チョムスキー著「メディア・コントロール: 正義なき民主主義と国際社会」を読む ― その2(完) J・F・ケネディ=善玉幻想を嗤う。 米軍国主義に協力する日本。

チョムスキー著「メディア・コントロール: 正義なき民主主義と国際社会」を読む ― その2(完) J・F・ケネディ=善玉幻想を嗤う。 米軍国主義に協力する日本。

 

チョムスキー著「メディア・コントロール: 正義なき民主主義と国際社会」から、

「火星から来たジャーナリスト ― 対テロ戦争はどのように報道されるべきか」

読んでいきます。

  


p079

 

「均衡状態における力の要素を無視して、国連や国際司法裁判所など、外部の調停に

解決を求める非現実的な法律尊重主義」を支持する人びとを、シュルツは非難した

 

事実、アメリカは力という要素を振りかざした。 そのときに使われたのが、

・・・ホンジュラスの基地の傭兵部隊であり、それは国際司法裁判所やラテンアメリカ

諸国、そして西半球に巣食って世界征服をもくろむ癌そのものが、非現実的な法律

尊重主義による方途を模索するのをうまく食い止めていた。

メディアも同じ意見だった。

 

==>> ここで述べているのは、おそらくアメリカ国内での法的な縛りや、国際的

     な場での法的な縛りをかいくぐるために、外国の傭兵部隊を使って、力を

     行使したということを語っているようです。

     そして、メディアもそれを支持しているということのようです。

 

p081

 

2001年に現われた「文明そのものを否定する堕落した敵」は、かつて1980年代

CIAとその仲間によって組織され、武器を与えられた自由の戦士たちだったのだ。

現在(2002年)、アフガニスタンの洞窟で彼らを探している特殊部隊が、当時の

彼らを訓練していたのである。 

 

==>> つまり、アメリカが育成した「自由の戦士たち」が、今やテロリストと

     いう敵になっているってことのようです。アメリカは敵を製造している。

     そして、結局、そのアフガニスタンからアメリカは逃げ出した。

 

p082

 

私たちの知的風土には、敵の犯罪については徹底的に調べあげる一方で、自らおかした

犯罪は決して見ようとしないーーここが重要だーーという原則があるからだ。

 

p083

 

自明の理が何であるかを、火星人は簡単に見つけられるだろう。 少なくとも、対テロ

戦争を自ら宣言した指導者たちがそれをどう理解しているかはわかるはずだ。

何しろ、彼らはいつも私たちに言っている。 われわれは非常に敬虔なキリスト教徒

である、と

 

とすれば、彼らは福音書を崇めているはずだから、「偽善者」の定義も記憶しているに

ちがいない。 福音書には、はっきりと書かれている。 偽善者とは、自分に当てはめ

ようとしない基準を他人に押し付ける人のことだ、と。

 

==>> さて、ここで火星人ジャーナリストが出てくるわけです。

     「自らおかした犯罪は決して見ようとしない」人類に代わって、客観的かつ

     冷静に事実を見ることができる火星人であるわけですね。

     単なるタコではないのです。

     

 

p087

 

私たちは日ごろから、テロの定義が非常に厄介で複雑な問題だとも聞いている。

 

1960年代の半ば、ペンタゴンを上顧客とする調査機関のランド研究所は、日本が

1930年代に満州と中国北部を攻撃したときに使ったとみられる興味深い対ゲリラ

計画マニュアル集を出版した。 私は興味をそそられ、これに関する小論も書いた。

 

日本の対ゲリラ計画マニュアルを、アメリカが南ヴェトナムで用いた対ゲリラ計画と

比較したのだが、二つは実質的にほとんど同じだった。

 

p088

 

幸い、解決方法はある。 テロを「他人が私たちにたいして行うテロ」と定義すれば

よいのだ。 この「私たち」は誰でもよい。 私の知る限り、これは報道の世界でも

学問の世界でも通用している普遍的な定義である。

 

もちろん、公式の意味でのテロは強者の武器である。 大半の武器と同様だ。 しかし、

定義にしたがえば、テロは弱者の武器なのである。

 

==>> テロの定義は複雑だということが述べられているので、確認しておきます。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%AD%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%83%A0

