リラクゼーション? 立花隆さんも試したというアイソレーション・タンクを、瞑想しようと体験してみた
リラクゼーション? 立花隆さんも試したというアイソレーション・タンクを、瞑想しようと体験してみた
まず、アイソレーション・タンクとは何か・・・なんですが、
WEB辞書によれば:
「アイソレーション・タンク Isolation tank
アイソレーション・タンク(Isolation tank)は、感覚を遮断するための装置であり、光や音
が遮られた空間で、皮膚の温度に保たれた高濃度のエプソムソルトの塩水に浮かぶことで、
皮膚感覚や重力の感覚を大きく制限することができる。」
・・・と言うことです。
また、こちらのサイトでは、以下のような説明があります:
https://selflotte.com/isolation.html
「アイソレーションタンクが脳(心)に効く大きな理由として、五感をほぼ全てシャットダウンするので、リラックス効果を短時間で最大限引き出し、根深いストレスを徐々に浮上させ、休息を効率よく摂取出来ることです。
さらに人体は高濃度のエプソムソルト効果で浮いてるため、神経活動の90%が費やされる重力計算からも即座に解放されます。
最近の研究では皮膚も光を感知していると言われていますので、タンク内での「脳を休める環境は地球上最高水準」と言え、アイソレーション(フローティング)タンクが「究極のリラクゼーション」と言われる所以です。」
「エプソムソルト」については、こちらでどうぞ。
https://lipscosme.com/articles/5451
私が何故、このようなものに興味を持ったかといいますと、
以前読んだ下の本にこのようなことが書かれていたからです。
村本治著「神の神経学―脳に宗教の起源を求めて」
http://baguio.cocolog-nifty.com/nihongo/2021/04/post-31497c.html
「p87
なお、フローテーションタンクの中で、重力感、触感、音、光、温度などの刺激を除いて
人工的に作り上げた感覚遮断環境は、ストレスや依存症の治療に使われることがある。
感覚遮断環境では、人が幻覚を経験したり、感覚が歪んで、時間感覚が麻痺したりすること
があることが知られている。 これも上に述べた宗教体験と共通するものである。」
==>> このフローテーションタンクですが、いろいろ検索してみると、フローティング
タンクとかアイソレーションタンクとか呼ばれているようです。
一例として下のサイトの宣伝を見てみると:
https://hikariclinic.jp/floating-tank
「フローティングタンクはアイソレーションタンクともいわれ、アメリカの伝説
的な脳生理学者であるジョン・C・リリー博士(1915~2001)によって1950年代
に発明されました。
アイソレーション(分離・感覚遮断)することにより深い瞑想状態に入り、強力
なリラクゼーション作用、ストレス解消効果、全身のマッサージ作用、疲労回復
効果を体験することができる施設です。」
さらには、最近読んだ立花隆著「臨死体験」にも、このアイソレーション・タンクが
初めて日本に紹介された折に、真っ先にご本人が体験したことが書かれています。
(下のリンクは「上巻」の感想文ですので、タンクのことは書いていません。)
https://sasetamotsubaguio.blogspot.com/2021/10/blog-post_90.html
この写真は立花隆著「臨死体験 ― 下巻」からの写真です。
いずれ「下巻」の感想文も書くつもりですが、その333ページに以下のようなくだりが
あります:
「それは1981年4月、このタンクがはじめて日本に輸入されたときのことである。
「週刊文春」のグラビアページの企画で、それを体験してみてくれと頼まれたのである。」
上と下の写真が、立花さん本人が体験された時の写真です。
・・・いずれにせよ、立花さんが書いている感想と私の感想はかなり異なりますが、
以下にその体験記を書いてみたいと思います。
私がこのタンクを試してみたいと思った理由は以下のとおりです:
1. 今現在の私の読書テーマが「意識とは何か」である。
2. 過去一年間月に1回の阿字観会・月輪観会(瞑想会)に通ってきたが、
なかなかイメージが作れない。
3. 上記の本などから、このタンクが、瞑想の環境として優れているらしい。
4. 立花隆著「宇宙からの帰還」においても、宇宙飛行士の「臨死体験」にも似た
