ノーム・チョムスキー著「誰が世界を支配しているのか?」を読む ― その13(完) 自由民主主義の大衆は「見物人」だ。 世界を支配する巨大な私企業。
ノーム・チョムスキー著「誰が世界を支配しているのか?」を読む ― その13(完) 自由民主主義の大衆は「見物人」だ。 世界を支配する巨大な私企業。
ノーム・チョムスキー著 大地舜 神原美奈子 訳
「誰が世界を支配しているのか?」を読んでいます。
「第二十三章 人類の支配者」
p343
「誰が世界を支配しているのか?」を理解するには、アダム・スミスのいう「人類の支配者」
を無視することができない。 彼の時代における人類の支配者とは、英国の貿易商や
工場主だった。 私たちの時代では、多国籍企業や巨大な金融機関、超巨大小売業者
などだ。
p344
現在では、支配者たちの組織が絶大な権力を握っている。 それは海外でも、国内でも
変わらない。 彼らは国家に権力を守ってもらうだけでなく、経済支援も受けている。
人類の支配者たちが何をしているかを知りたければ、国家が優先している政策に目を
向けるとよい。
たとえばTPP(環太平洋パートナーシップ協定)だ。 これは本来、投資家の権利に
関する協定だが、御用メディアや解説では「自由貿易協定」と不当に表示されている。
交渉は秘密裏に行なわれ、中身を知っているのは、細則を書く何百人もの企業弁護士
やロビイストだけだ。
==>> ここで、こちらのサイトでTPPのメリット・デメリットをチェックします。
「TPPとは?メリットやデメリット|国内産業への影響について解説」
(URLが長すぎるので、一番下にリンクを貼ります)
「TPPの目的は、環太平洋における経済活動を活発化することです。
その対象はモノだけでなく、知的財産、サービス、投資などのさまざまな分野
にわたります。」
「日本も2008年ごろから参加を検討していたものの、実際に参加したのは
自公連立政権になった2013年でした。」
「しかし2016年10月、アメリカのトランプ元大統領が就任直後に離脱を
表明します。その後アメリカを除く11カ国で新たに協議が行われ、2018年
に「TPP11協定」が11ヶ国で署名されました。」
・・・日本はかなり遅れてこの列車に乗ったかと思ったら、2010年から
参加した米国がいきなり降りちゃったんで、日本は目立つ立場になった感じ
ですね。 アメリカにとっても、メリットやデメリットがかなり大きな政治的
影響をする内容だということなのでしょう。
「TPPのデメリットには食の安全確保の難しさ、食料自給率の低下などがあり
ます。」
・・・日本の「2019年度の食料自給率は約38%」ですから、国際的な
キナ臭い状況を考えると、いろんな分野での安全保障が検討されなくては
いけない状況にあるのかなと思います。
「小規模で競争力の低い農家の離農が進み、さらなる食料自給率の低下を招く
のではとも言われています。」
「日本の畜産業は生産・環境コストが他国と比べると高く、価格競争が激化する
と、零細農家が多い日本の畜産農家には大きな痛手となるでしょう。」
「政府は輸入食材の安全性に、何ら問題はないとしていますが、不安を感じる
消費者も多くいます。そのため今後、国産食材に対する価値が上がり、国産の
食材を扱う飲食店がブランド化することも考えられます。」
・・・この辺りの話は、一般人でも直接関係が出てくるところなので、
理解しやすいのですが、 チョムスキーさんの言う「投資家の権利に関する協定」
という部分については、ほとんど説明が書いてありませんね。
もっとも「交渉は秘密裏に行なわれ、中身を知っているのは、細則を書く何百人
もの企業弁護士やロビイストだけだ」そうですから、こういう公開のサイトに
そのような情報が出てくるわけもないのですが・・・・
p345
EUを覆う失望感を、パリを本拠とする民間調査機関ヨーロッパノヴァは、こう説明する。
「これまで何かを実現していく力は、各国の(一応、民主的な政治を建前にしている)
政治指導者が持っていた。 ところが、彼らの力が市場や欧州連合や企業に移ってしまった。
そこで大衆の間で生まれるのが“怒り”と“無力感”だ。」
・・・ネオリベラルの猛攻に対する反発は、別の側面を浮き彫りにする。大衆の疎外だ。
自由民主主義の理論において大衆は「参加者」ではなく「見物人」だ。
==>> この辺りのフラストレーションを一気に示したのが英国のEU離脱でしょうか。
「ブレグジット」(1)なぜEUから離脱したいの?
