保江邦夫著 「神の物理学 甦る素領域理論」 を読む ― 1 湯川秀樹の「素領域理論」
保江邦夫著 「神の物理学 甦る素領域理論」 を読む ― 1 湯川秀樹の「素領域理論」
先に読んだ 稲葉耶季vs保江邦夫の対談「神と人をつなぐ宇宙の大法則」で
理論物理学者の保江邦夫さんが「素領域理論」という話をしていたので、
形而上学まで含むという保江さんの理論「神の物理学 甦る素領域理論」を
読んでいます。
読む前に、まず断っておきますが、私はこの本にたくさん出てくる数式は
まったく目に入っておりません。
高校時代に幾何学は割といけてたんですが、代数になってからというもの
箸にも棒にもかからなくなっちまったものですから・・・・面目ない
===
p9
故梅沢博臣博士が一生を費やして完成された場の量子論によって物理学者は
初めてあらゆるスケールでの物質の存在を理論的に導くことができたのだが、
その適用範囲には脳神経組織における記憶や意識の発生現象までも入っていた。
湯川秀樹先生が素領域という空間の微細構造に思い至るにあたって重要な
指針を与えたのが、旧制第三高等学校時代に数学を教えた天才数学者・岡潔博士
だったということ。
p10
岡潔博士が「空間」を「愛」の充満界として捉えるに至ったのは、むろん無意識下
で「真理の世界」をさまよったときの発見ということもあっただろうが、生涯を
とおして師事した浄土宗光明派の僧侶・山本空外和尚の教えの根底にあった思想
によるものとも考えられる。
p13
・・・同期の鬼才・中込照明・・・・彼が苦節数十年の孤独な研究によって
生み出した唯心論物理学の抽象的な理論である「量子モナド理論」の緻密
極まりない数学的枠組みがあったからこそ、そしてそれが現代物理学の
根底に巣くっていた量子論と相対論の未解決の難問を見事に解決した
からこそ、それをすばらしい手本として形而上学までを包含しうる素領域理論
の柔軟な理論的枠組みを作り上げることができた・・・・・
==>> まず最初に、保江さんが、どのような人脈の中でご本人の
「素領域理論」を作り上げてきたのかについて書いてあります。
そもそもこの「素領域」という考え方は日本初のノーベル賞受賞
をした湯川秀樹博士による発想だとのことです。
その後、この著者である保江さんが、湯川門弟として研究を
継承したようです。
https://kotobank.jp/word/%E7%B4%A0%E9%A0%98%E5%9F%9F%E7%90%86%E8%AB%96-90431
「四次元時空を分割不可能な最小領域 (素領域という) に区分し,
エネルギーが加わって励起された素領域が素粒子であるとみな
して,素領域間のエネルギーの授受によって素粒子の生成・消滅
などを論じようとした試論。 1966年湯川秀樹により提唱された。」
p17
物理学を離れて形而上学に参入するならば、完全調和のみの真空の状況はまさに
神の世界、あるいは神そのものといってもよい。 今後は特に誤解を生む
可能性の低い場合には基礎理論物理学において「真空」を解明していくときに
それを「神(かみ)」と呼び、また真空が示す様々な性質の幾つかを「神意」や
「愛」あるいは「情緒」などと表すことがある。
p18
そのような表現には抵抗を感じる場合には単に文字どおり「真空の物理学」
と解していただければよいだろう。
以下において構築するのは完全調和のみが存在する真空においていかにして
「空間」が生まれ、その空間のなかに宇宙森羅万象の物理現象が生じて
きたかを統一的に論じることができる、湯川秀樹博士の素領域理論に立脚
した「神の物理学」に他ならない。
==>> 私個人の感覚としては、神だ愛だ情緒だなどという言葉が
物理学の本に混じってくると頭の中が非常に混乱してくるので、
この本を読んでいくに際しては、すべてを「(完全調和である)
真空の物理学」と読み替えることにします。
ここまでのイントロを読むと、今までに読んできた様々な
物理学系の本で議論されていた相対論と量子論を統合する
新しい理論への期待があったのですが、それがこの
湯川秀樹博士の「素領域理論」かもしれない、あるいは、
物理学と形而上学を統合する理論がもしかしたらこれかも
しれないという期待を抱かせます。
元々、いままでに様々な本を読んできた私の動機付けは、
人間の意識というものは物理学で説明できるのかという点に
ありました。
ですから、ここで述べられるような形而上学と物理学の統合
というのは、まさに私が期待していることだからです。