経験が語られている。
5. 古代インドの哲学や宗教などにおいて、ヨガなどの修行を通じて、これに似た
意識現象があることが伝えられていること。
6. ただ単に、立花隆さんの体験の真似をしてみたいという興味。
つまり、ミーハーです。
さて、では実際の具体的内容に移ります。
2021年11月22日(月)に、下のサイトから予約を入れました。
90分間9,900円のコースです。
https://selflotte.com/price.html
24日(水)午後2時から90分間という予約でした。
Eメールで予約確認が来ました。 そこに連絡先の携帯番号などもありました。
自宅からその場所までは、およそ1時間と見込んで、正午に家を出ました。
山手線の大塚駅南口から徒歩10分ほどの場所にあります。
1pmごろに大塚駅に到着したので、一旦場所を確認してから、およそ50年振りの
大塚駅周辺を散歩して廻りました。
(50年ぐらい前に初めて上京し、その当時、板橋の東京家政大学で、学生寮の舎監と
して勤めていた私の叔母と、大塚駅の近くの中華料理屋で食事をした記憶があります。
それはそれは厳しい叔母でしたが、帝国劇場のミュージカル「ラ・マンチャの男」を観に
に行ったり、コロンビア・レコードの重役の方の家に連れて行ってくれたりしました。
私が大学受験をする前に、東京で実務ビジネス英語を勉強するのなら津田塾大学の
財団法人が創設した津田スクール・オヴ・ビズネスが良いと薦めてくれたのも
この叔母でした。)
大塚駅南口を出たら、右側へ、線路に沿ってまっすぐ歩きます。
その途中には、こんなホテルがありました。
広い通りに出ると、左斜め前に このような靴屋さんがあります。
(右側には「空蝉橋」が山手線の上に架っています。)
靴屋さんの左の路地を入ったところの写真です。
この道をまっすぐ進みます。
まっすぐ行くと、十字路の左の角に、このマンションがあります。
東池袋「ステージ」という名のマンションです。
マンションの玄関には、このようなボタンがあります。
ここで、行先の部屋番号を入力しなくてはいけません。
(この部屋番号は、予約確認のEメールに記載してあります。)
マンションの外や玄関先には、会社名の看板などは一切ありません。
まったく普通の一般の部屋が使われていまして、担当者は一人だけでした。
割と広いリビングルームで、30分程度の説明がされました。
(初心者の場合に、実に丁寧な手順と注意点などの説明がされるようです。)
右側にトイレ、その奥に洗面所とユニットバスがあります。
この左側は廊下で、カーテンが掛かっています。
手前の部屋にアイソレーション・タンクがあって、タンクが置かれた部屋はほぼ真っ暗です。
これがタンクです。 SAMADHIと書かれています。
係りの人の話では、立花隆さんが使ったものと同じタイプのものだそうです。
確かに、立花さんが写っている写真をみると、同じように見えます。
さて、ここでどのようにこのタンクに入るのか、ですが・・・・
これは、タンクの蓋を開けた状態で、タンクの上に、タオル、耳栓、ティッシュが
載せてあります。
ここで、係りの人から、事細かい手順と注意点を教えてもらいます。
大雑把に言うと、以下のような流れです。
(詳しい内容は、上記のサイトや係りの人の説明をチェックしてください。)
― まず、トイレとシャワーを済ませる。
― シャワーの後は、タオルで拭く。特に眼や耳は念入りに水分を拭きとる。
(眼や耳にタンク内の液体が入ると痛かったり、面倒なことになるらしい。)
― タンクの蓋を開けて、少し蒸気を抜く。
― 耳栓をしっかりつける。
― 素っ裸になったままで、ゆっくりとタンクの中に足を入れる。
(カーテンで仕切られた中で、トイレ、シャワー、タンクと動きますので、
素っ裸のままで大丈夫です。
海水パンツなどは、かえって後始末が面倒です。)
― タンクの底面は、ぬるぬるしていて、大変滑りやすいので、滑らないように、タンクの
入口の上や横をしっかり掴んで入るのがお薦めです。
(つかむハンドルなどはありません。)
― ゆっくりと腰を下ろし、足を伸ばし、静かに波を立てないように、仰向けに
寝転びます。(特に、顔、眼、鼻にタンク内の液体・高濃度エプソムソルト溶液が
入ると面倒になるそうです。 ティッシュやタオルや目薬が置かれているのは
その為だそうです。)
― 液体は深さ25センチぐらいしかありませんが、浮力が凄いので、ぽっかりと
身体が浮きますから、ゆっくりとコントロールしながら、左右に手を伸ばして、
