ムーギー・キム著「そっか、日本と韓国って、そういう国だったのか」を読む ―5(完)― 歴史教育は本来視野を狭めるため、 日韓併合条約と東京裁判の問題点、安倍首相が邪魔をした南北接近

ムーギー・キム著「そっか、日本と韓国って、そういう国だったのか」を読む ―5(完)― 歴史教育は本来視野を狭めるため、 日韓併合条約と東京裁判の問題点、安倍首相が邪魔をした南北接近

 

 


 

第5章 ここがヘンだよ日本の建前、不思議な議論の3大パターンと4大レトリック」

に入りましょう。

 

 

p310

 

「日本の歴史認識」という言葉も、しばしば実態を表わしておらず、たとえば、自民党右派

とリベラル政党、同じ国民でも高齢者とバブル世代とZ世代では、「日本の歴史認識」に

大いに幅がある。

 

p311

 

さて、近年の日本のネット空間で何に関する書き込みが最も多かったか・・・

 

・・・しかし、日本のネット空間で蔓延する「韓国」という存在は、その大多数が実態から

あまりにもかけ離れている。

脳内で、社会的に憎悪の対象としての「韓国」という恐るべき概念が構築されており、

もはや「この国が諸悪の根源である」という幻覚を見るようなレベルに達している人も

いるようだ。

 

・・・令和の日本でみられる歴史問題の文脈は、明治時代の建前や昭和初期のプロパガンダ、

あるいは奈良時代の神話に、いまだにガッチリ縛られていることが少なくないのだ。

 

==>> つまり、日本人の脳内の「韓国」は、その実態と大きく異なっていて、

     その中身は神話や明治時代に遡るものになっているんだそうです。

 

p312

 

バブル崩壊による社会不安の増大とシンクロしたからでもあろうが、戦前を正当化・美化

する言説が急速に増えていった。

 

・・・一部の証拠の否定で問題全体の否定につなげたり、例外的事例の無理な一般化が

じつに多いのだ。

 

==>> 要するに、日本側に余裕がなくなってきたから、枝葉末節な議論をして

     勝ち誇りたいという筋書きでしょうか。

     きちんと現実の森全体を見なさいってことなんでしょうね。

 

 

p313

 

古今東西共通しているともいえる「歴史修正主義レトリック」への免疫がない人は、

国粋主義ウイルスに感染しやすい。

 

たとえば「祖父母の名誉や日本の誇りが、反日勢力に貶められている」という「戦時の

政治指導者への批判を、祖父母への批判にすり変えた扇動」に、見事に煽られるのだ。

 

==>> おお、そういう感じのレトリックなんですね。

     私自身に関して言えば、高校時代ぐらいまでだったら結構国粋主義に

     染まってしまいそうな性格だったように思います。

     まさに教科書ぐらいしか読まない、校則にもしばられる生真面目で固い人間

でしたので・・・

     しかし、東京に出てからは、ビジネス英語を学び、米系の商社、石油会社、

     半導体の会社と米系企業のみをフラフラ歩き回ったせいか、すっかり

     国粋主義の鱗は剥がれ落ちてしまったみたいです。

 

     そして、その後は、日本語教師として、オーストラリア、西アフリカの

     ベナン共和国、フィリピンで教えている間に、それぞれの国の人たちとの

     交流があったので、どういう人達でどういう文化をもっているのかが

     知りたいという興味のほうが強かったようです。

     特にフィリピンに関しては、太平洋戦争中の日本軍の加害者としての

     側面をいろいろと読んだり聞いたりしましたので、国粋主義にはなれなかった

     みたいです。

 

 

p315

 

そもそも「いざ韓国人と交流してみると全然反日ではなく、韓国で優しくしてもらった」

などというケースが大半ではなかろうか。

 

この「韓国の一般大衆は日常生活において、まったく反日傾向が見られない」というのは、

右は「産経新聞」の黒田勝弘氏による・・・から、左は「毎日新聞」の澤田克己氏による

・・・まで、ほぼ同様に記されている。

 

p317

 

韓国での「親日」とは、戦前に日本の植民地支配に協力した人に対する表現であり、今の

日本や日本文化を好きな人を指す言葉ではない。

 

