知念実希人著「機械仕掛けの太陽」の感想 ― パンデミック小説というよりコロナ・ドキュメンタリー?
知念実希人著「機械仕掛けの太陽」の感想 ― パンデミック小説というよりコロナ・ドキュメンタリー?
通常であれば「xxxx」を読む・・・として、ダラダラと読みながら気になったところを
つまみ食いする処ですが、今回は時間の都合で一般的な感想文を書くことにしました。
まず最初に、私が過去に読んだパンデミック小説は、下のサイトにある10作品の中で
2冊のみです。
パンデミック(ウイルス)小説のおすすめ作品10作
https://fictionpot.com/pandemicnovels
まず第一には、なんと言っても、カミユの「ペスト」ですね。
ひとつの町が完全に封鎖されて、様々な人物がそれぞれの思いを抱きながら活動します。
それぞれの人生観を描く物語という感じです。
100分de名著 アルベール・カミュ“ペスト”
https://www.dailymotion.com/video/x7taeu5
そして、日本人の作品では、松本清張の「復活の日」です。
映画にもなりましたが、やはり小説の方が面白かった。
これは完全にSFとしての面白さでした。
https://www.youtube.com/watch?v=P0l6KRziz0U&t=29s
さて、そこで、今回の「機械仕掛けの太陽」ですが、概略は下のアマゾンサイトで
ご覧ください。
機械仕掛けの太陽 単行本 – 2022/10/24
「現役医師として新型コロナを目の当たりにしてきた人気作家が満を持して描く、
コロナ禍の医療現場のリアル。
2020年初頭、マスクをして生活することを誰も想像できなかった――
これは未知のウイルスとの戦いに巻き込まれ、〝戦場〟に身を投じた3人の物語。」
アマゾンでの読者評価をみると、
星5つ 64%、 星4つ 19% そして、 星1つは9% となっています。
おおむね好評ですが、約1割強がネガティブな評価をしていることがわかります。
内容的には、医療関係者のウイルスとの壮絶な戦いを、時系列に描いていますので、
過去2年半にどのようなことがあったのかを振り返るには格好の小説であると思いますが、
上記の二冊のような文学でもなくSFでもなく、ほとんどドキュメンタリーという
雰囲気です。
ただし、ネガティブな評価が1割程度あるというのは、おそらく、政治的な意味合いで
立場が異なるひとであったり、いわゆる陰謀論者や反ワクチン派の人たちが一定程度いる
ということではないかと思います。
また、ほとんどが医療関係者の周辺を描いていますので、「ペスト」のように社会全体
の様々な混乱を振り返ってみるというものではありません。
ちなみに、この本は、埼玉医科大学の病院での取材を元にしているようです。
もし、「ペスト」のように、社会全体での様々な人々のうえに起こった様々な出来事や
その心情を描いていれば、文学として未来に残るものになったのかもしれません。
そういう意味合いで、私が星をつけるとするならば、星4つにします。
夏川草介著「臨床の砦」
http://baguio.cocolog-nifty.com/nihongo/2021/05/post-ddcf4c.html
「p10
普通、肺炎なら、咳が出る、痰が出る、ぜいぜいと荒い息をして、苦しいと
訴える。 ところが新型コロナウイルス感染症では、酸素状態が悪化している
にもかかわらず、普通に歩いている患者がいる。」
==>> 私がフィリピンのロックダウンが始まって一か月経った時に
日本へ一時帰国したのは昨年(2020年)の4月中旬でした。
もう一年以上経ちますが、新型コロナウイルスの感染症が
どのような病気なのかについては、未だに正体不明である
ようです。 いわゆるファクターXが何なのかについても
結論は出ていないようです。
この本が出版されたのは2021年4月28日となっていまして、
本の内容は概ね2021年の1月までの内容となっています。
そして、今回のこの本は、2022年10月に出版されていますので、
2020年のコロナ発生からおよそ2年半の時系列での描写になっています。
日本人小説家が世界の文学史に残る作品を書いてくれることを期待します。
そして、ノーベル文学賞を取ってもらいたい。
=== 終 ===
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