バランスを取りながらタンクの中心に浮かぶようにします。
(どの程度身体が浮くかは、上の立花さんの写真でご覧ください。)
― 部屋自体もほぼ真っ暗ですが、タンクの蓋を閉めると、それこそ真っ暗に
なります。
(私は、タンク内の蒸気を抜くために、タオルを蓋のところに挟んで
少しトイレからの灯が入るようにしました。)
液体の温度は、体温とほぼ同じ36度C前後にしてあるそうです。
私には、ちょっとだけ温かい感じでした。
では、タンクの中では、どんな体験があったのか。個人的な印象、感想を書いて
みます。
― 大雑把な結論を言えば、ひそかに期待していた、特別な、神秘的な現象は
ありませんでした。これは、おそらく私の感受性の乏しさゆえなのでしょう。
― 最初のうちは、瞑想会でやっている月輪観のお月様をイメージしようとしたの
ですが、いつもより少しは白い月みたいなイメージが作れたのですが、
結局失敗しました。
(毎晩布団の中で寝入る時に出てくるような、様々な白黒の映像は出てきません
でした。例えば人の姿や、訳の分からないシルエットなど・・)
― では、ここからは、「臨死体験:下巻」に書いてある立花隆さんの体験記を
紹介しながら、それに対する私の体験を書いていきます。
「・・・」は立花さんの感想で、カッコがない部分は私の感想です。
p334
「(素っ裸になり)タンクに入ってフタを閉じれば、音も光もなく、仰向けにプッカリと
浮いているだけ。 しだいに肉体感覚が失われ、意識だけが宇宙遊泳を始め、幻覚体験
をもつ人もいるらしい。約一時間で肉体疲労と精神不安を解消、集中力が増すという
新健康法なのである。
もっかポール・ニューマン夫妻が愛用。 スポーツ選手やビジネスマンに人気があり、
ジョン・レノンも私有していたとか。 そのタンクがついに日本に上陸した・・・・・」
・・・上記は、いわゆる宣伝文句を紹介している部分なんですが、私の場合は、
肉体感覚は割合に無くなり、宇宙遊泳まではいかなくともそこそこ似たような感覚は
ありました。 意識だけが残るという体験をしたかったのですが、液体の温度は
感じたし、手足の感覚もかすかに残っていたので、完璧とはいきませんでした。
特に、背中に浮力の圧力を感じるというか、温かい感覚があったので、肉体感覚が
すべて無くなるということにはなりませんでした。
タンクの入口にタオルを挟んで、少しだけ光が入るようにしていたのが良くなかったの
かもしれません。 これは、完全に蓋を閉めると、蒸気が一杯になって、たまに
息苦しくなる人がいると言われたからです。私の場合、仰向けに寝ると鼻が詰まって
寝られないことがあるもので。
「フタを閉めた瞬間に身体がゆるやかなスロープをすべり落ちてゆくみたいで、1センチ
でも身体を動かすと数メートルも動いた感じになる。 そのうちに安定してきて、手足
が重くなったようになる。」
・・・タンクの底面は溶液でヌルヌルしているので、滑りますが、私の場合は、
タンクの開口部の上と横を掴んで、静かに腰を下ろしてから、蓋を閉めたので、
すべり落ちるようなことはありませんでした。 1センチでも動かすと数メートル
動いた感じというのは、大げさだと思います。
しかし、浮かんだままの状態で、手足を少し動かすと、タンクの中心からかなり位置が
ずれることは確かです。
また、「手足が重くなった・・・」と書いてありますが、重くなったというよりも、
浮力が強いので、手足を下方(タンクの底面方向)に動かすにはかなりの力が要ります。
p335
「肉体感覚はありましたよ。 いくら温度が同じでも水と空気では密度が違うからね。
ただ肉体を伝わってくる音、たとえばツバをのみこむ音や呼吸の音がとても大きく
響く。 手でお腹に触れてみたりすると、非常に新鮮な感触でしたね。」
・・・肉体感覚は私もありました。 「ツバをのみこむ音」の部分は、確かにそうでした。
音が響くと同時に、そのツバを飲みこむ動作の振動で液体の中を動いてしまっているよう
な感覚がありました。 それほどちょっとしたことで、動いてしまいそうな・・・
実際には動いていなかったのかもしれませんが。
私も身体の感覚がかなり無くなった時に、プッカリと浮かんでいるお腹を触ってみました。
身体の下(背中側)半分は液体の中なのでちょっと温かいのですが、空気にふれている
上半分(顔、胸、お腹、足など)は、ややひんやりしていたので、風邪をひくんじゃ
ないかと心配しましたが、大丈夫でした。
