場や地位を利用して自由や正義、慈悲や平和などのセンチメンタルな
問題を推進させることなのか?
あるいは「技術官僚や政策関連の知識人」として果たす役割のことか?
この場合、指導者や既存の機関を“けなす”のではなく、彼らに奉仕する立場になる。
米国と対立する国であっても、二種類の知識人の区別は変わらない。
だが、彼らに対する評価は米国内のそれとは反転する。
同じ様にイランでも、米国人は勇敢な反体制派をほめ讃え、聖職者組織を擁護する人々
を非難する。 これは場所が変わっても同じだ。
==>> イデオロギー的に敵対する二国間においては、確かにこのような構図になる
でしょうね。 ある国に生まれれば、その国のスタイルに洗脳されるし、
別の国で育てばまたそのように洗脳されるし。 それはその国の言語を
母国語として自然に吸収していくようなものだと思います。
戦前と戦後を生きて来た日本人なら、その点は骨身に沁みて分かっている
ことではないかと思います。
ちなみに、我が母は、鹿児島の熱心な軍国婦人だったそうで、戦後はショック
のあまり東京でキリスト教の洗礼を受けたんだそうです。
p37
ネルソン・マンデラの興味深い事例を見てみよう。 彼の名前が公式に国務省のテロリスト
・リストから抹消されたのは2008年だ。 これで特別許可なしに米国に渡航すること
ができるようになった。 米国防総省の報告によると、20年前のマンデラは「世界でも
悪名高いテロ組織」のリーダーだった。
これはレーガン大統領が「近代の伝染病」との戦いだと宣言した、テロとの戦いの
ワンシーンにすぎない。
・・・ラテンアメリカの事例はもっとあからさまだ。 ラテンアメリカで自由と正義を叫ぶ
人々は、名誉ある反体制派の神殿には祭られない。
たとえば、ベルリンの壁が崩壊した一週間後、ラテンアメリカを代表する六人の知識人
が頭を吹き飛ばされた。 彼ら全員がイエズス会士であったが、エルサルバドルの首脳部
がじかに暗殺命令を下している。 「実行犯」は米国に訓練され武装されたエリート部隊
で、・・・・・
名誉ある反体制派となるのはソ連や東欧という米国の敵地で自由を叫んだ人々だけだ。
==>> 「テロとの戦い」という言葉は耳にタコができるぐらい聞いてきました。
この後もたくさん事例が出てくるのですが、米国にとって都合の悪い話は、
名誉ある反体制派とは呼ばれず、逆に米国がコントロールしている武装集団
によって、抹殺されているということを述べています。
最近のニュースでは、米国がドローンや無人爆撃機などを使って暗殺し、
それを大統領が平気で米国民や世界に発信しています。
武力での現状変更を許さない法治主義という言葉はどこの国の言葉で
したっけ?
p040
その重要な第一歩はブラジルにおける軍事クーデターだった。 このクーデターは
米政府に支援されており、ケネディ暗殺の直後に実行されている。 その結果、
ブラジルには人殺しをいとわない残虐な治安維持国家が誕生した。 抑圧という疫病は
その後、ラテンアメリカ各国に広がった。
まずは1973年にチリのピノチェト独裁政権を生んだ軍事クーデターだ。次に生まれた
アルゼンチンの独裁政権は極端に狂暴だった。 この独裁政権こそ、レーガン大統領が
一番気に入っていたラテンアメリカ政権だ。 1980年代には中央アメリカに順番
が回ってきた。
p041
ハイチで初めての選挙が行われた・・・・米政府は、特権エリートから抜擢して擁立
した候補者が、簡単に勝利すると思っていた。
・・・米国はすぐさま政府の打倒に動き出し、数カ月後には軍事クーデターで民主的
政府を転覆した。
p042
クリントンはテキサコ石油会社による、ハイチの“人殺し軍事政権”への石油供給を
承認したが、それは禁輸政策という自らの指令を無視する処置だった。
==>> この著者であるチョムスキーさんは、上記をごらんになればおわかりの
ように、米国の共和党であろうが民主党であろうが、遠慮なく批判して
いるようです。
「軍事クーデターで民主的政府を転覆した。」などというのは、ミャンマーや
タイのクーデターを連想しますが、平凡なノンポリの日本人としては、
なんとなくアジアの大国の関与を連想してしまうんです。
しかし、仮にそういう関与があったにしても、それは米国がご本家の
常套手段であったのかという感じになってしまいますね。
そういう意味で、世界の大国の間には、「お互い様だから、目をつむって
ちょうだいね」という感じの取引があるんじゃないかと疑ってしまいます。
p046
私たちは目の前で起こっていることも、ほとんど見えていない。
だからちょっと遠くで起こった出来事は、まったく見えなくても驚くことではない。
良い例がある。 オバマ大統領は2011年5月に79人の奇襲部隊をパキスタンに
送り込んだ。 9.11テロ事件の首謀者とされるオサマ・ビンラディンを暗殺するためだ。
ビンラディンは武器も持たず、護衛する兵士もおらず、逮捕するのは簡単だった。
だが、ビンラディンはただ殺され、海に投げ込まれた。検死もされていない。
・・・一方、ナチの戦争犯罪者たちには裁判が行われている。 このことを海外の法律