https://www3.nhk.or.jp/news/special/news_seminar/jiji/jiji9/
「EU加盟国は28か国あるから、28か国で話し合っていろんなことを決めて
いかないといけないんですよ。合意した以上はルールに従わなきゃいけない
けど、自分たちはこうしたいのにその通りにできないという不満がイギリスに
は根強くあったんです。」
「貿易交渉をするときは、イギリスも含めた加盟国の意見を反映させてやるんだ
けど、やっぱりイギリス独自でやりたいこととか、得意な産業、守りたい産業が
ある。」
一方で、アメリカがTPPから降りたのは何故かと言えば、
https://iineiineiine.net/8356.html
「トランプさんはTPPに加盟することでアメリカ国内の自動車産業をはじめと
した製造業で仕事をしている人々の雇用環境が悪化することを回避したかった
ようです。アメリカはそれまでNAFTA(北米自由貿易協定)というカナダ、
アメリカ、メキシコの三カ国が締結した経済協定を維持し続けていましたが、
この協定によってアメリカで稼働していた製造業の工場がアメリカ国内から
人件費の安いメキシコなどに移転をしてしまう結果を招きました。この流れが
続くことで製造業が盛んだったアメリカの一部の州では働き口が減少すること
となったのです。」
・・・オバマの時にTPPに参加しようとしてはいたものの、米国内での
工場労働者の反発が強かったため大統領選挙の時にはヒラリー・クリントンも
反TPPにならざるを得なかったようです。
p346
ときには、国家が民衆の意見に従うことで、世界権力の中枢にある国を激怒させることも
ある。 たとえば、2003年にブッシュ政権がトルコにイラク侵攻に参加するよう
呼びかけたとき、トルコ国民の95%が参加に反対した。
米政権が驚いたのは、トルコ政府が国民の意見に従ったことだ。
トルコは責任ある行動をとらなかったと米国から激しく非難された。
p347
この事例からもわかるように、米国の「民主主義への熱望」は寓話でしかない。
・・・「地球上には今、二つの超大国が存在している。 一つは米国、もう一つは
世界の民意だ」
・・・米国ではイラク侵攻に反対する抗議行動が起きた。 こうした意思表示は
ベトナム戦争への非難が最初だった。
==>> ここでチョムスキーさんは 米国vs世界の民意という対立軸を示して
います。 米国の民意は選挙で表されるにしても、結局は政権の政策は
その選挙をも金で買う超大金持ちたちが左右するという構図になるようです。
それにしても、トルコのように国民の民意に従う国を非難するとは、
選挙を意識するアメリカとは思えない話です。
p349
東アジアでは「米海軍が太平洋を“米国の湖”扱い・・・」
ヨーロッパでは「NATO軍事費の四分の三を負担している米国」が・・・
そして中東では、米海軍と空軍の巨大な基地が・・・
ラックマンによれば、今日の問題は「こうした安全保障が、三地域すべてで揺らいでいる」
ことにある。 ロシアがウクライナに干渉し、中国が東シナ海や南シナ海を「米国の湖」
から「領有権が争われている水域」に変えつつあり、「他の大国が周辺に影響圏を持つ
ことを、米国が容認するべきかどうか」が根本的に問われているのだ。
ラックマンは、容認すべきだと考えている。 理由は「世界中への経済力の拡散と、
単純な常識」だ。
==>> ラックマンとはロンドンのフィナンシャル・タイムズのコラムニストの
ことだそうです。
今現在進行中のロシアのウクライナへの侵攻も、主要三地域のひとつとして
語られています。
そのウクライナの危機については、さらに次のように述べています。
p352
「2008年のロシア・グルジア(現ジョージア)戦争は、最初の“NATO拡大を阻止
するための戦争“だった。 2014年のウクライナ危機が二番目だ。 三番目が
起これば、人類が生き延びられるかどうかはわからない」。
まったく妥当な意見だ。
その一方で、欧米はNATOの拡大を良いこととみている。 だが、ロシアや南半球
の発展途上諸国の意見は違うし、欧米にも、NATO拡大に反対する著名人もいる。