(タンクの蓋を完全に閉めれば、蒸気が充満するので、ひんやりすることも少ないかと
思いますが・・・)
ただし、立花さんが言うような「新鮮な感触」は感じませんでした。
ついでに、背中の下側(タンクの底面)にも手を廻してみたら、想像以上に身体が
浮いていることが確認できました。
そして、そのようなちょっとした手足の動きがあると、身体がタンクの中を右にいったり
左にいったり、すぐにタンクの中心からずれることも分かりました。
「一時間は短く感じたな。 一時間半ぐらいは入っていたかった。 いつも意識が小さく
グルグルと円を描いているとすると、意識が大きくゆったりと回るみたいで、時間感覚
も変わってくる。」
・・・正直に言えば、タンクに入ってから、まず瞑想状態になりたくて、
お寺でやっている「月輪観」、つまりお月様のイメージを頭の中で膨らませていくこと、
をやってみたんですが、いつもの通りで、なかなかイメージが作れず失敗。
その後は、やることがなくて90分は長いなとちょっと退屈したんですが、我慢して
じっとしていたら、私の身体がまるで「羊羹の中に閉じ込められた」ような感覚に
なりました。 羊羹でも水晶玉でも、なんでもいいんですが、その中に水中花のように
閉じ込められて固まったような感覚です。
別の言い方をすれば、棺桶の中で固まっているような感覚でしょうか。
もしかしたら、真っ暗な棺桶の中で息を吹き返して、意識は戻ったけど身体が動かない
ような状態がこのような感覚なのかもしれません。
特に、腕は、本当はダラリと八の字に液体に浮いているんですが、その腕がまるで
椅子のひじ掛けにがっちりと接着されているような感覚がありました。
そんなこんなで、いろいろ試しているうちに、音楽が流れ始めて、終了の合図と
なりました。
時間感覚があったのか、なかったのかは、よく分かりません。
「かつてストレス学説を唱えたセリエ博士が、常に耳栓と目かくしを携帯していたのは
有名だ。 外界からのあらゆる刺激をストレスと考えれば、タンクは彼のいう“無ストレス
状態“に完璧に近いわけだ。 ”無ストレス状態“がたいていの病気の治療に有効だという
ことはすでに報告されている。」
・・・この学説が正しいのかどうかは知りませんが、様々な病気や症状の原因として
ストレスが云々されていますから、たぶんそうなのでしょう。
卑近な例で言えば、毎晩布団の中で寝る時に、身体の重力というか、自分の体と布団の
間の重さや圧力を感じて、特に肩に掛かる重みで、ちょこちょこ寝返りを打たないと
眠れないことがあるんです。 これも、一種の「外界からの刺激」でしょうね。
そういう意味では、このタンクの中は、よく眠れそうです。
(ただし、寝返りを打てないとか、暴れたら液体が顔に掛かってしまうとかいう危なさは
あります。 私は真上を見て寝ると、鼻が詰まるので、息苦しくなるんです。
それもまたストレス・・・)
p336
「硫酸マグネシウムは、水よりずっと浮力があるから、体がほんのちょっとしか沈まない。
しかし、それは同時に、体が安定しにくいことを意味する。・・・グラグラしてしまうので
ある。 ・・・タンクのドアが開いているうちはまだよかった。 目が見えていれば
自分の体がいまどういう状態にあるか認識できるからである。」
・・・私の場合は、ちょっとだけタンクの蓋に隙間を開けていたので、タンクの中での
体のコントロールはすぐにできました。 まあ、やっぱり、正しくは蓋をしっかりしめて
しまうのがいいのでしょうね。
「体が安定してきたなと思ったときに、ドアをバタンと閉じられた。 そのとたん、
目まいがするほど体が大きくゆれるのを感じた。 体がゆれるというより、世界がグラリと
ゆれたという感じだった。 体をどう立て直していいかわからず、一瞬、溺れる!と
思ってパニック状態におちいった。 考えてみれば、実際には水深25センチだから
手でも足でも下にのばせばすぐに底につくわけで、どんなことがあっても溺れるわけ
はないのである。」
・・・あははは、これは災難というか、大げさです。
私の場合は、タンクの中に静かに座ってから、自分でゆっくりとドア(蓋)を閉めました
ので、こんなことは一切ありませんでした。
(このお店の担当者は一人だけで、現場での説明を終わると、90分後の終了の音楽が
鳴り、お客がシャワーを浴びて、リビングルームに出てくるまで、一切かまってくれま
せんので、異常事態の時は「叫んでください」ということでした。
但し、叫ぶ前に、パンツぐらいははいておくのがいいかも・・・
p337