     「『日本大百科全書』によると、テロリズムとは「政治的目的を達成するために、

暗殺、殺害、破壊、監禁や拉致による自由束縛など過酷な手段で、敵対する当事

者、さらには無関係な一般市民や建造物などを攻撃し、攻撃の物理的な成果より

もそこで生ずる心理的威圧や恐怖心を通して、譲歩や抑圧などを図るもの」と

されている。」

「主体

テロリズムは、右翼団体や左翼団体、ナショナリズム集団、宗教集団、

そして軍隊や情報機関、さらに言うと警察などまで、多岐に渡る組織が、

彼らの目的を達成するために使う。」

 

     ・・・このwikipediaの説明によれば、主体は、軍隊や情報機関などの国も

     行うと書かれていますので、必ずしも「弱者の武器」ということでも

     なさそうです。

     ちなみに、チョムスキーさんの本には、アメリカという超大国によるテロの

     ことが多く語られているように見えます。

 

p091

 

もっともなことではある。 国際問題と外交に関する文献を見れば、アメリカのこうした

姿勢を示す用語まででている。 「威信の確立」というのがそれだ。

われわれはテロ国家であり、われわれの邪魔をする気なら結果を覚悟しておいたほうが

いい、と宣言していることからもわかる。

 

 

p093

 

ニカラグアにたいするテロ攻撃は、9・11よりもずっと悲惨なものだったことを

思い出してもらいたい。 数万人が殺されて、国土は破壊され、二度と復興できない

かもしれないのである。

 

p094

 

国際司法裁判所がアメリカの行為を国際テロとして糾弾したからだ。 国連の安全保障

理事会もこの判断を支持し、・・・・

 

しかし、この決議にアメリカは拒否権を行使し、イギリスは棄権した

 

==>> これと同じような話は、今現在進行形のロシアによるウクライナ侵略でも

     あるわけですね。

     「国連安保理 ロシア拒否権で決議案否決 ウクライナ大使は黙とう」

     https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220226/k10013502221000.html

     「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐり、国連の安全保障理事会では

ロシア軍の即時撤退などを求める決議案が採決にかけられ、理事国15か国の

うち11か国が賛成しましたが、ロシアが拒否権を行使し、決議案は否決され

ました。」

「採決の結果、理事国15か国のうち11か国が賛成し、中国、インド、UAE

アラブ首長国連邦は棄権しましたが、議長国で常任理事国のロシアが拒否権

行使し、決議案は否決されました。」

 

・・・・なんと、ロシアが議長国ですからねえ。 犯人が裁判長。

     ロシアにしてみれば、アメリカに対しては、「お前に言われたかね~~よ」と

     いう感じでしょうか。

     

 

p107

 

(ジュネーヴ第四条約)・・・この条約は第二次世界大戦後、ナチスの残虐行為を犯罪と

する合意をとりつけるために締結されたものだ。 ジュネーヴ第四条約にしたがえば、

アメリカとイスラエルが占領地域で行っていることは、ほぼすべて完全に禁止されて

いる行為である。 占領地への入植もそうだ。

 

入植はアメリカの資金提供と全面的な支援によって進められており、クリントン米大統領

とバラク・イスラエル首相(当時)のキャンプ・デーヴィッド会談では、支援のさらなる

増強が取り決められた。 この解釈を認めようとしないのは、イスラエルただ一国である。

 

==>> つまりは、国連のいかなる決議も、超大国・理事国の前では、無力だと

     いう話ですね。 それをなんとかしようという動きもあるようですが。

     「安保理で拒否権発動の常任理事国に説明求める 国連総会で決議採択 

ロシア念頭 拒否権乱用に歯止めは」

https://www.fnn.jp/articles/-/352892

「ロシアのウクライナ侵攻では、非難決議案が、ロシアの拒否権発動で廃案に

なるなど、安保理の機能不全が指摘されていて、決議の採択は、拒否権の乱用に

一定の歯止めをかけたいという狙いがあります。

しかし決議採択後、ロシアの国連次席大使は「安保理加盟国に圧力をかけるもの

で、断固として拒否する」と反論していて、実際に拒否権乱用の防止につながる

かは不透明です。」

 

・・・説明を求めるだけですから、実質的な意味は無さそうに思えますが・・

 