政治学者ジョージ・ケナンは早い段階で、NATO拡大は「悲劇的なあやまち」だと
警告した。
==>> この2008年のロシア・グルジア戦争は、wikipediaによれば、以下のような
状況下で起こされたようです。
「この戦闘開始時、ロシアのメドヴェージェフ大統領は休暇中、プーチン首相は
2008年北京オリンピックの開会式に出席しており不在であった。グルジア軍は
この隙を突いて攻撃したとも言われている。ともに出席していたブッシュ
米大統領や五輪開催国の中国の胡錦濤国家主席と協議したロシアのプーチン
首相は帰国後、厳しく米国を批判した。」
「ロシアとの対抗上、グルジアのサアカシュヴィリ大統領はグルジアのNATO
加盟を目指した。2008年4月、NATOは実施時期は未定としながらもグルジア
の加盟に合意した。ロシアはそれに対して、これはNATOの東側への拡張行為
であり脅威を感じている、と発表した。」
・・・これを読む限り、グルジアのケースは、今のウクライナのケースと
かなり似ていて、歴史的民族的にもぐちゃぐちゃになっているようです。
それにしても、今回の侵攻が北京での冬のパラリンピックの時期であり、
上記のグルジア戦争が北京での夏のオリンピックの時期とは、プーチン大統領
は、何か特に期するところがあったのでしょうか。
しかし、上記の三番目というのが今進行中のことをいうのかどうか、そして
さまざまな第三次世界大戦を懸念する報道が非常に気になります。
p354
このロシアの懸念は容易に理解できる。 国際関係論の学者ジョン・ミアシャイマーは
「フォーリン・アフェアーズ」誌で、・・・
「ウクライナをめぐる現在の危機のもとは、NATO拡大と、「ウクライナをモスクワの
影響圏から外し、西側に取り込むというワシントンの決意にある。 プーチンはこれを
“ロシアの核心的利益への脅威”とみなしている」
p355
中国の場合と同じで、プーチンの行動や動機が気に入らなくても、その裏にある論理を
理解することはできる。 彼らを罵倒するよりも、彼らの論理を理解することが大事だ。
これは非常に重要だ。 なぜなら、“人間の生き残り”が懸かっているのだから。
==>> この本を読んでいると、 今現在毎日報道されているニュースの内容よりも、
ことはもっと重大な状況にあるのだなという感じが伝わってきます。
その重大さが分かっているからこそ、米国も経済的なウクライナ支援は
しても、軍事的には手を出さないということなのでしょう。
そして、それが今のところ米国の選挙民の声でもあるようです。
こちらのサイトで 米国の世論調査の結果を見てみましょう。
「何のための戦い?」米国人も米国のウクライナ政策に不支持表明
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/68849
「「ロシアとウクライナの問題から離れていた方が良い(stay out)」は53%で、
「ウクライナを支援せよ」の43%を10ポイント上回った。」
「この世論調査が示しているのは、米国民の意思として、バイデンの
対ウクライナ情勢での行動に制限をかけつつあるということだ。
一方、プーチンは米国の世論を見越したような言動を取り始めている。」
・・・実質的にNATOのオーナーである米国が、このような状況であると
いうことであれば、今現在の事態が急速に好転するとは思えませんね。
双方の犠牲者が増えないことを祈るのみです。
p356
米国はただ「パワーを見せつけて、世界中を震え上がらせたかった」だけかもしれない。
「アフガン人が苦しもうが、死者が何人で用が、どうでもよかったのだろう」
これは、反タリバンの指導者アブドル・ハクの言葉だ。 ハクをはじめ多くの人間が、
2001年10月に始まった米軍の空爆に反対し、「大きな後退」だと非難した。
彼らはタリバンを内部から倒そうと手を尽くし、成功は近いと感じていたのだ。
p357
その後のアフガニスタンの惨状は、あらためて語るまでもないだろう。
==>> アフガニスタンについては、つい最近のことですから、米軍の撤退時の
不手際など、在留邦人にも大きな影響があったことがまだ記憶に新しい