また日本では、・・・・日本文化やいまの日本がいくら好きでも、右派の歴史観に異を唱え

ると、日本人だろうが外国人だろうが、「反日」レッテルを貼られてしまうのが実態だ。

 

==>> ここでは、「反日」の定義が変なんじゃないかと言っているんです。

     ある特定の日本の右派の歴史観に賛同できない人達は、それが外国人であろう

     が日本人であろうが「反日」ということになってしまうらしい。

     まあ、それは、戦時中に「非国民」と呼んでいた構造と似ているのでしょう。

 

 

p320

 

少なからぬ日本のメディアは日韓の対立構図を煽って、視聴率を稼ごうとする。

しかし韓国現地の日本人は、実態との違いをよく理解されていることであろう。

 

p321

 

日本のメディアを見て「反日韓国」だと身構えて韓国に来られると、日本人のお客様へ

のあまりの歓迎ぶりに、かなり拍子抜けされることであろう。

 

韓国の対日意識の大半は、

過去は過去、未来志向で共に協力したい。 過去の歴史に関しては、きちんと認めて、

自分たちの民族的記憶に共感してくれたら、それでいい」

・・・・というのが、大多数の意見だということだ。

 

==>> 結局、日本人は日本のメディアに煽られないように気を付けてくださいね

     ってことのようです。

     まあ、メディアも商売ですからねえ、視聴率を稼がないと金にならないし・・

 

 

 

p324

 

日本では、嫌韓ヘイトスピーチでお金を集めているような団体があるのと同様、韓国にも

慰安婦被害者を食いものにして、恥知らずなことに議員にまでなった人物も存在する

(このような不公正がまかり通るようになったことが、李在明氏が僅差で敗北して、政権

交代が起こった一因であるように思われる)。

 

p325

 

日本で相手国との歴史問題を教えることイコールそれは「反日の敵国だから」という認識

は、かなり無理がないだろうか?

日本は原爆を落とされ、東京大空襲で何十万人死んだことを教えるからといって、日本人

は「反米教育をしている!」とアメリカから批判されることはない

 

==>> これはまったくおっしゃる通りだなと思います。

     個人的には、国際化が今後も大きく拡大する世界を考えるならば、学校でも

     近現代史をきっちり教え、それも相手国事情を含めた両論併記で国民に

     情報を与えることが相互理解に寄与するのではないかと思います。

 

     極端な話、日本人がある外国に行って、その相手国に大きな被害を与えた

     歴史すら知らないで、的外れな話しかできないようなことでは、日本では

     どんな教育をしているのかと足元を見られるようなことになるのではないか

     と思います。

     なにも、日本国内で右派教育や左派教育をやれというのではなく、

     被害をうけた外国の一般人がどのような意識を日本に対してもっているかを

     知らせるべきだということです。

 

 

p328

 

じつは香港でもシンガポールでも、街の目立つ場所に抗日戦争記念館や日本軍虐殺被害

者追悼碑が立っている。

しかしながら、「香港、シンガポールは反日教育を止めよ!」というような不満が日本

から聞こえないのは、負の側面の歴史教育とは関わりなく、極めて親日的な国や都市も

存在しうるということだ。

 

それではなぜ、韓国は事情が異なるのだろうか?

 

p329

 

最も大きな要因は、韓国に対してだけ「合法的な併合だった」という建前が日本には存在

するということである。

 

たとえば、フィリピンやベトナム、ミャンマーなど東南アジアの国々に対しては、不当に

与えた甚大な被害を日本が認定して謝罪・賠償を済ませている

中国に対しても、大多数の人はいまさら「合法的な満州支配だった」などとは主張しない。

シンガポールに対しても準賠償を済ませている。

 

==>> 最低でも、こういう話は、学校の歴史の授業で教えて欲しいもんです。

     ついでに、ドイツが戦後どのように振る舞ったかについても記述があると

     いいですね。

 

     ところで、昔「日韓歴史共同研究」という計画があるというニュースを聞いた

     ことがあるのですが、それを検索してみたところ、

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E9%9F%93%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E5%85%B1%E5%90%8C%E7%A0%94%E7%A9%B6