ここで、素朴な疑問をチェックしておきましょう。

なぜアメリカはイスラエルに大きな支援をしているのかという疑問です。

https://honsuki.jp/pickup/576

「このガザ攻撃にも、アメリカやイスラエルの軍産複合体の意図があったと

言われている。アイアンドームは、イスラエルの軍需産業であるエリスラ社や

ラファエル社などの製造によるものだが、アメリカの軍需産業の大手

レイセオンの部品も使われている。つまり、イスラエルが起こした戦争は

アメリカに利益をもたらす仕組みになっているというわけだ。」

「アメリカ国内でイスラエル・ロビーの活動を批判すれば、政治家たちは社会的

地位を脅かされたり、選挙での当選が難しくなったりする。したがって、

アメリカの中東政策というものはイスラエル・ロビーを無視しては成り立た

ない。

アメリカのユダヤ人人口は2015年現在でおよそ716万人、全体の2.5%ほどに

すぎないが、投票率が高いという特徴を持つ。それが、ユダヤ人票を政治家たち

が重視することにつながっている。」

・・・要するに、金と選挙ということですね。

 

 

 

 

「インタビュー: 根源的な反戦・平和を語る」

ここからは ノーム・チョムスキーさんと 聞き手:辺見庸さんによる対話です。

 

p117

 

率直に、こんな男、見たことがないと思ったのである。

 

第一に、ジャーナリスティックなものいいをこれほどまでに嫌う人物を私は知らない。

 

p118

 

知識人は泣き言をいわずにしっかりと闘うべきだ。 インタビューで彼はしばしば

そうした口吻を洩らし、チョムスキーを同時代のヒーローに仕立て上げようとする

当方の試みを、憮然としてはねつけたのである。

 

米国では言論統制はないという意外な発言は、したがって、そうした文脈から解釈

されるべきであろう。

 

==>> ここでは、辺見庸さんのチョムスキー像が紹介されています。

     かなりの皮肉屋であることはすでにここに出ているように見えます。

 

  

p119

 

(辺見庸)

知識人とマスメディアに対しこれほど仮借ない態度をとる人物を私はこれまでに

見たことがない。 9・11テロ以降の米メディアの異様な愛国報道や米国内外の

思想家や哲学者らの怯懦や惰弱ぶりからしても、チョムスキーの言説の多くはいまや

危険なまでに正鵠をえていると私は思う。

 

彼は1960年代のヴェトナム戦争反対デモで、作家ノーマン・メイラーらとともに

逮捕されており、当時の状況を内側から語る資格のある人物の一人である。

 

そのチョムスキーがJ・F・ケネディ=善玉幻想を嗤い、ヴェトナム戦争に本質的

には反対しなかった米国の知識人の欺瞞を口をきわめて非難した。

・・・私は少しうろたえた。

 

==>> この部分では、「J・F・ケネディ=善玉幻想を嗤い」というところが

     私のようなJFK礼賛のアメリカに憧れた時代の男にとっては、非常に意外な

     展開です。

     それだけ、幼い時から、アメリカ中心のメディアに洗脳されて育ってきた

     と言うべきでしょうか。

 

 

p124

 

ヴェトナム戦争に対する反対なんて事実上なかったんですよ。 もちろん、市民たちの

反戦運動はありました。 しかし知識人のなかにはなかったのです。 非常に限られた

反論しかありませんでした。

 

p126

 

ハト派の知識人たちはこれで自分たちの正当性が証明されたと感じた。 ハト派の知識人

たちというのがどういう者たちだったかこれでよくわかるでしょう。 彼らは決して

戦争そのものに反対していたわけではなかった。 戦争の進め方に、コストの面で異論を

唱えていただけなんです。 まさに衝撃的ですよ。

民衆は(知識人と考えが)違っていたのです。

 

==>> つまりは、知識人という人達は、そのように教育されてきた人達だと

     いうことになりそうです。 

大衆を操作する前に、知識人というエリートをまず操作した教育というものが

あるのだ、ということですね。

そして、支配層の論理をよくよく理解した知識人であれば、戦争のコストを

気にするってことのようです。

 

     私の素朴な疑問は、今回のロシアによるウクライナ侵略についても同じですが、

     なぜ人類は人を生かす為にコストを使わず、人を殺す為にコストをかけること

     に熱心なのだろう、ということです。

     人類が増えすぎるのを抑制する為でしょうか?