ところです。
その後、ほとんどニュースがなくなったようですが、どうなっているの
でしょうか。 特に難民の日本での受け入れなどが気になります。
p357
次のターゲットはイラクだった。
英米の侵攻にまともな理由は皆無であり・・・
この侵攻は数十万人の死につながったが、
イラク社会はそれ以前から、米英の制裁措置によって大打撃を受けていた。
制裁措置を監査した二人の著名な外交官は、制裁は「大虐殺に等しい」と抗議して
辞任した。
イラク侵攻は数百万の難民を生み出し、国土の大半を破壊した。 また、侵攻がきっかけで
起きた宗派間の争いは今も国を引き裂き、中東全体を分断している。 なのに情報通で
良識のある人々ですら、これを平然と「イラクの解放」と呼ぶのだから、私たちの
知的・道徳的文化は驚くべきものだ。
==>> これはアメリカによるイラク戦争で、wikipediaによれば下のように
書いてあります。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%82%AF%E6%88%A6%E4%BA%89
「正規軍同士の戦闘は2003年中に終了し、同年5月にジョージ・W・ブッシュ
米大統領により「大規模戦闘終結宣言」が出たが、アメリカが指摘した大量破壊
兵器の発見に至らず、さらにイラク国内の治安悪化が問題となり、戦闘は続行し
た。2010年8月31日にバラク・オバマ米大統領により改めて「戦闘終結宣言」
と『イラクの自由作戦』の終了が宣言され、翌日から米軍撤退後のイラク単独で
の治安維持に向けた『新しい夜明け作戦』が始まった。」
「ブッシュ政権は、開戦の理由はイラクが無条件査察を認めないことであって、
イラク国内に大量破壊兵器が存在するという理由ではないと主張しているが、
開戦前にブッシュ大統領やディック・チェイニー副大統領が「イラクは大量破壊
兵器を保有している」とメディアを通して繰り返し広言していたため、開戦後に
大量破壊兵器が発見されなかったことでこの戦争の『大義』が失われたという
批判が巻き起こる結果となった。」
・・・私の印象としては、結局、この戦争は何だったのという感じでした。
チョムスキーさんの上記の内容では、制裁などでイラク国民が大きな
被害を受けたことが書かれています。
おそらく、今進行中のロシアへの制裁にしても、ほとんど何もしらない
ロシア国民にその痛みが行くだけなのでしょう。
p359
人権団体である社会責任医師団(米)、地球生存のための医師団(カナダ)、核戦争防止
国際医師団(ドイツ)は共同で、ある調査を行なった。
「12年にわたる“対テロ戦争”で、イラク、アフガニスタン、パキスタンで何人が
命を落としたかを推定した」のだ。
調査には「三か国の犠牲者数についての発表」だけでなく、軍事行動の情報も追加された。
彼らの「控えめな見積もり」によると、三カ国の死亡者は130万人だが「200万人
以上の可能性もある」という。
p360
研究者・・・がデータベースを検索したところ、このレポートについての記事は
まったく見つからなかった。
たぶん、死者の数を気にする人などいないに違いない・・・・。
政治学者ティモ・キヴィマキは、・・・
「米国主導の“有志連合”による利権を守るための戦争が、世界の暴力の主な発生源だ。
ときには死者の50%以上がその犠牲者だ」
p361
オバマが世界中で行っているドローンによる暗殺活動も、テロの手法としては斬新だが、
同じパターンだ。 作戦の目的は危害を及ぼす恐れのある者を始末することだが、
実際には敵を殺すより速いペースで新たなテロリストを生み出している。
==>> 裁判どころか、ほとんど根拠もなく、相手を決めて、国が暗殺を実行する、
という事例が次から次に書かれています。
ちょっと考えてみれば、実に恐ろしい話です。
ほとんどヤクザの世界ですね。いや、ヤクザよりも恐ろしい。
日本のカルト集団の中に「あいつをポアしろ」という教団がありましたが、
それと同じですね。
それも最近は、遠隔操作で暗殺をする。
p363
アルカイーダとISについての研究から、米国と同盟諸国が彼らの術中にはまっている