     「当研究が不成功に終わった主な原因として、委員の1人である木村幹は「日韓

の政治的意図の介在」「共同研究の制度的不備」「対立を解決する為の手段の準備

不足(全会一致か多数決かという基本的なルールさえ存在しなかった)」の3点を

挙げている。」

・・・・なんとまあ、やっぱり失敗に終わっていたんですね。

元々が政治的対立があってのことですから、「政治的意図の介在」というのは

どうしても出てくるんでしょうけど、冷静な研究議論が保証されないと無理

ですね。

 

p335

 

1965年の日韓基本条約は、韓国内で「屈辱外交だ」との激しい反対運動が沸き起こる

なか、クーデターを起こした軍事独裁政権が、アメリカからの圧力と目先の資金需要から、

民衆の反対を押しのけて結んだ合意であった

 

ちなみに資金の多くは日本製のものを買う約束になっており(一部で“賠償ビジネス利権”

などと呼ばれる)、日本にとっては「韓国経済の対日依存構造」をつくり上げるよい投資

でもあった。実際にその後、韓国は巨額の貿易黒字を日本にもたらしつづけている。

 

==>> そうでしたか。チョムスキーさんの本を読んでいると、アメリカが何でも

     できる時代だったのだろうと推測ができますね。

     おそらく反共の砦をつくるというアメリカの意図があったのでしょう。

 

     「朝鮮特需」のサイトに以下のような解説がありました。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E7%89%B9%E9%9C%80

     「アメリカが日本の防衛を丸抱えできるわけもない以上、アメリカの同盟国とし

冷戦に参加できる工業国としての経済成長を促す占領政策の転換が行われた。

当時のアメリカが日本の復興を支援したのは親切心からではなく、有利子の

借款の返済や駐留経費の負担が可能な経済力を身に付け反共の砦として独り

立ちさせるためであるとされる。」

 

・・・まあ、私なんぞは1950年生まれですから、いわばこの朝鮮特需

のお陰で貧しい中をなんとか育てられたってことになりますかねえ。

 

 

p342

 

日韓併合条約は形式上は「合法」だと、当時の「国際社会」は認めているのである。

ただし、ここで重要なのは「国際社会」というのは、当時アジア・アフリカを植民地

支配して分け合っていた欧米列強、なかでも米英を指すにすぎないという点だ。

 

当時、イギリスは中国に麻薬を売りつけて、それに抗えば軍事力で屈服させた。

・・・アメリカも「桂――タフト協定」で、フィリピンにおける自国の権益の承認と

引き換えに同調した・・・。

 

==>> まあ、つまり、ちょっと古い言い方でいうならば、「悪の枢軸」であった

     米英が「国際社会」として日韓併合条約を認めたということなんですね。

     もっと平たくいうならば、ヤクザの親分衆が集まってお互いがやっている

     ことを容認したってことですね。

 

 

p362

 

ことさらにナチスからのユダヤ人脱出を助けた日本人の話が教えられる、たしかに

その人は立派ではあるが、そのナチスの数少ない同盟国として、第二次世界大戦を

共に戦ったのは自国だという認識は、もはや完全に忘却の彼方である。

 

p363

 

そんな部分肯定をしたところで、朝鮮半島だけでなく香港にもシンガポールにも

フィリピンにも中国にも台湾にもある、当時の陸軍による大量の無差別虐殺追悼碑や

記念館の存在を消し去ることはできない。

 

これらの史実をまったく次世代の子どもたちに教えないで、そんな彼ら彼女らが

これらの国々や地域の人たちと交流する将来のための適切な教育が、できているといえる

だろうか。

 

==>> 前段の話は、杉原千畝さんのことですね。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%89%E5%8E%9F%E5%8D%83%E7%95%9D

     「19407月から8月にかけて、外務省からの訓令に反して大量のビザ

(通過査証)を発給し、避難民を救ったことで知られる。その避難民の

多くがユダヤ人系であった。「東洋のシンドラー」などとも呼ばれる。」

「戦後ソ連の収容所から帰国を果たした後、千畝は1947年(昭和22年)に

外務省を辞職。幸子夫人によると岡崎勝男・外務事務次官から口頭で「例の件」

の責任を免官の理由として告げられたという。」

 

「旧外務省関係者の千畝に対する敵意と冷淡さは、2000年に河野洋平外務大臣

による名誉回復がなされるまで一貫していた。こうした外務省の姿勢に真っ先

に抗議したのは、1974年から1981年まで東京に在住していた、ドイツ人の

ジャーナリスト、ゲルハルト・ダンプマンである。」

 