「しかし、感覚遮断の効果というものを考えるとき、こういう現象が起きるということ
が重要なのである。 通常の人間の意識を支えている感覚器官からの信号が途絶えると、
人間は自分の肉体の位置と動きという最も基本的なことに関してすら、誤った判断を
下してしまうのである。」
・・・おそらく感覚遮断が完全に起これば、このようなことになるのだと思いますが、
私の場合は、液体の温度・熱や液体の浮力・圧力を説くに背中に始終感じていたし、
液面から出たお腹の辺りにはひんやりした感じも残っていたので、信号が途絶えるという
感じにはなりませんでした。
立花隆著「宇宙からの帰還」に述べられているような、漆黒の闇の中で、意識だけが
感じられるというところまではいきません。
「ドアが閉められて、タンクの中が真っ暗になったとたん、もう一つ異様な感じがした。
それは、自分をとりまく空間が一瞬にして、無限の遠方まで広がったことである。
実際のタンクの内部の広さは、タタミ二畳にも満たない。 高さも座れば頭がぶつかる
程度である。 ・・・その狭い空間が一瞬にして測り知れないほど巨大な空間に転じた。
・・・暗黒の宇宙空間の中にただ一人放り出されたという感じである。」
・・・やっぱり私の想像力は貧困なんですかねえ。 こんな異様な感覚はまったく
ありませんでした。 ひとつにはタオルを入口に挟んで、少し光を入れていたせいなの
かもしれませんが。 静かにすればするほど、背中への液体の温度や圧力を感じる
ぐらいで、上にも書いたように「羊羹の中に閉じ込められた」ような感じが精いっぱい
と言ったところです。
しかし、あえて突っ込みを入れるとするならば、立花隆さんは、すでにそれまでに
臨死体験やら宇宙飛行士のことやら、様々なことが頭にあったわけですから、そのような
思考の発展が出たんじゃないかと思えないこともないですね。
私もそのような体験をしたくて試してみたんですけど。
p338
「私には、彼のいう“絶対的零地点”の感じがそのときの体験からくる実感としてよく
わかる。 そこでは、自分以外の存在がすべて消えてしまうのである。 完全孤独の
世界である。・・・こんな経験ははじめてであった。」
・・・これも立花隆さんの非常に文学的な表現だと、私には思えます。
「こんな経験ははじめて」というのは私も同じなんですが、やっぱり、文学的想像力
の問題でしょうか。
p340
「タンクの中でも、体が自由に流れ動いて、頭か手足の一部がタンクの内側にふれる
ことがある。 するとその瞬間、それまで無限の広がりをもっていた空間が、たちまち
現実のサイズに縮小してしまうのである。 その一瞬の切り換えという事実が、
人間の空間認識に感覚入力情報がどれほど決定的な役割を果たしているかをよく物語って
いる。」
・・・これは多かれ少なかれ感じます。無限の空間という実感みたいなものはありません
でしたが、それでも手足がちょっとタンクの内面に触ると、現実に戻るという感覚は
ありました。 たしかに、感覚入力は、背中の熱や圧力、そしてお腹のひんやりした
感覚以外は遮断されていたと思います。
「私のタンク体験では、こういう不思議な感覚は体験したが、幻覚を見るというような
ことは起こらなかった。ただ、あまりの気持ちのよさに、いつの間には眠り込んでいた
ようである。 聞くと、多くの人が遅かれ早かれ眠ってしまうという。」
・・・私も90分間もあったら、眠ってしまうんじゃないかと思っていたんですが、
いつもなら昼間でも猛烈に眠くなるのが日常なのに、この時だけは興奮していた
せいなのか、眠ることもありませんでした。
「気持ちいい」で思い出したのですが、私は、こういう状態が生まれる前の子宮内
の胎児の状態なんじゃないかと思ったんです。
つまり、子宮の中の羊水にプカプカ浮いているような感じなのではないか。
そう思ったもので、自分が胎児になったつもりで、手足を動かしてみたりしました。
溶液の濃度はかなり高いようなので、普通の水のようにさらさらという感じではなく、
手足を動かすときにはかなりの抵抗感で、重く感じます。
p341
「四体を完全にリラックスさせた状態で静かに浮いていると、自分の肉体の存在感が
なくなっていく。 意識はきわめて鮮明である。 ・・・・そうやって意識を集中させて
ものを考えているうちに、ふと気が付くと、自分は完全に意識の点のような存在に
なっていた。 肉体が消失してしまっているのである。」
・・・これは、立花さんが最初にタンクを体験してから、12年後に再挑戦したときの感想