私がいままでどんな本を読み漁ってきたかについては、
こちらでご覧ください。
http://baguio.cocolog-nifty.com/nihongo/2021/06/post-0915f1.html
p19
「完全調和の自発的破れとしての素領域と素粒子」
p20
つまり、真空の中に生じる完全調和の自発的破れの大多数は泡の如き
3次元の立体領域の形成を取ることになるが、その3次元の自発的破れ
の各々を「素領域」と呼ぶ。
こうして真空の中に生じた自発的破れとしての素領域の全体を
「宇宙空間」あるいは「空間」と呼ぶ。
p21
そもそも真空は完全調和のみが存在する完全無欠な状況にあったため、
そのごく一部に完全調和の自発的破れが生じたときにはその破れた
完全調和が速やかに復旧するような流れが生まれることになる。
理論物理学において「南部・ゴールドストーンの定理」と呼ばれる性質が
それだが、・・・「ゴールドストーン粒子」と呼ばれている。
・・・形而上学的素領域理論においては、このゴールドストーン粒子の
ことを「復元エネルギー」と呼ぶ。
==>> さて、ここで盛んに出てくる「自発的破れ」なんですが、
ネットで検索してみますと:
「対称性の自発的破れ」
「量子力学がつかさどる世界にみられる「真空」は、本当の
からっぽではなく、最も低いエネルギーをもつ状態で、全体が非
対称になっている。これは、もともとの真空にあったはずの
対称性が自発的に破れたものと考えられている。南部陽一郎(現・米
シカゴ大名誉教授)は1960年代初め、この破れのしくみを畑違い
の超伝導現象の理論探究を通じて解明し、素粒子物理に取り込んだ。」
「この現象により、ビッグバン後の宇宙の生成について、矛盾なく
論証することができる。昭和36年(1961)にこれについての理論
を発表した南部陽一郎が、平成20年(2008)ノーベル物理学賞を受賞。」
・・・つまり、これを合わせて読んでみると、
元々は真空だけであったところに「自発的対称性の破れ」が
生じて、破れたところに、我々が住んでいる宇宙空間が
出来た・・・ということのようです。
要するに、我々宇宙人は、完全無欠の世界が破れてできた
半端もんの宇宙であるらしい。
p23
ただし、真空の中に完全調和の自発的破れとしての素領域が多数発生して
いる場合には、一つの素領域から他の素領域へと転移することも考えられる。
このように素領域から素領域へと跳び移っていく復元エネルギーを、
素領域理論においては物質の最小構成単位である「素粒子」だと考える。
p26
「量子力学と場の量子論」
p27
素粒子の運動をその運動経路に着目して記述する理論的枠組みは「量子力学」
と呼ばれる。
第二の手法は、一つの素粒子に着目してそれがどの素領域へと順次転移していくか
を追うのではなく、それぞれの素領域に着目しそこに素粒子が存在するか
存在しないかを順次記述していくことになる。
p28
素粒子の運動をその運動断面の変化として記述する理論的枠組みは「場の量子論」
と呼ばれる。
==>> ここでは、「量子力学」は台風観測に例をとれば、飛行機で行う
伴走観測であり、「場の量子論」は台風の定点観測であると
しています。
p33
「時間と光速度」
1個の素領域に滞在する確率が最も小さい「スカラー粒子」は「スカラー光子」
と呼ばれ、「光子」と呼ばれる「光」の素粒子の一種に他ならない。
このスカラー光子は素領域の集合の中に「距離」の概念を導入するときの基本
となり、それによって素領域の集合は「光」が張る被覆空間としての3次元
ユークリッド空間のなかに埋め込むことができたのだ。
p34
こうして、素領域の集合である「空間」には「スカラー光子」つまり「クロノン」
によって「距離」の概念が導入されるだけでなく、同時にすべての素領域が
「今」の状態から一律に影響を受けて「時を刻む」ように変化することで「時間」
の概念が導入されたわけだ。
==>> ここでは、素領域理論において、素粒子の一つである最速の「光子」
が素領域から素領域に移動していくことによって、距離の概念と
時間の概念が導入されることを説明しています。
p35
この「宇宙空間」においては「光」よりも速い速度で「空間」の中を移動する
ことはできないわけだが、この事実を原理として仮定したものがアインシュタイン
の「相対性理論」に他ならない。
つまり、湯川秀樹博士の素領域理論はアインシュタインの相対性原理の基礎を
与える、より深いレベルの物理理論だと評価することができる。
==>> こういう考え方が世界中の学者に認められるといいんですが、