杉浦千畝のことについては、福井県敦賀市のこちらの資料館で兼学した

ことがあります。

人類の港 敦賀ムゼウム

https://tsuruga-museum.jp/modules/permanentexhibition/index.php?action=PageView&page_id=5

     「1940(昭和15)年~1941(昭和16)年、ユダヤ難民はナチス・ドイツの迫害

等から逃れるため、リトアニアのカウナス領事代理・杉原千畝氏が発給した

「命のビザ」を携え、リトアニアからウラジオストクを経て、敦賀港に上陸しま

した。苦難の旅路を経て敦賀に降り立った彼らは、敦賀の街が「天国(ヘブン)

に見えた」と後に語っています。」

 

後段の、フィリピンにおける日本軍による虐殺を記憶に残す追悼碑などは

各地にあると思いますが、マニラにある追悼碑については、こちらの記事

に紹介されています。

 

祈念碑メモラーレ・マニラ1945 罪なき戦争犠牲者の墓石

https://www.manila-shimbun.com/series/sights/series164485.html

「祈念碑は市街戦から半世紀を経た一九九五年二月十八日、「罪なき戦争犠牲者

の墓石」として完成した。戦闘で肉親を失った比人遺族らが建立に尽力し、最激

戦地同市イントラムロスが設置場所に選ばれた。」

 

ちなみに、太平洋戦争での日本人犠牲者は50万人ほどで、フィリピン人犠牲者

は100万人以上とされています。

 

 

p364

 

「目的と文脈を無視した部分肯定で、全部肯定する」パターンがネット空間に広く蔓延

している。 そんななかでも感染力が強いのが、「近代化が進んだからいいじゃないか」論

である。

 

p365

 

しかし、実際は1960年代の韓国の一人当たりのGDPはアフリカ諸国を下回る

最貧国水準だったし、そもそもその近代化は支配者が搾取するために行なわれている。

 

==>> その外見的な繁栄は誰のための何のための繁栄だったのかって話ですね。

     植民地の目的を考えれば、誰にでもわかる理屈だと思います。

     少なくとも、欧米列強の植民地支配からアジアを解放するという国が

     自ら植民地支配をしてはいけません。自己矛盾もいいとこです。

     で、こちらのサイトにそのような議論がありました。

 

     「太平洋戦争はアジア解放のための戦いだった」説は本当か?

     https://news.yahoo.co.jp/byline/furuyatsunehira/20200815-00193356

     「実際には日本の利益だけを考えた作戦行動であった。しかし「対米決戦のため

の資源の確保」では大義名分として弱いから、日本の戦争大義はあくまで「アジ

ア解放のための戦い」をスローガンとした。このスローガンを真に受けたのが、

先に述べた「太平洋戦争(―彼らは大東亜戦争と呼称する)はアジア解放のため

の戦いであった」とする戦後右派の主張である。」

「日本軍に占領されたフィリピンでは、そもそも日本の戦争大義が受け入れら

れず、またアメリカの庇護下のもと自由と民主主義、そして部分的には日本より

高い国民所得を謳歌していたフィリピン人は、日本の占領統治に懐疑的で、すぐ

さまゲリラ的抵抗や抗日活動が起こった。これは華僑の多いシンガポール(日本

は同地を占領後、昭南島と改名)でも同様で、日本の戦争スローガンに同意せず、

激しい地下抵抗運動が盛り上がった。」

 

それで思い出したのが、フィリピン・バギオ市で開催されたある戦没者慰霊集会

での講演です。

その講演者は、幼い頃にバギオ市で日本軍の捕虜収容所に入れられたという

中国系フィリピン人の医師でした。

「日本のスローガンは良かったんだけどねえ。やり方が酷かったよねえ。」

ということでした。

スローガンは素晴らしかったんだけど、真意が見え見えだったってことです。

 

 

p376

 

アジア各国に対しては大変な惨禍をもたらした侵略戦争だったが、少なくとも東京裁判

の内容に関して、日本が米英に対して不満を抱く理由は理解できる。

欧米列強は中国、インド、東南アジアをはじめ世界各国を先に侵略したのに、日本の

侵略だけが裁かれるのかと。 

 