を書いているところです。 その時には、すでにタンクブームが去ってしまって、
「ようやく探しあてたのは武蔵野のトータル・リコール研究所というところだった。」
と書かれています。
なんとまあ映画「トータル・リコール」みたいなおっそろしい名前の研究所ですね。
その後この研究所も「臨死体験」の本が出版される頃には無くなったようです。
一回目と二回目では、かなり異なる体験になったようです。
私も二回目が必要なのかなあ・・・と迷ってしまいます。
p342
「日常的な世界においては、意識の座も、感覚的主体(知覚)の座も、肉体の中にある。
意識と知覚と肉体は一つに統合されている。 それがタンクの中ではバラバラなのである。
じっとしていると、知覚も肉体も消失していき、意識は限りなく純粋意識に近づいていく。
そういう状況の中で、これはもしかしたら一種の体外離脱なのではないかと思った。」
・・・さて、おそらくこれが、立花隆さんのこの体験のポイントではないかと思います。
「臨死体験」という本を書くにあたって、さまざまなアイソレーション・タンクに関わる
情報を得て、そのタンク体験の中に、臨死体験を科学的に説明できる要素がないかと探して
いるわけですから。
私もそのような体験のごく一部でも実感できないかと期待して、9,900円を
投資してみたのですが、なかなか一回だけでは、そうは問屋がおろしてくれない
みたいです。
まあ、しかし、その前に、まだまだ感性を磨かないといけないようですね。
鈍感な奴は、こういうスピリチュアルな世界には遠いのかもしれません。
以上、報告を終わります。
<<スーパーマーケットでの立ち話>>
話は変わりますが、たまたま私がこのアイソレーション・タンクに入っていたころ、
我が家の相棒が、昔からの知人にスーパーマーケットで会ったそうです。
その女性は、帽子にマスク姿だったので、最初は誰だか分らず、声を掛けられるまで
気が付かなかったそうです。
昔は、その女性は日焼けした元気な方だったのに、やけに顔色が白くて、どうしたの
だろうと思っていたら、彼女の方から「元気にしてる?」と聞かれたので、
「はい、一応元気にしていますけど・・・」と答えると、その彼女は
「私は元気じゃないのよ。 癌になってしまって、10月にやっと退院してきたの。」
とスーパーの売り場の一角で長い話が始まったのだそうです。
その話の中で、彼女が言うには、
「入院していた時に、抗がん剤なんかの副作用と思われる40度前後の高熱が出て、
その時に、意識が無くなって、お花畑が見えたり、お城の石垣の石のひとつひとつに
36.8度と書いてあって、その石垣を一所懸命登っていたら、後ろから誰かに
引っ張られて意識が戻った」という夢だか幻覚だかをみたという話。
36.8度という数字については、おそらくその時に、早く36度台の
体温に戻って欲しいという彼女の気持ちを反映していたのだろうということです。
そして、その話を身近にいる人たちにすると、そんな気持ちの悪い話はしないで
と異常者扱いされて、聴いてもらえないという。
たまたま、うちの相棒も立花隆さんの「臨死体験」を読んでいて、その中には
お花畑を見るとか、光をみるとか、トンネルを通過するとか、誰かに引きとめられて
戻ってきたという話があるよといろいろしゃべり、 これもたまたまその日、私が
アイソレーション・タンクを試しにいっているという話をしたところ、こんな話を
面白がってちゃんと聞いてくれる人は初めてだと笑い合って別れたとのことでした。
実は、臨死体験の関連本を読んでいると、アメリカでの研究や臨床現場での話の中に、
臨死体験をした人たちが医療の現場や親族・友人たちに、その体験を話すと、
精神異常だと診断されてしまうことが多く、薬物を投与されたりするので、
体験者が話が出来ない雰囲気があったらしい。
しかし、その後は、特に世界的調査会社であるギャラップがアメリカで大々的な調査を
やって、その結果を発表したところ、臨死体験は珍しいことではないのだということが
認識され、そのような医学的な研究や臨床現場での患者への対応方法も認知されてきて、
きちんと話を聞いてあげる体制が出てきたらしい。
ただし、このような話が日本の医療現場で認知されているのかどうかは疑問です。
皆さんも、もしそのような体験をした人が身近にいたら、興味をもって聞いて
あげてください。
== おわり ==
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