     人類が少ない方が、自分の分け前が増えるからでしょうか?

     経済的な意味だけだったら、戦争をした場合としない場合との

     比較のシュミレーションをやったらどういうことになるのでしょうか。

     もし軍事産業がゼロという世界があったら、どんな産業が世界経済を

     牽引できるのでしょうか。

 

 

p132

 

マスコミは、いろんな意見を封殺することができます。 いまはAOLタイム・ワーナー

になっている企業が、私の本を世間に出回らせないようにするためだけに出版部門を

つぶし、保有していた書籍をことごとく抹殺したことがあります。 そういうことは現実

に起こるんです。 しかしそれは抑圧とはいえない。 出したければ別の出版社から

本を出すことだってできるんですから。 そういうことをことさらいい立てるのは

ばかげています。

 

p133

 

言論の自由はアメリカで、市民の運動のなかで獲得されてきたものです

 

・・・現在まで自由は保障されてきています。 だが、このまま保障されつづけるわけ

ではない。 こういう権利は勝ち取られたものです。 闘わなければ勝ち取ることは

できない。

 

==>> う~~ん、やはり凄い人ですね。

     何度逮捕されても信念を曲げなかっただけの人だと思います。

     「闘わなければ勝ち取ることはできない。」という言葉は、日本人には

     厳しい言葉ではないかと思います。 私だけかな??

     様々な形で、国に対して訴訟を起こしている人達が、将来の日本を作って、

     人びとの権利を勝ち取っていく人達なのでしょう。

     忖度している場合じゃないってことですね。

 

 

p135

 

人々は意に介します。 人々は孫たちに地球を残したい。だからこそ、政府はそこに

注意を引きたくないんです。 完全に逸らしておきたい。

 

p136

 

どうすればいいか。 恐怖に陥れればいいんです。 人々をコントロールする最良の

方法は恐怖を利用することです。 

だから、もし我々を滅ぼそうとしている「悪の枢軸」が存在するならば、人びとは恐怖

に怯えて四の五の言わず、指導者のいうがままになり・・・・

 

==>> アメリカの前大統領、そして共和党は、この地球に温暖化などという危機はない

     と言って、スウェーデンの女の子の国連での訴えを無視していました。

     女の子は、科学者の言っていることに耳を傾けなさいと言っていました。

     いろいろと関係の本を読んでみると、原理主義的キリスト教のグループが

     科学者の言っていることなど関係ないと思っているらしい。

 

     そして、そういうアメリカを支援する為なのでしょうか、ロシアのリーダーが

     ウクライナに侵略して、破壊をしまくっている。

     もしかして、核戦争を起こして、世紀末を作り出そうとしているのでしょうか。

     人類を生かすための思想ではなく、人類を殺すための思想を実現しようという

     動きは、特に宗教の場合は不可解でしかありません。

 

 

p138

 

イギリスとアメリカがフセインの圧政を支援していたことは知識人なら誰でも知って

いるし、いま、彼を悪の手先のように非難するのが極めて偽善的であるのもわかり

きっているのに、誰ひとりそうはいわないのです。 なぜならば、知識人は権力に

従わなければならないと知っているからーー真実を口にしてはいけないと知っている

からです。 権力には迎合して、指導者を称えなければならないとね。

 

p140

 

誰であれサダム・フセインに取って代わる者は、民主主義勢力であってはならない

のです。 なぜか。 新しい体制に少しでも民主的な要素があれば、人民が声を

上げることになるだろうからです

 

・・・人々はイランとの関係を深めようとする方向へ行くでしょう。 それをアメリカ

政府は容認できない。 だからアメリカ政府としては、民主主義と程遠い政権が、

フセインに取って代わることを確保しなければ都合が悪いのです。

 

==>> 知識人ほど、権力におもねなくてはならないことを充分に知っている。

     だから、都合のわるい真実は語ることができない。

     ・・・ってことは、テレビなどに出ている知識人の話は話半分に

     しておけってことですね。

     

     後段の部分は、私のような政治オンチにとっては衝撃的です。

     小さいころからアメリカを理想の国だと思いこまされて育ってきましたから、

     そうそうそれが抜けるわけではありません。

     牛丼屋が言った「生娘のしゃぶ漬け」状態だったわけですから。

     民主主義国の旗手かと思っていたら、旗艦モスクワみたいに撃沈ですか。

 