日本は、朝鮮半島や中国に対しては侵略をしたが、少なくとも米英に対しては一方的

に悪いわけではないだろう。

 

 

p377

 

戦時の日本軍の行動とその後の正当化の動きが異常に卑怯なのではなく、有史以来、

どこの国でも残念ながら似たり寄ったりであるという悟りである。

 

p378

 

そもそも、どこの国も新たな中央集権政権ができたり、自国が強くなったり隣国が

弱くなったりすれば、隙あらば侵略戦争をしかける傾向がある。

 

==>> 東京裁判については、私はほぼ何も知りませんので、ここでお勉強

     しましょう。

     https://nihonshimuseum.com/international_military_tribunal_for_the_far_east/

     「この東京裁判ですが、数多くの問題点が指摘されているのが特徴です。

裁判官全員が戦勝国の人々で構成された事や、米軍が行った原爆投下などの

民間人への虐殺行為は全く罪に問われていない事、A級戦犯処刑の日付、起訴状

における「平和に対する罪」が第二次世界大戦当時は存在しなかった事などの

論点が指摘されています。

とりわけ最後の「平和に対する罪」については、戦勝国のパール判事からも指摘

が入っており、最初から日本に罪をかぶせるための裁判だったという説も根強

く残されています。」

4.1 平和に対する罪(A級犯罪)

4.2 (通例の)戦争犯罪(B級犯罪)

4.3 人道に対する罪(C級犯罪)」

「人道に対する罪は主にナチス・ドイツのホロコーストにおいて適応されま

したが、日本は特定の民族を絶滅させる意図が無かったため、この人道に対する

罪が適応される事はありませんでした。」

 

     ・・・A級、B級、C級の意味を始めてしりました。

     正直言って、原爆はC級犯罪にならないのかという大きな疑問を感じます。

     また、今進行中のプーチンによるウクライナ侵略はどう裁かれるのでしょうか。

 

 

p381

 

歴史教育は本来、政治権力からの「集団的アイデンティティの押し付け」で、視野が

狭められがちだという側面を自覚する必要がある。

だからこそ、一人一人が自主的に、自国と他国の双方の視点で全体像を見ようとしなければ、

国際感覚など身に付くわけがないのである。

 

==>> 学校の歴史の授業で使うような教科書は、そもそもが政治権力からの

     押し付けなんだから、自分で自主的に双方の立場を学ばなければダメだよ

     ってことなんですねえ。 どうも私は学校教育に期待し過ぎるのが的外れ

     のようです。 でも、それにしても、教科書には是非両論併記でやって

     もらいたいなと思います。 自分で考える癖をつける契機にするような

     教科書での仕組みづくりです。

 

 

p384

 

日本国内でも、福島県の一部(会津)と山口県(長州)等の人々との間に根深い

葛藤が存在する。

いまだに、この出身地のために両県の人々の結婚が破談になることもあるくらいの

根深さだと聞いている・・・・・

 

沖縄の人が反戦への思いが強いこと、また広島・長崎の人が、自分自身が直接経験

していなくても、集団的記憶として反核への思いが強いことと同様の構造である。

 

==>> 会津と長州の葛藤が今も実際に残っているとは知りませんでした。

     会津、明治維新より「戊辰150年」 長州になお遺恨?

     https://style.nikkei.com/article/DGXMZO26315670Q8A130C1EAC000

     「会津と長州は仲直りはできないが、仲良くはできると訴えた。戊辰戦争で薩長

は目的のために手段を選ばず、権謀術数の限りを尽くした。官軍と賊軍という

区分けもその中から生まれたこと。結果的に勝った薩長が官軍、負けた会津が

賊軍となったが、長州も一時は賊軍だったし、会津が朝敵となったことはない。

だから双方とも賊軍などと言ってはいけないのに、会津だけが長く賊軍の汚名

を着せられた。そういう歴史の事実を消すことはできない。歴史をなかったこと

にして握手する仲直りはできない」

     「私は歴史家ではないが、小学生時代に会津が賊軍だったと教える歴史の教科書

を使わされた。親からは『会津は悪くない』と教えれたものだから、どうしても

薩長憎しという感情が残った。

 