ことがわかる。 彼らの目的は「欧米ができるだけ深く、泥沼にはまる」よう仕向ける
こと。 「一連の国外における軍事活動で欧米を疲弊させる」ことだ。
そうなれば欧米社会は弱体化し、資源は浪費され、暴力がエスカレートするだろう。
「9.11の攻撃実行には40万~50万ドル(約5000万円程度)の費用が
かかった。 一方、米国と同盟国が費やした費用は、軍事と安全保障をあわせて
その1000万倍になる。 費用対効果だけをみれば、ジハード運動はビンラディン
にとって当初の想像を超える大成功で、今も成功の度を増している。
==>> まあ、はっきりとは分りませんが、恐らくそんなところだろうなと
納得してしまいそうです。
そして、その財源は税金であって、儲けているのは軍事産業の大企業と
いうことになるのでしょうか。
そういう企業としては、どんどんやってもらわないと困るわけですかね。
p365
世界には強大な暴力で難民を生み出す国が存在する。 まずは米国、次いで英国、
フランスだ。 その一方で欧米の暴力から逃げてくる難民を受け入れる国もある。
たとえばレバノン(国民一人当たりで断然トップ)やヨルダン、それに崩壊前の
シリアといった中東の国々だ。 一方、難民を発生させたのに受け入れを拒否する国
もある。 これは中東の難民だけでなく、米国の“裏庭”である中南米からの難民に
ついてもいえる。 心の痛む奇妙な状況だ。
==>> 難民の受け入れについては、特にEUでの問題が時々ニュースになりますし、
日本がほとんど受け入れてこなかったというニュースも目にします。
まずは、難民の出身国と受入国のデータを見てみましょう。
「難民の出身国・受入国」
https://www.japanforunhcr.org/refugee-facts/origins
「難民の出身国は、2020年末の報告によるとシリア、ベネズエラ、
アフガニスタン、南スーダン、ミャンマーの5か国だけで、世界の全難民の68%
*を占めています。」
「また世界の難民の約86%は、発展途上国に避難しています。」
「多くの難民を受け入れているトルコ・コロンビアのように、難民の73%が
近隣諸国で受け入れられており、近隣国の負担の重さが問題となっています。」
上記のサイトで、欧米諸国の中で一番難民を受け入れているドイツに関して、
下のサイトに少し詳しいことが書いてあります。
「難民の受け入れ数が多い国ランキングは?
ドイツの難民受け入れ体制で生まれた変化とは?」
https://gooddo.jp/magazine/peace-justice/refugees/1487/
「ドイツではメルケル首相が100万人の難民受け入れを決定し、世界中から
注目を集めています。その後の変化を紹介します。
難民を受け入れる決定をしたのは、ドイツの高齢化とそれに伴う労働人口の
減少が挙げられます。これによって、およそ100万人もの人手不足を難民で
補うことを見据えているのです。
難民を受け入れたことで、労働人口が増加。これによって国の生産性を向上させ
る役割を担います。」
こちらのサイトでは、日本の現状を下のように書いています。
「日本の難民受け入れの歴史」難民支援協会
https://www.refugee.or.jp/refugee/#section04
「難民受け入れに消極的な日本ですが、過去には難民に対して大きく門戸を
開いた時期がありました。1970年代後半から、ベトナム戦争終結前後に
インドシナ三国(ベトナム・ラオス・カンボジア)から逃れた「ボート・
ピープル」と呼ばれる人々を1万人以上を受け入れてきました。それがきっかけ
で、日本は1981年、難民条約に加入しました。2010年には第三国定住難民受け
入れを開始し、難民キャンプなどに暮らす人々を年間約30人を受け入れて
います。」
p367
ヨーロッパは、自らが荒廃させたアフリカ諸国からの難民という重荷にもあえいでいる。
荒廃には米国も一役買っていた。
ヨーロッパは今、200万人超のシリア難民がいるトルコに賄賂を贈って、難民を
ヨーロッパの国境に近づけないよう画策している。
オバマがメキシコに圧力をかけて、米国の国境を困窮した人々から守ったのと同じだ。