専門家たちは見逃していない。 彼らは奇襲攻撃を容認するが、裁判無しには反対して
いる。 ハーバードのエレイン・スキャリー教授は、暗殺は国際法で禁止されている
ことを忘れるな、と言う。
==>> 確かに、9.11がオサマ・ビンラディンの犯行だったとするならば、
その犯行の真実を裁判で明らかにするのが法治国家の基本でしょうね。
死人に口無し・・・を国家が暗殺という手段でやったという風に私のような
下衆が勘繰ってもしかたがないですね。
p049
ビンラディンは米国との戦争で大戦果をあげたと、多くの政治専門家が考えている。
「彼は米国をイスラム世界から追い出す方法は一つだと何度も言っている。 米国を、
小さいが高くつく戦争に何度も引き込むのだ。 そうして破産させるしかない。(中略)
米国はまずジョージ・W・ブッシュの下で、次にバラク・オバマの下で、ビンラディンの
罠にみごとにはまった・・・異様に膨れ上がった軍事支出と債務依存症・・・はもっとも
有毒な遺産かもしれない。 米国に勝てると考えた男からの遺産だ」
と、ジャーナリストのエリック・マーゴリスは書いている。
p050
ブラウン大学ワトソン国際問題研究所の戦争コスト報告書によると、最終的な「テロと
戦争」の経費は3.2兆ドルから3.4兆ドル(日本円にして約4百兆円)になるという。
これはビンラディンによる“感銘すべき偉業”といえるだろう。
==>> ちなみに、日本の国家予算はおよそ300兆円ぐらいだそうですから、
それよりも多くの税金を使っているという話になりそうですね。
その内のいくらかを、日本の納税者も支払っているのでしょうか。
いわゆる「思いやり予算」という言葉がありましたが、それについて
Wikipediaでは、以下のような記述があります:
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%80%9D%E3%81%84%E3%82%84%E3%82%8A%E4%BA%88%E7%AE%97
「日米両政府の交渉の結果、2022年から2026年の日本側負担額は年平均約500
億円の増額となる2110億円で合意した。米軍の運用と関係が薄い費用は減ら
される一方、軍拡を続ける中華人民共和国を念頭に、抑止力や対処力の強化に
向けた訓練資機材調達費を新設するなど負担内容を見直した。また日本政府は
「『思いやり予算』という俗称が使用されることがあったが、合意の内容を適切
に反映していない」として「同盟強靭化予算」を公的な通称と定めることを発表
した。」
「世界の軍事費ランキング&グラフ-日本は対GDP比1%未満」
ニュースによれば、「バイデン大統領は・・・2022会計年度(21年10月
~22年9月)の予算教書で、国防関連予算として7530億ドル(約82兆
6千億円)を議会に要求した。」
とされていますので、テロとの戦争のコスト3.3兆ドルという金額は、
上記の2018年の軍事費ランキングのアメリカの金額約6千5百億ドルの
5年分という計算になります。
アメリカの年間軍事費は日本の防衛費の14倍ぐらいになっていますから、
オサマ・ビンラディンは日本の防衛費の14倍x5年分=70年分を使わせた
という計算になりますかねえ。
この計算が正しければ、それは確かにビンラディンの偉業という話は納得
できますね。
一方で、それだけ税金を使って、誰が儲けているのかが気になりますが。
p051
“9.11”は「人類に対する犯罪」だといわれるが、そのとおりだろう。
そうなると国際的規模で容疑者が逮捕できたかもしれない。 事件直後にこのことは認識
されていたが、ワシントンの政策決定者たちには、まったく考慮されなかった。
どれほど真剣なものだったかは不明だが、タリバン指導者たちから、アルカイダの指導者
たちを裁判にかけるならば引き渡すという提案があったが、これも無視された。
==>> これが本当だったとするならば、その提案を受け入れなかったという
のも変な話ですね。 その分、軍事費を使わなくても済んだだろうに。
借りを作るのがいやだったということでしょうか。
p051
この犯罪はもっと悲惨な結果になってもおかしくなかった。
・・・この航空機がホワイトハウスに命中し、大統領が殺されていたかもしれない。
もしそうだったとすれば、テロリストたちの計画は、米国に軍事独裁の誕生を強いること
だったかもしれない。 米軍はすでに何千人も殺し、数万人を拷問にかけている。
この新しい米独裁政権が樹立されたら、米国が育てた犯罪者たちにより、“国際テロ
センター“が設立され、・・・・・
==>> う~~ん、ここに「米独裁政権」とか「軍事独裁」とか出てきました。
数年前なら、私にはそんなことはつゆほどにも想像できなかったと思いますが、
トランプ大統領が出てからというもの、そういうシナリオも可能性として
否定はできないなと妄想します。
さて、次回は 「「第二章 「世界」に負われるテロリストたち」に入ります。
=== 次回その3 に続きます ===
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