     ・・・・確かに、こういうのを見ると、集団的アイデンティティというのが

     邪魔をしているってことがあるんですね。

     それにしても、日本の戦国時代は、多くの武将たちがそれぞれの国を

     背景にして悲惨な戦いを続けていたわけだし、「鎌倉殿の13人」みたいに

     身内ですら殺し合いをしていたんですもんねえ。

     そして、規模が大きくなりながら、相変わらず理屈をつけては人殺しを

     世界中でせっせとやっているんですから、人類とは本当にバカな動物です。

 

 

p395

 

左右両方を怒らせないために曖昧にして、実質何も教えないという長期間続いた戦後の

近代史教育は、国際感覚や歴史教養の獲得および日韓の信頼醸成という点においては、

ほぼ無意味であった。

 

p397

 

現実的には、独りよがりの愛国心教育でもいけないが、日本だけが悪かったかのような

教育でもいけない。 また曖昧にして何も具体的に教えないのは、もっと悪い。

 

==>> インターネットでこの辺りの事情が分かるかなと思って検索してみたの

     ですが、納得できるような内容のサイトは見つかりませんでした。

     全体的な雰囲気としては、「左右双方からのいろんな抗議などが入って

     来ることが予想されるので、面倒くさいからやらない」という感じで

     しょうか。 PTAも左右いろいろでちゃちゃが入るでしょうし・・・

     もちろん教える側の日本史の先生の現場の時間的な意味での難しさなど

     も書いてありましたが・・・

 

p401

 

歴史に関しては国粋的な内容も多いウィキペディアばかり参考になさってはいけない

代わりに「グーグルスカラー」などで、学術論文(細かいことを言うと、インパクト

ファクターの高い厳正な審査をしていると認められているジャーナルに載っている

論文)を読み込んでいただければ、正確な認識が強化されることだろう。

 

==>> せっかくですから、グーグルスカラーとは何かをチェックしておきましょう。

     https://paperpile.com/ja/g/google-scholar-guide/

     「Google Scholar (グーグルスカラー: GS) は、Googleが提供している無料の

論文検索エンジンです。Google Scholarは、通常のGoogle検索のようにWeb

のインデックスされた情報からではなく、出版社、大学、または学術Webサイ

トのリポジトリから検索を行います。」

学術論文みたいなものの検索エンジンはこれ以外にもいろいろあるそうです

から、きっちり調べたい方はそういう手段を使うのがいいようです。

 

 

p426

 

実際のところ、世界各国から留学生が集まるMBAなどでも、日本人と韓国人は何かと

近いので仲が良い。 

またグローバル金融機関やコンサルティングファームの集まりでも、日本人社員と

韓国人社員は結局のところ、仲が良いのだ。

 

これは、国同士も仲が悪いが、個人同士になっても葛藤が根強い中東の隣国関係(たとえば

レバノンとイスラエル)とは、かなり異質である。

 

==>> この辺りの日本人と韓国人の職場などでの関係について、FACEBOOK

     元の職場の人たちに尋ねてみたところ、おおむね仲が良いとの反応でした。

     元の職場というのは米系のグローバル・カンパニーですから、国際感覚を

     持った人達なのかもしれません。

 

 

p429

 

人間は社会的な生き物なので、所属すると思っている集団の歴史を学べば、自分自身

の直接的な体験に依拠しない「民族的記憶」とでも呼ぶべき集団的記憶が形成される

 

その神話が古ければ古いほど、その後の代の多くの人に伝承されるので、聖書や

コーランのように宗教的な影響力を持ちはじめる。

 

p431

 

私はこの箇所を書きながら埼玉県の日高市にある高麗神社を訪れた。 そこは高句麗

滅亡後の8世紀初頭に、高句麗の遺民1799人が移住した場所であり、高麗川など

いたるところに高麗の文字を見ることができる。

 

この人達は無数の遺民の一例にすぎないのである。

 

==>> 高麗神社(こまじんじゃ)にはぜひ行ってみようと思います。

     公式サイトにはこのような記述があります。

     https://komajinja.or.jp/about/

     「天智天皇5年(666)年、連合した唐と新羅は隣国の強国、高句麗の征討を

開始しました。高句麗は危機的状況の中で外交使節団を大和朝廷へと派遣し

ます。『日本書紀』には「二位玄武若光」の名が記されており、若光が使節団の

一員として日本へと渡来した事が分かります。668年、建国から約700年間東

アジアに強盛を誇った高句麗は滅亡し、若光は二度と故国の土を踏むことは

ありませんでした。」

「また、御祭神 高麗王若光の子孫である高麗氏は、1300年・60代に渡り

家系血脈が続いており、代々当社の祭祀を司ってきました。」

 