 

p142

 

1930年代、40年代、50年代、日本の知識人のどれだけが天皇裕仁を告発

しましたか?  60年代はどうです?  実際アメリカ人が裏に隠された真実を暴いた

本を発表するまで、できなかった。 それがいつものゲームのやり方なんです。

 

==>> これはチョムスキーさんの疑問なんですが、これに対して、辺見庸さんは

     さらっと受け流して、話の方向を変えてしまっています。

     私個人としては、もうちょっと話を展開して欲しいところです。

     

     こちらのサイトに関連する話が書いてあります。

     https://inishie.atelier-aditi.jp/2021/08/28/tennou_ghq/

     「天皇という存在を盲信する日本人の姿にアメリカ人は恐怖を感じたことで

しょう。天皇を処罰すれば日本国民が一斉蜂起する……アメリカ人がそんな

最悪の結果を恐れたこともうなずけます。

しかし、マッカーサーが天皇を訴追しなかった理由はそれだけではなかった

のです。マッカーサーが天皇と接し、その存在性や人柄に心動かされたことも

大きな理由の一つだと考えられるのです。」

 

・・・ただし、ここで述べられているのはアメリカ側からの理由のようです

から、日本人自身の告発がどうだったのかについては、あったのか、

なかったのか・・・・まあ、きっちりと総括しないのが日本人という

見方もあるでしょうが・・・・

 

Wikipediaでチェックしておきましょう:

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%AD%E5%92%8C%E5%A4%A9%E7%9A%87%E3%81%AE%E6%88%A6%E4%BA%89%E8%B2%AC%E4%BB%BB%E8%AB%96

昭和天皇は自らが退位することで責任を取る意思があったが、こちらも実現

することはなかった。

その後、同盟国であった第一次世界大戦敗戦後のドイツにおける帝政崩壊とは

相違して、占領政策を円滑に行うためのGHQSCAP、連合国軍最高司令官

総司令部)の意図もあり、敗戦後も皇室は維持されることになった。」

「天皇の戦争責任を問う声は、敗戦直後からすでに緩やかな形で存在しており、

三好達治は人間宣言した天皇について、「神にましまさぬ陛下は、人の子として

世の中の道理にお従いになるがよろしい」と述べ、人としての責任を問い、

アメリカから帰国した大山郁夫は天皇の退位を論じた。」

 

・・・しかし結局、上のサイトにも記述があるように、タブー化された

ことが大きな流れになってしまったようです。

 

p143

 

もう一つ、同様の公式声明がある。・・・もしも国家が脅かされたら、アメリカは無分別

な行動をとることもありうることを世界にわからせなくてはいけない、というものです。

そして人々は恐れ入らなければならない。 ・・・アメリカが攻撃してくるとわかって

いるから、そしてアメリカには圧倒的な軍事力があるから、誰もが恐れなければならない

のです。

 

p144

 

「核兵器は不可欠だ」と彼らはいい、これを作戦の中核に据えています。

 

==>> これは、実に今のロシアの言い分と似ているのではないでしょうか。

     何をやらかすか分からないリーダーがいて、無分別なことをやる恐れさえ

     あるぞとニュースが仄めかす。

 

p146

 

 

アメリカはすこぶる自由な国です。 政府の活動に関して、文書は膨大にあります。

しかし欠けているのは、真実を明らかにしようとする知識階級です。

 

 

p150

 

ほかの場所での、例えばフィリピンでの出来事はサイドショーにすぎません。

現実に、重大な問題の起こっている場所の一つが、おそらくインドネシアでしょう。

アメリカは最悪の圧制の時代にも、インドネシアを支援してきました。 

いっておきますが、日本の行いはアメリカの行いよりもさらに悪いですよ。

 

(辺見)それは私も聞いております。 日本のインドネシア支援にはこれからも

暴かなければならない暗部が多くあります。

 

・・・私が東ティモール問題について初めて国連で証言したのは24年前、1978年

のことでした。 証言は裏で妨害されましたが、妨害しようとしていたのは日本の

大使館だということがあとでわかりました。

 

インドネシアの友人たちが行なった大量虐殺が告発されるのを防ぎたかったのです。

だから日本の行いも、決して褒められたものではない。 アメリカだけではないのです。

 