彼らが自国から逃げた理由は、レーガンの対テロ戦争の影響もあるし・・・・
・・・たとえばホンジュラスの軍事クーデターだ。世界中でオバマだけが正当化した
新政権はラテンアメリカでも指折りの恐怖政治を行なっている。
==>> そこで、トランプは万里の長城を建てると言ったわけですね。
p369
2016年11月8日、世界一の強国で選挙が行なわれた。その結果、大統領府、
議会、最高裁判所のすべてを共和党が支配することになった。
現在の米共和党は世界史上、もっとも危険な組織だ。
大統領選では、共和党予備選に出馬した、ほぼ全員が気候変動を否定した。
p373
民主党は1970年になると、労働者のことを聞に掛けるのをやめてしまった。
そこで労働者は、以前は階級闘争で敵対していた相手、つまり共和党に引き寄せられた。
・・・そして今度はトランプが、仕事も自尊心も失った人々の思いを代弁している。
米国の支配層のみごとな業績の一つは、怒りの矛先を企業からそらし、政府に向けさせた
ことだ。 政府は私企業が考えたプログラムを実施するだけなのだが・・・。
p375
米国で地球温暖化に対する意識が今ひとつ高まらないのは、イエス・キリストの再臨を
信じる人が多いからだ。 米国人の約40%が、イエスが2050年までに地上に戻って
くると信じている。 だから、今後数十年間に深刻な気候災害の脅威があっても、
それを問題とは思わないのだ。 地球は数千年前に創造されたと信じている人も
同じぐらいの割合で存在する。
==>> こういうのを読んでいると、もうアメリカは終わっているなと感じます。
少なくとも、私が小さい時から憧れていた理想の国アメリカはもう
ありません。 特に、その大きな要因が原理主義的なキリスト教にある
という点が、救いようがないなという感じです。
陰謀論を信じやすいというのは、キリスト教原理主義と結びついていると
私には思えます。
p380
「誰が世界を支配しているのか?」を考えるとき、鍵を握るのは誰がお金を支配して
いるかだ。 本書ではほとんど触れられていないが、米国の中央銀行の役割を果たす
FRB(連邦準備制度理事会)には注目する必要があると思う。
日本の中央銀行である日本銀行の株式は、日本政府が51%所有している。
ところが米国の場合、FRBの母体は12の連邦準備銀行であり、米国政府は
連邦準備銀行の株を持てない構造になっている。
つまりFRBの実権を握るのは私企業なのだ。
==>> この最後の部分は、「訳者あとがき」からの引用です。
「ドルを取り仕切る「FRB」の起源と仕組みとは?」
https://gentosha-go.com/articles/-/2510
「1907年に恐慌が起こって、中央銀行設立の重要性がにわかに高まりますが、
当時世の中では中央銀行が設立されるとコントロールされるという危惧が
あったこともあり、「中央」という名称は避けて、「Federal Reserve System」
という名前が選ばれたようです。」
・・・こういう考えかたは日本の「お上だいじ」とは真逆ですね。
アメリカでは「お上」が全く信用されていない様子です。
さて、やっとチョムスキーさんの本を読み終わりました。
正直言って、政治オンチの私としては、知らなかったというよりも、ほとんど
意識もしていなかった世界の動きです。
そして、既に書いたことですが、米軍基地のある佐世保市で生まれ、米兵にコーラや
ポテトチップスをもらい、米軍将校の子供たちと遊び、英語が好きになり、ビジネス
英語の専門学校に通い、米系の企業3社で勤務をし、小さいころからテレビで
コンバットを見て育ち、民主主義と人権外交の理想の国だと仰ぎみてきたアメリカが、
この本を読むことでガラガラと崩れ落ちました。
そして、民主主義のひ弱さと世界の多極化が進むことによる専制的な国家の増加が
民主主義を育て守ることの大切さをふたたび思い起こさせます。
===== 完 =====
TPPとは?メリットやデメリット|国内産業への影響について解説
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