なかなかそこは難しいようです。
素人的には、神だ愛だという言葉を理論物理学に混ぜてしまう
のは逆効果だと思うんですけどねえ・・・・
p46
シュレディンガー方程式は水素原子以外の様々な原子分子などの内部運動を
解明するためにも利用されてきたが、その理論体系は「量子力学」と呼ばれている。
==>> シュレディンガーについては、過去に読んだ本に盛んに出て来た
んですが、「シュレディンガーの猫」の話ぐらいしか頭に残って
いません。 とほほ・・・・
これを契機に「多世界」とか「多宇宙」の本を読んだんですが。
「シュレーディンガーは,箱の中で放射性原子(→放射性同位元素)
が自然崩壊すると毒ガスが発生し,中にいるネコが死ぬという
仕組みの装置を考えた。原子がいつ崩壊するかは量子力学的
プロセスなので一定ではなく,ネコがいつ死ぬかも一定ではない。
人間がネコを観測するまで波の収縮が起こらないとすれば,
観測前は生きているネコと死んだネコが共存することになり,
奇妙だとシュレーディンガーは指摘した。コペンハーゲン解釈の
支持者の多くは,原子の崩壊を装置が検出した段階で波の収縮が
起こると考えるが,それは厳密には証明されていない。多世界解釈
の支持者は,ネコが生きている世界と死んでいる世界が実際に
共存しているのだと考える。」
p50
「波動関数の正体」
湯川秀樹博士の素領域理論においては1926年にエルヴィン・シュレーディンガー
が導いた素粒子の運動を記述するシュレーディンガー方程式は、完全調和の
復旧エネルギーが一つの素領域から別の素領域へと転移していく様を描くものだった。
p51
・・・多数の素粒子が互いに相互作用しながら運動する場合のいわゆる
「多体問題」・・・・・この「量子多体問題」を確率制御問題として見ていくことで、
この世界の中に存在する素粒子の複雑な運動を制御する制御変数としての波動関数
が、実はこの世界の裏側ともいうべき完全調和の真空の状況を反映しているという
事実について指摘しておきたい。
p52
つまり、宇宙空間に存在して互いに複雑に相互作用する素粒子も、さらにはこの
宇宙の一方の果てと他方の果てに位置するために物理的に切り離されていて
相互作用していないと思われる素粒子も、すべての素粒子は一つの波動関数・・・・
によってその運動が完全に制御されているのだ。
p53
ところが、湯川秀樹博士による素領域理論から見れば、このような量子力学における
異様な多重構造の原因は、この宇宙空間を素領域の集合ではなく、その被覆空間
としての3次元ユークリッド空間であるとしていることにある。
素領域構造を無視しているために、波動関数を存在させる場所がこの宇宙の中にも
外にも見出せないでいるのだ。
p54
波動関数というものは、完全調和である真空の中に自発的対称性の破れによって
発生したすべての素領域がどのような分布配向を示しているのかを表わすもの
であり、それはすべての素領域を包含する真空の上に定義された複素数数値
関数に他ならないのだ。
p55
この意味で、この宇宙に存在するすべての素粒子が織り成す森羅万象は、
この宇宙空間を構成するすべての素領域を包含する神の側のすべてので
与えられる波動関数によって完全に制御されていることになる。
==>> p55に神という言葉が出てきましたが、
私はこれを「完全調和の真空の物理学」と読み替えます。
つまり、宇宙空間は素領域の集まりなわけですが、それを
さらに包み込んでいる真空があるというイメージでしょうか。
ところで、波動関数なんですが、いくつもの本で読んだにも
拘わらず、なんだったっけ? なので、再チェック:
https://kotobank.jp/word/%E6%B3%A2%E5%8B%95%E9%96%A2%E6%95%B0-115386
「量子力学において、原子・分子および原子核・素粒子の状態を
表すのに用いられる座標の関数のこと。状態関数ということもある。
座標の関数のかわりに運動量その他の量(力学変数)の関数を
用いることもある。」
「一般には,波の動きを表現する時間と空間の関数.しかし,
量子力学の一形式である波動力学が出現してからは,対象と
なる系の量子状態を表す状態関数と同意義に使われている.
波動関数の絶対値の2乗は,対象としている系の状態の
その空間と時間に存在する確率に比例する.」
== その2 に続きます ==
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