この本の著者は在日3世ですが、高麗さんは在日60世ってことになりますか。

さて、私は、単なる流れ者みたいなので在日何世なのか・・・・

 

 

p434

 

気をつけたいのは、しばしば登場する「未来志向の日韓関係」の定義が、文化的背景の

影響からか、両国で見事に違うということだ。

 

儒教の影響が強い国における「未来志向」とは、過去の過ちを認め徹底的に謝罪した

うえで、同じ過ちを繰り返さないということを意味する。

 

これに対し、武士道的思考が残る国家での「未来志向」とは、過去にこだわらず

水に流し、過去は論じずに新たな関係を構築することを意味する。

 

==>> ああ、これはなかなか根が深い問題ですねえ。

     おまけに、韓国の中では、韓国人同士でも徹底的に罵る政敵が幾重にも

     いるそうですから。 気長にやるしかないんでしょうね。

     

 

p439

 

これは私の独り言だが、南北朝鮮再統一ないし国交正常化の際に、「その恩人は日本」

と思われるくらいの役割を果たせれば、日本と将来の統一朝鮮半島国家との関係に

決定的な影響を及ぼすであろう。

 

この役割は日本にとっては、数百年、ないし1000年に一度あるかないかのチャンス

とも言える。

 

 

アメリカ国家安全保障担当大統領補佐官だったジョン・ボルトン氏の回顧録

「ジョン・ボルトン回顧録 トランプ大統領との453日」にも、安倍晋三首相が

南北接近や米朝会議、朝鮮戦争終結宣言を妨げてきたことなどが記載されている。

 

==>> これはなかなか興味深い提案と安倍元首相の情報ですね。

     もしかしたら、日本の頭の上を飛び越えて、アメリカが北との国交を

     結んで、日本には米中国交回復の時と同じような大ショックが押し寄せる

     かもしれませんね。 ニクソン・ショックですね。

     もっとも、統一国家がアメリカ側になるのか中国側になるのか、

     はたまたロシア側になるのか、それによって日本のショック度は計り知れない

     ものになるかもしれず・・・・・

     近年のアメリカは、ほとんど国内分裂状態で、衰退に向かっていますから、

     何が起こるか分かりませんね。

     なぜ安倍さんが邪魔をしたのかご本人の声で話して欲しかったですね。

     そういう議論を日本のトップたちは日ごろからやっているんでしょうかねえ。

 

 

p440

 

2022年になり、アメリカの覇権が弱まり、ロシアが大規模な戦争を起こし、

中国への覇権シフトが進行しているときに、これらの三大国に挟まれた日韓両国が

争っている余裕はない。

 

p441

 

たとえるならば、いつまでも株式市場でいうところの「悪材料出尽くし」にならず、

継続的に日本へのイメージと評価が下方修正されることのリスクを、国益を重視する

保守派の人にこそ、悟っていただきたいところである。

 

==>> 私のような素人が言ってもせんないことなんですが、

     北朝鮮や中国のやっていることから外見的に見えることが、戦前・戦中の

     日本がやっていたことをなぞっているんじゃないかとふと思ったりする

     んです。 金さんの白馬の姿は、天皇と同じだし、習さんの拡大路線も

     日本軍のそれに似ているように見えるし、全体主義だった国民が

     ころっと民主主義に変わっちゃったりするし、極右は極左に通ずみたいな

     話もあるし・・・・

 

     まともな議論ひとつできない国会をみていると、やっぱり日本人には

     民主主義は無理なのかなと思ってしまうし、「お上」の軍事政権が長かった

     日本には「指示待ち」やら「忖度」やらが性に合っているようだし・・・

     考えれば考えるほど、わたしは悲観的になってしまいます。

     もっとも、さらっと水に流して、けろっとしちゃうんですけどね。

 

と、言うことで、この本は、今までもやもやしていたことを、課題ごとに

両論併記で分かり易く解説してあって、最後のほうでは、著者の提案などもあって、

非常にすっきりとした感じがします。

 

バランスのとれた良い本だと思います。

 

 

===== 完 =====

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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