==>> アメリカの場合は「文書は膨大にある」というのが、実状を知らない私の

     ような者にとっては、素晴らしいことだと見えるわけです。

     日本の場合は、文書自体に手が加えられてしまう。まさに自由はないと

     言うべきなのかもしれません。

     

     後段の「フィリピンの出来事」については、何を指しているのか分かりませんが、

     インドネシアでの虐殺の事実を、日本が覆い隠そうとしたというのは

     誰の為だったのでしょうか。 インドネシアの友人の為だったのか、

     それともアメリカの為だったのか・・・・

 

     こちらのサイトで、その大虐殺のことを確認します。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%82%B9%E4%BA%8B%E4%BB%B6

     「独立を求める住民に対し、インドネシアは弾圧を続けてきた。侵攻後の2か月

間で60,000人の住民が殺害されたとされ、インドネシアによる統治の間に

全人口の4分の1から3分の1の人々がインドネシア国軍の犠牲になったと

いわれている。この比率は、第二次世界大戦後の世界における虐殺のなかでも

最悪のものである。」

     「アメリカ合衆国は1975年以来インドネシアの軍人に対して続けてきた

「国際軍事教育プログラム」(IMET)の停止を発表した。延べ2,600人に行って

きたIMETの停止は初めてだった。・・・・・最大援助国で138253万ドル

1991年)を援助している日本は援助停止の必要はないと判断し、政治的影響

力の強い米豪も支援を続けた。」

     

 

p152

 

つまりビル・クリントンは東ティモールで途方もない大量虐殺が行なわれているのを

知りながら、コソボよりひどい状況であるのを知りながら、軍隊を送り、訓練も

行なっていたのです。 

 

トニー・ブレアはこれに輪をかけて悪質です。 オーストラリアの平和維持軍が駐留を

始めたあとも、戦闘機を覇権しているのですから。 それが「倫理的外交政策」だと

いうのです。

 

・・・知識人は「我々の指導者」を・・・・ビル・クリントンでも誰でもいいが、とにかく

聖人に見せなければなりません。 大量殺戮者の手に、完全に意識的に武器を手渡す

ような類の聖人です。 それを25年間やってきたのです。

 

==>> そして、チョムスキーさんは、これらのことをメディアがまったく無視

     していることに憤慨しているのです。

     私のような庶民は、最低でも、見栄えのいい、口当たりのいいメディアの

     言葉には注意しろってことですね。

 

p154

 

ウィンストン・チャーチルが・・・・彼はアフガン人とクルド人に対して毒ガスを

使うことを推奨しました。 

 

・・・インド省からは反対がありました。 毒ガスを使うのは立派なことではないと。

チャーチルは激怒しました。 「未開人たちに毒ガスを浴びせるのは気分がよくないと

いう心境は理解できん。 それが多くのイギリス人の命を救うのだぞ。 これは優れた

科学の成果なのだ」

第一次大戦後の話です。

 

==>> ああ、これはなんともゾッとする話です。

     今のロシアによるウクライナ侵略にも、いろいろと噂がされている毒ガス

     や生物兵器の話です。

     しかし、ひとつ異なる部分もあります。

     「未開の人たち」ではなく、「ヨーロッパ人に似ている人たち」という点です。

     これがウクライナではなく、日本だったらどういうことになっているのか。

 

     今のウクライナのような状況が、第二次大戦後の日本にもあったという話が

     こちらのサイトにありました。 日本の四分割占領という話です。

 

     「「日本の身代わり」で東欧2カ国がソ連に支配されていた! 

終戦後に日本が分割占領されなかった理由」

https://www.dailyshincho.jp/article/2018/09060710/?all=1&fbclid=IwAR3b8-QstdSuNNCVKU7aAPvIuRm2gl4jWJDrbUB7UFiTrBg81JdNwgAgmZ8

     「あまり知られていないことだが、日本がアメリカによる「単独占領」に置かれ

た背景には、日本の「身代わり」として、ブルガリアとルーマニアの東欧2カ国

がソ連に差し出されたという歴史的事実がある。」

 

・・・元々は、四分割統治案があったようです。

ソ連=北海道・東北地方、アメリカ=本州中央、中国=四国、イギリス=西日本

東京だけは四カ国による共同占領ということだったようです。

しかし、上のようなわけで、アメリカ一国による統治になったらしい。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E5%88%86%E5%89%B2%E7%B5%B1%E6%B2%BB%E8%A8%88%E7%94%BB

 

 

p158

 

9月11日のことで人々が何よりショックを受けたのは・・・あの行為は大変に残虐

でした。

・・・・残虐非道な行為はほかにもたくさんあります。 ただ西側で起こったのは

あれが初めてというだけのことです。 世界のほかの人びとに対して、我々がやって

きたことなのです。 ほかの人々はこれまで、我々にあんなことはしなかった。

だからショックだったのです。

ほかの国の新聞を見ると、かならずしも驚いてはいません。

 

==>> つまり、世界を俯瞰してみるならば、そのような残虐行為はあちこちで、

     「我々」によって引き起こされてきたのだから、特に珍しいものでは

     なかった。  けれども、9・11だけは、それがアメリカのど真ん中で

     起こったことだから衝撃が大きかった・・・ということだそうです。

 

 

p160

 

日本はこれまでもアメリカ軍国主義に全面的に協力してきました。

戦後期の日本の経済復興は、徹頭徹尾、アジア諸国に対する戦争に加担したことによって

います。 朝鮮戦争までは、日本の経済は回復しませんでした。 朝鮮に対するアメリカの

戦争で、日本は供給国になった。 それが日本経済に大いに活を入れたのです。

 

ヴェトナム戦争もまたしかり。 アメリカ兵の遺体を収容する袋から武器まで、日本は

ありとあらゆるものを製造して提供した。 そしてインドネシア半島の破壊行為に

加担することで国を肥やしていったのです。

そして沖縄は相変わらず、米軍の一大軍事基地のままです。

 

==>> 確かにそうです。 少なくとも、私自身は、軍港佐世保の生まれですから、

     朝鮮戦争のお陰で、貧しいながらも大きくなったわけです。

     小学生時代などは、近所に、米兵の宿舎や米将校の家族の家もありました。

     そして将校の子供たちと、鬼ごっこをしたりもしました。

     そして又、アメリカが支援した、脱脂粉乳で大きくなりました。

 

     しかし、ここで「アメリカ軍国主義」という言葉が出てくるとギョッとします。

     まあ、確かにそう言われてみればそうなんですが、今までそういう意識は

     ありませんでした。

     軍国主義というのは、軍が政治を支配する、戦前の日本のような体制の

     ことを言うのだという頭しかありませんでした。

 

 

p161

 

50年前に遡ってみましょう。サンフランシスコで講和条約が調印されました。

 

・・・その条約にどこの国が参加して、どこがしなかったか、ご存知ですか?

 

アジアの国は軒並み出ませんでした。 コリアは出なかった。中国も出なかった。

インドも出なかった。フィリピンも出なかった。

 

出席したのはフランスの植民地と、当時イギリスの植民地だったセイロンと

パキスタンだけでした。 

 

・・・なぜか?

それは講和条約が、日本がアジアで犯した犯罪の責任をとるようにつくられていなかった

からです。

 

p162

 

日本が、誰もが知るところの真の戦争犯罪人である天皇のもと、以前のファシズム体制

を復活させて国家を再建しようとしていたからです。 

それも、アメリカの覇権の枠組みの中で。

 

・・・日本の戦後復興はこのようにして成された。

 

==>> う~~ん、これは驚きました。 にわかには、そうですね、とは言えません。

     少なくとも私などは、民主主義の旗手であるアメリカが、軍事力で抑えて

     唯一うまく民主主義国にできたのが日本であって、理想的サンプルが

     日本なのだというように刷り込まれてきましたからねえ。

     「ファシズム体制を復活」とか「アメリカの覇権の枠組みの中で」という

     ことには、そのカラクリを教えてもらわないことには、腑に落ちないと

     いうことです。

 

さあ、読み終わりました。

チョムスキーさんの本の二冊目でした。

私の頭の中は、いままで刷り込まれた私の中の常識を、ぐちゃぐちゃにされて

しまって、どう始末をつけたらいいのか分かりません。

 

こういう本というのは、確かに、出版社の立場になったら、印刷するかどうかを

考え込んでしまう本だなと思います。

 

チョムスキーさんは、なかなか危険な、しかし、魅力のある人物です。

 

 

 

=== 完 ===

 

 

 

     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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